レベル3相当 新しい事故に等しい
2013年8月22日
たかが水漏れと侮っていたのだろうか。レベル3。大事故に重なる大事故と言っていい。福島第一原発内で大量の高濃度汚染水が漏れていた。止められる見込みもついていない。国は無責任すぎないか。
これは新しい事故である。
それも、ただの事故ではない。原子力規制委員会は、国際的な尺度(INES)に合わせたこの事故の重大性の暫定評価をレベル1からレベル3まで引き上げる。
レベル3は「重大な異常事象」と定義され、レベル4以上が「事故」ということになっている。
しかし、一般の常識に照らせばそれは重大な事故であり、人災ではないのだろうか。
レベル7の「深刻な事故」に分類される福島原発は、収束に向かうどころか、大事故の上に大事故を日常的に重ねている状態だ。
これでは漁師たちだけでなく、周辺住民もたまらない。
汚染水漏れを起こしたとみられるタンクは、二年前から応急的に導入された「フランジ型」と呼ばれるタイプである。
鋼鉄の板をつなぎ合わせてボルトで留めたもの。つなぎ目はゴムパッキンで埋めてある。水漏れの危険があることは素人にも分かる。近づくだけで人の命が危険になるような、高濃度汚染水の保管場所とは思えない。二十五メートルプール一杯分もの水漏れを見逃していたずさんな管理体制のこともある。そのうち、海へ流せばいいと、高をくくっていたのではないか。
国際的な影響も出た。
韓国のアシアナ航空は十月以降、ソウル-福島間のチャーター便の運航を止めるという。このままだと波紋はさまざまに広がりかねない。
溶接型のタンクを一基造るのに数カ月かかるとか、周囲を凍土壁で囲むのに一~二年かかるとか、費用を負担するのは誰かとか、そんな悠長なことを言っている場合ではないはずだ。
内外の不安に対してもっと真剣な危機感を持って対策を急いでもらいたい。レベル3の事故を何とかせねば、レベル7を収拾できるはずもない。
国民の東電への不信は、さらに高まった。今や政府への不信も募りかねない。
産・官・学の総力を挙げて地下水の流入箇所と流出場所を突き止め、ふさぐ努力をしてほしい。
今この瞬間にもタンクから漏れ出ていくのは、この国の安全と信用なのである。
タンク汚染水漏れ 堰の排水弁すべて開放 海に流出可能性大
2013年8月22日
東京電力福島第一原発のタンクから三百トンの汚染水が漏れた問題で、東電は、ほとんどのタンク群の周りに水を食い止めるコンクリート製の堰(せき)を設けたのに排水弁をすべて開けていたことが分かった。今回の漏出事故では、大量の汚染水が排水弁から堰の外に漏れ、土のうを越え、近くの排水溝から海に汚染が広がった可能性が高い。
汚染水漏れが起きたタンク群には、二十六基のタンクがあり、これを囲む堰の二十四カ所に弁が設置されている。東電は、汚染水が漏れても広がらないよう堰を設けたが、堰内に雨水がたまると汚染水漏れが発見しにくくなるとして、弁を開いたままにして雨水が抜けるようにしていた。
しかし、弁が開いていたことで、漏れた汚染水は簡単に堰の外に出た。外部には土のうが積んであったが、土に染み込むなどしてその外側に漏れ出した。
二十一日には、問題のタンク群から排水溝に向かって水が流れた跡が見つかったほか、排水溝内でも汚染水が土砂とともに流れた跡が見つかった。放射線量も毎時六ミリシーベルトと高かった。排水溝は海に直結していることから、汚染水が海に流れた可能性は低いとしていた東電も、海洋汚染があることを前提に対応していく考えを示した。
排水弁が閉まり、コンクリート堰内に汚染水がたまる運用をしていれば、三百トンのうち半分以上は堰内にとどまった上、水が漏れているのを早期に発見できた可能性が高い。
原子力規制委員会は今回の事故を国際的な評価尺度で上から五番目のレベル3と評価することを検討しているが、その大きな理由として「安全防護層が残されていない」ことを挙げている。二十一日夜に開かれた汚染水対策を検討する同委の作業部会で、更田豊志(ふけたとよし)委員は、弁が開いていたことに関し、「何のための堰なのか。たまった水が雨水だと確認できてから弁を開けるのが、まっとうなやり方だ」と厳しく批判した。
★タンク汚染水漏れ 「堰の排水弁すべて開放」 海に流出 可能性大 (8月22日、東京新聞) pic.twitter.com/7j6cXj5V6H
— Katsuaki Sakai (@beyondaki) August 22, 2013
セシウム・ストロンチウム海洋漏出 管理値の100倍超
2013年8月22日
東京電力福島第一原発から放射性物質が海へ漏れている問題で、東電は二十一日、二〇一一年五月以降、海に漏出した放射性セシウム137は最大で二〇兆ベクレル、放射性ストロンチウムが一〇兆ベクレルに達するとの試算を公表した。東電が自らに課した年間放出管理値の百倍以上に当たる。
東電は、事故発生当初に高濃度汚染水が海に漏れた後、ルートとなった立て坑などをふさいだ一一年五月から現在までの八百五十日間、流出が続いていたと仮定。海水の放射性物質濃度の平均値や、地下水と海水が行き来する割合などから試算した。
これとは別に、汚染監視用の井戸で計測された地下水の放射性物質濃度と、地下水の海への流出量を基にした試算では、セシウムが最大で三億ベクレル、ストロンチウムが二〇〇〇億ベクレルだった。
東電は、二つの試算結果が大きく食い違うことから、海への汚染は、地下水を通じたものだけではなく、海側のトレンチ(地下トンネル)から高濃度汚染水が直接、海へ漏れ出している可能性があるとの見方を示した。
東電は、原発専用港の外へは汚染は広がっていないとの認識を示しているが、遮へいされにくい放射線を発するセシウムや、骨などにたまりやすいストロンチウムは害が大きく、漁業への影響も大きい。海洋汚染の深刻さがあらためて浮き彫りになった。
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