2009年11月14日土曜日

昭和13年(1938)3月1日~7日 要注意執筆者リスト作成 石川達三「生きてゐる兵隊」頒布禁止 第3次モスクワ裁判 「黙れ」事件 第3次改正朝鮮教育令 華北平定作戦、ほぼ終了 

昭和13年(1938)
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3月
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日付なし
・「日満支鉄鋼増産計画」、立案。
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・今村均、中将昇進。
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・内務省警視局図書課、要注意執筆者リスト作成(岡邦雄・戸坂潤・宮本百合子・中野重治・林要・鈴木安蔵・堀真琴の7名)。雑誌出版各社に掲載の自粛を求める。都下の約30の代表的出版社の編集関係者を集めた「出版懇話会」の席上。
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・大阪憲兵隊の特高課長、大阪のキリスト教牧師達に、天皇とキリスト教の神との関係、勅語とバイブル、神社参拝などにつき12項目の質問状を発して回答を求める。
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・日銀引受けによる赤字公債発行の増加により、日銀は日銀券発行限定を拡大する措置をとる。
この月、正貨準備によらない保証準備発行限度を、従来の10億円から17億円に、11月には22億円に拡大。インフレを惹起。
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小林秀雄(35)、「野上豊一郎の「翻訳論」」(「東京堂月報」)、「雑記(今月は「知識階級は・・・)」(「文学界」)。 「文藝春秋」特派員として中国へ渡る
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・「新聞匿名月評-死刑宣告の新聞」(「文藝春秋」3月号。総動員法に対する新聞の態度を批判。
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「新聞は頗る不明瞭な態度をとった。肯綮に値する社説等を開陳するでもなし、反対論の焦点を衝くでもなし、例によって他力本願、ニュース本位・・・果たして悪法なりとすれば、社会の木鐸ならば率先警鐘を乱打、義勇消防隊として花々しく現場へ馳せ参ずべきものとす。それが出来ないのは、現代新聞の一大悲哀といわねばならぬ。徒に時流に媚び、奥歯に物のはさまったような、観測しか下し得ない」
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・石川達三「生きてゐる兵隊」(「中央公論」3月号)、新聞紙法違反で2月28日発売と同時に頒布禁止処分。
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37年12月の南京攻略戦に中央公論特派員として従軍。石川と雨宮編集長は警視庁に連行、8月4日起訴、9月5日、東京区裁判所、石川と編集人雨宮庸蔵に禁固4ヶ月(執行猶予3年)、発行人牧野武夫に罰金400円。雨宮は退社し、昭和14年5月より国民学術協会主事となる。
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作品は、ある小隊の兵数人を登場させるフィクションの体裁をとるが、第16師団の行動と一致点が多く、実質的にはノンフィクションである。
作者は執筆動機は、「戦争というものの真実を国民に知らせること」にあったと法廷で述べ、判事が「日本軍人に対する信頼を傷つける結果にならぬか」と質すと、「それを傷つけようと思ったのです」と答える。
勇敢・温情の西沢連隊長が、「数千の捕虜をみなごろしにするだけの決断を持っていた」とか、南京城内掃蕩戦で「本当の兵隊だけを処分することは次第に困難になって来た」とか、兵士たちの暴行が、軍上層の黙認ないし奨励のもとに成りたっていることを示唆している。
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なぜか陸軍は石川に対して寛容で、保釈中に、石川が武漢作戦への従軍を願い出ると、陸軍省報道部はこれを許可、その成果である「武漢作戦」は、「中央公論」14年1月号に掲載。
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・萩原朔太郎「日本への回帰」
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・映画「阿部一族」(東宝、熊谷久虎)、映画「泣虫小僧」(東京発声、豊田四郎)上映。
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・オーストリアでドイツのライヒスマルクが法定通貨となり、オーストリア中央銀行はライヒスバンクに接収される。
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月初め
・スペイン、アサーニャ大統領、閣議招集。バルセロナのフランス大使に促され和平交渉提案。左翼諸党は激しく反撥。
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3月1日
・中華民族解放行動委員会(通称第3党)、漢口で第3次臨時代表大会を開く。
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3月1日
・中国連合準備銀行に対する日本銀行団の1億円借款、基本契約調印(決定は3月7日)。
満州国政府代表青木経済部金融司長と、満鉄国債引き受けシンジケート団代表興銀上山理事による。10日、中国連合準備銀行、開業。
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3月1日
・参謀本部河辺作戦課長、更迭。陸軍省軍務局軍事課高級課員稲田正純中佐に交代。
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稲田中佐の新しい作戦指導要綱。
徐州・漢口・広東への進攻作戦により中国軍主力を撃退し、傀儡政権育成と和平工作強化を進めるというもの。軍事的拡大を土台にして和平の為の新たな舞台を作り、日中戦争の早期解決を図るもの。稲田は、自らこれを「積極作戦という逆手」と称す。
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3月1日
・綿糸配給統制規則公布。最初の配給切符制
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3月1日
・京都の市内タクシーがメーター制を採用。/11月全国で実施。
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3月1日
・日本銀行、北京駐在参事・上海駐在参事を設置。
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3月2日
・国民健康保険法案、貴族院を通過。
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3月2日
・ソ連で第3次モスクワ裁判。~13日。
計18人。ブハーリン、ルイコフ、ヤーゴダ処刑(~3月15日)。ラコフスキー禁錮。
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3月2日
・ドイツ、ニーメラー牧師の裁判終結。ザクセンハウゼン強制収容所送りとなる。
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3月3日
「黙れ」事件
下記をご参照下さい(1)(2)
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3月4日
・朝鮮、第3次改正朝鮮教育令公布。
普通学校・高等普通学校・女子高等普通学校を廃止し内地同様の学校体系に一本化。朝鮮語の授業が必修から選択(随意科目=事実上廃止)になる。
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3月4日
・陸軍省副官通達。軍慰安所従業婦等募集に関する件(慰安婦募集につき憲兵・警察との連携指示)。陸軍省関与の証明
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3月5日
・排日運動が再燃し不穏な情勢の威海衛に、陸戦隊が上陸。11日、平静になるが、12日以降数回にわたりゲリラが来襲。
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3月5日
華北平定作戦、ほぼ終了
第5師団片野支隊、湯頭鎮を占領。6日、第20師団、禹門・蒲州を占領。第14師団石黒支隊、曲沃を攻略。7日、第20師団金岡快速部隊、匳河に進出、黄河対岸の潼関(陝西省の東端)砲撃を開始。8日、第14師団酒井支隊、平陸・丙城を攻略。黄河北岸を平定。第2軍、第10師団瀬谷支隊に南進を下命。
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掃蕩作戦は3月初旬には終わるが、第2軍は第10師団に対し、占領地を越え腠県南方まで中国軍を追撃するよう指示。台児荘~徐州への道を開く
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3月5日
・満鉄、華北全線鉄道管理開始。
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3月5日
・駐蒙憲兵隊編成。
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3月5日
・庭野日教、霊友会から別れて大日本立正佼正会開教
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3月6日
・朝日新聞社、「皇紀二千六百年記念行事」として「日本青年道場建設」構想を打ち出す。
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橿原神宮外苑に体育施設・国史資料館・宿舎を建設。朝日は、資金集め・「建国奉仕隊」(工事の手伝い)を呼びかけ。この年10月23日、奉仕隊1万人を動員、上野社長以下朝日社員約400が加わり作業。奉仕隊は、全国から507日間に121万人以上に達したという。
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3月7日
・商工省、石油販売取締規則公布。5月1日よりガソリン等切符販売制
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