昭和13(1938)年2月
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この月
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・石井部隊の人体実験開始。
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・蒙古軍軍事顧問部開設。最高顧問・金川耕作中佐
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・輸入刊行物の輸入禁止処分、激増。南京虐殺事件関連情報の流入防止の為。
内務省警保局図書課作成「出版警察報」によると、「我軍ガ無事ノ人民ニ惨虐ナル行為ヲ為セル如ク曲説スルモノ」、「我軍ガ国際公法違反ノ戦闘手段ヲ行使セル如ク曲説スルモノ」として、輸入禁止処分を受けたものは、1月25件のものが、2月109年、3月79件となる。
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このなかには、
「南京入城後殺人鬼と化せる日本軍」(「シャンハイ・イブニング・ポスト」1937年12月25日)、
「南京で殺害されたる支那(ママ)人一万人以上、姦淫されたる婦女数八千~二万人」(広東の「中山日報」1938年1月23日)、
「南京虐殺の元兇は橋本欣五郎大佐」(ニューヨークの雑誌「アメラシア」2月号)、
残虐シーンの写真が入った「ライフ」(1月10号)など南京事件関連の報道が多数。
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また、国内刊行物で発禁になったものでは、
「日本軍に対し行動疑惑ある部落の如きは之を攻め妻女の前にて夫を斬り子の前で親を撃ち家に火を放ち之を掃蕩する事もあります」との「戦地だより」を掲載した「日本武道新開」第55号(昭和13年1月17日)など。
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・農業報国連盟の結成。
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・函館の文学サークル「開戦地帯社」・「あぶし社」、検挙。
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地方の文学サークル・同人雑誌グループの検挙:
「西三無産者芸術連盟」(愛知県。38年同6月検挙)、「東海文学社」(静岡県。同8月検挙)、秋田県の小サークル(同10月検挙)回覧雑誌「人間鍛冶」(東京。39年12月検挙)、「神戸詩人クラブ」(40年3月7名検挙)、「南方文芸」(香川県。同3月、高松高商学会など12名検挙)、「文芸庭園」(群馬県桐生。同9月6名検挙)「信州文学」(長野県飯田。41年12月検挙)、「浪曼文学研究会」(神奈川県。同11月以降22名検挙)、「イズバ」(愛知県。同9月5名検挙)、「仙台詩人懇談会」(同11月3名検挙)、「国民詩歌協会」(広島県。同12月検挙)など。
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・春日庄次郎らの日本共産主義者団、結成の檄を発表。4月15日、機関誌「民衆の声」発刊。9月13日以降178人検挙され潰滅。
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・宮城県、東北大関係「杜の会」20名検挙。学内文化運動、共青細胞組織等。
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・正宗白鳥「文学的自叙伝」(「中央公論」)2~7
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・小林秀雄(36)、「志賀直哉論」(『改造』)、「文芸時評」「思想統制とデマ」(『東京朝日新聞』)。『新女苑』座談会「若さの探求」。
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・アメリカ映画「モダン・タイムス」上映。
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・内務省令により、1興行3時間時間制となる。
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・内閣情報部、この年より40年(第3回)まで毎年2月、思想戦講習会を組織。高等文官・中佐級将校など約100名を首相官邸に集める。テキストは「ドイツ新聞学」。
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・在シャム華僑、南京大虐殺事件に抗議して再び日貨ボイコット運動。
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・ドイツ共産党員であった国崎定洞のフリーダ夫人、獄中の夫との面会もままならないままソ連政府から国外追放。
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・トロツキー(58)の長男レオン・セドフが病院で怪死。「彼らのモラルとわれわれのモラル」、「レオン・セドフ――息子、友人、闘士」を執筆し、セドフを追悼。
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2月1日
・中華民国臨時政府、冀東防共自治政府を吸収。4月迄に河北・河南・山東・山西に省政府を作り、臨時政府の下に組込んで行く。
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2月1日
・この日付けジョン・ラーベの日記(「南京の真実」)。
「右を向いても左を向いても、聞こえてくるのは中国人の嘆きばかり。家に帰ったはいいが、妻や娘が強姦されたというのだ。けっきょくあとからあとから安全区へ舞い戻ってきた。・・・」
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2月1日
・第2次人民戦線事件。
東大教授大内兵衛・同助教授有沢広巳・脇村義太郎・政大学教授阿部勇・同美濃部亮吉・同南謹二・巣鴨高商教授芹沢彪衛・横浜高専教授早瀬利雄ら労農派教授11名他24名検挙。1944年2月の第2審で無罪判決。
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内務省は、「今回検挙されたものの原稿は、その内容の如何を問わず、雑誌その他の掲載を禁ずる」と各社に通告。
警保局図書課長大坪保雄は、さらに、各社の編集責任者をまねき、「人民戦線派の共産主義運動は、今回の検挙をみてもわかるとおり、合法舞台を百パーセントに利用しているのであるから、われわれとしては、今後、人民戦線派と判定する寄稿家については、取締り上、論文はもとより、随筆、紀行文、映画批評の類にいたるまで、その種の意図をもって書いたものとみて、雑誌その他の掲載を禁止する。編集者が、情を知ってこれを掲載した場合には、行政処分はもとより、ある程度の司法処分をおこなうかもしれない」と宣告。
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to be continued
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