2010年1月31日日曜日

昭和13年(1938)3月17日~26日 スペイン戦線、アラゴンの村々が陥落。 総動員法、貴族院通過。 日本軍、台児荘で包囲される。 電力国家管理関係法成立。

昭和13年(1938)3月17日~26日
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この月の
スペイン戦線の状況についてはコチラ
ドイツのオーストリア侵略過程はコチラ
をご参照下さい。
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3月17日
・イタリアのファシスト使節来日
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3月17日
・フランス下院、ブルム内閣信任。369対176。
ブルム政府は国境再開を要請するネグリンに同意。しかし、それ以上の支援措置はとらず。
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3月17日
・スペイン、アラゴン戦線。フランコ軍がアラゴンのカスペを陥落。
16日、フランコ軍のバロン、ムニョス・グランデス、パウティスタ・サンチェス指揮の3個師団がカスぺを包囲。南部では、アランダが共和国戦線を突破し、モンタルパンを占領。
17日、国際義勇軍各旅団が奮戦するもカスぺが陥落。英国人大隊指揮官サム・ワイルドらは、捕虜になるところを危うく逃がれる。フランコ軍は、アラゴン進出8日間で東100kmに進み、エプロとグァダルーぺ河畔で再編成の為の休息をとる。
攻勢再開は22日。
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3月17日
・ソ連、バレエ振付師ヌレエフ、誕生。
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3月17日
・ポーランド、リトアニアに領土要求放棄を求める最後通諜を出す。
19日、リトアニアは、ポーランドに譲歩し国境を再開。
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3月18日
・英米両国の石油会社、従業員の昇給をメキシコ政府より求められるが拒絶。
メキシコ政府、両国石油会社の資本を接収し国有化。
英は国交断絶。米は銀購入停止。
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・メキシコのカルデナス、「石油産業国有化に関する布告」発表。
スタンダード,シェルの抵抗を押しきり石油関係17社没収。油田国有化。収容資産管理の石油行政審議会(CAP)設立。
米国はメキシコ銀の買い付け拒否でこれに対抗。
米国石油資本は軍事介入を要請するが、ルーズベルトは拒否。
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3月18日
・ソ連、ドイツによる脅威を受けた場合、国際連盟の枠内で仏ソ条約履行方法・手段の打合せ提案。英仏とも冷淡。
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3月20日
・「死なう団盟主」江川桜堂、没。団員4人殉死。
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3月21日
・アメリカ、バネー号賠償金として221万4,000ドルを日本に要求。日本承認。
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3月22日
・スペイン、フランコ軍がアラゴンへの攻勢を再開。
サラゴーサ、ウエスカ、ビーナなど革命的な村々が陥落。
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フランコ軍のソルチャーガとモスカルド両将軍は、ウェスカ~サラゴーサの150kmの戦線で5つの攻撃を開始、ウェスカ、タルディエンタ、アルクピエーレが陥落。翌日、ヤグニはエプロ河を渡河しピーナを占領。アラゴンの全ての村々が陥落。
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3月23日
・メキシコ、石油会社国有化に関して、列強の威嚇の対抗するカルデナス政府支持の大デモ。
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3月24日
・国家総動員法、政府原案通り貴族院通過、可決成立。
第1条で「国家総動員とは戦時に際し国防目的達成のため国の全力を最も有効に発揮せしむる様、人的物的資源を統制運用するを謂う」と規定
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3月25日
・東京の飛行館、文学座第1回公演。森本薫「みごとな女」ほか上演、~3月26日。
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3月25日
・日米漁業協定が成立。アラスカ沖サケ漁が禁止。
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3月25日
・スペイン、アラゴンを制圧したフランコ軍は、カタロニアへ侵攻するが難渋する。
しかし、南アラゴンではフランコ軍は地中海への進撃を準備(共和国を分断する作戦)。
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25日、フランコ軍のヤグエがフラーガを奪取し、カタロニアに侵攻するが、レリダでは共和国軍エル・カンぺシーノ師団が、1週間に亘り抵抗。
北方では、モスカルドがパルバストロに入り、更に北ではソルチャーガの部隊が、ピレネー山脈の谷あいで共和国砲兵隊や飛行機のたやすい攻撃目標となり行動の自由を失う。
南方では、アランダ、ガルシア・エスカメス、ベルティ、ガルシア・バリーニョが、空軍力の援護のもとに南アラゴンの高原を突進し地中海への進撃を準備。
ドイツは、歩兵掩護の為の戦闘機利用について多くを学ぶ。
バルセロナのネグリン政府では、国防相ブリエトとそれに影響をうけた外相ヒラールの敗北主義的言動が目立つようになる。
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3月26日
・日本軍、台児荘で包囲される(~4月6日敗退)。
第10師団歩兵33旅団瀬谷少将の支隊、中国軍に包囲。救援の第5師団歩兵21旅団坂本順少将の支隊も包囲。4月6~7日、退却。
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3月26日
・「電力管理法」「日本発送電株式会社法」などの電力国家管理関係法、成立。4月6日、公布。翌14年4月1日より電力管理が始まる。
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各電力会社から一定規模以上の発電・送電施設を現物出資させ、日本発送電株式会社を設立、それを国家管理下におこうというもの。
会社所有は民間資本に任せるが、経営は国家が行なうというこの法律は、企業経営の自由、ひいては資本主義そのものを否定するものとして財界・実業家たちを恐れさせる。
電力統制は、昭和16年には配電部門に及び、国家総動員法に基づく「配電統制令」により、地域別に統合された9配電会社設立命令が出される。
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前年10月13日、電力調査会官制が公布され、同18日に第1回調査会が開催される。
委員は、鉄道次官、貴衆両院議員、学識経験者、財界、5大電力の社長(反対派)など35名。
委員会への諮問事項は、「電力の国家管理をなし、国防の充実、国民年活の安定を図り、戦時体制に順応して生産力の拡大に備え、国防の充足、動力の動員を整え、産業計画遂行の円滑を期するは刻下喫緊の要務なり・・・。よってこれが急速実施に関する具体的方策を問う」というもの。
この年(昭和13年)1月25日、電力管理関係法律案、衆議院に上程され即日委員会に移され、1月31日から委員会の議事に入る。
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①思想問題:
「問 本案は、レーニンの電力国営思想、ドイツの、社会主義のワイマール憲法のもとの電力事業社会化法案、それから、コールのソーシャリゼーション等に類するイデオロギーをもとにしたもの、少なくとも国家社会主義の実現を期するもので、純粋な経済問題とは思われないがどうだ。
答 一君万民の大義を政治上、産業経済上、徹底させるというほか、われわれの持つべきイデオロギーはあり得ない。本案は電気というような普遍的基礎的なものを取り上げて、これを一部でなく全国民に及ぶよう処置しようという趣旨であって、あらゆる産業を統制管理し、社会化しようとする第一歩であるなどというのはとんでもない誤解である。」 
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②国防問題:
「問 本案は時局に即した臨時の戦時立法とすべきものではないか。
答 わが国の立国の条件に照らし、存立に欠くべからざる恒久的な方策であって、戦時目当ての臨時立法ではない。しかし、現時急迫しておる時局の要求に応じても、最も適切な効果を発揮することは期待しておる。」 
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③公益法人電気協会の反対運動:
「問 東電社長小林一三氏が、昭和一〇年六月二九日、『東洋経済新報』誌上に、「水力電気のごとき国家百年の大計と終始すべき性質のものは、必ずしもその建設費に対する利潤のみを考えて事業化するということよりも、道路または港湾のごとき一国産業の基礎工程に処し、必要不可欠の設備の一つとして考えてみる時代がきたのではないか、電力界へまさに革命の機運がきたのではないか」と述べ、また東邦電力の松永社長も少なくとも発送電は一元的に総合運営すべき旨の論文を発表しておるにかかわらず、同じ趣旨に成るものとして当然賛成すべき本法案に反対の急先鋒となっていることこそ不可解であるが、更に池尾氏を会長とする電気協会は総力を挙げて猛反対を続け、時局に対する非協力の態度にあけくれておるのは、一部の私利のために公器を弄ぶものと思われる。監督官庁としての見解いかん。
答 事についての賛否の表明は自由であろうが、電気協会は公益法人であるから、その行動は公益を目的とすべきで、一部のため本分を逸脱せりと認めるに至らば、適当の処置をとる考えである。」
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④発送電、配電の一元化:
「問 本案の目的達成のためには発送電だけでは足りない。配電まで一元的に管理するを必要としないか。
答 電気事業法を改正することとして、配電の末端まで管理の精神が流れるよう、しばらく推移をみることとしたのであるが、たって配電まで管理せよという趣旨であるならば今からでも用意はあると答えた所、決してそれには及ばないと、あわてて質問を打ち切った。」 
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⑤強制出資:
「問 現物出資を強制し、その対価に将来、無価値となるかも知れぬ新会社の株券を交付するのは横領といわれても仕方がない。違憲立法ではないか。
答 所有権は法令の制限内で自由とは憲法、民法の明定する処であって、本法律により出資を強制してもなんら違憲ではない。
また、現物出資に対しては株券を交付するこそ当たり前のことである。その上、請求あらば現金で買い取るという特別配慮までしてあるので横領とは当たらないも甚しい。
新会社の株式が無価値となる懸念があるかどうかは、発送電会社法案の参考資料として収支目論見が出してあり充分御審議を煩わしたい。」 
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⑥外債問題:
「問 インデンテュア(外債の約定書)によると、担保物件の移転は承諾なしにはできないことになっておる。本案が担保設備を強制出資させるということは、このインデンテュアの違反である。
少なくとも必要の場合は繰り上げ償還を覚悟しなければならないが、どうか。
答 担保物件の移転が国の法律による強制の場合には、例外として可能だとするインデンテュアの例もある。本案では設備を移転しても担保はそのまま続けることにし、更に発送電会社、更に必要あらば政府が支払いを保証することにしてあるのだから、当然債権者保護は大きく加重され、問題が生じょうとは想像も及ばない。万一の場合の償還は考えてある。」 
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⑦料金、購入電力量、新会社収支の目論見書:
「問 目論見書の案によると、燃料石炭価をトン一四円平均とみてあるが、今、平均二〇円くらいが至当と思う。したがって料金の算定はずさんだといわねばならない。
更に新会社の収支見積りにも不安と思われる点が指摘される。
答 燃料炭は火力発電所の所在条件のいかんによって値段が違う。本州、中部一七円、九州六円、北海道七円が実際現状であるが、多少先高を見越し、消費量と消費地とを勘案し、平均一四円と算出した。これは算術平均ではない具体的なもので部分的な材料によったものではない。
なお、今後は、全国の所要量を一手で買入れることになり、従来よりも有利と予想しておる。
また新会社の収支については、一元的運営の利益、政府の資金援助、それから経営の合理化等で、現在よりよくなるとも悪くなることは想像できないけれど、卸売料金に政策を加味する場合も考え、六分配当に心配のないよう政府が保証を与えることにしておる。
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⑧新会社の設立総会について:
「問 現物出資によって株主となる現在の電気事業者は、おおむね本案の反対者である。新会社の成立を希望しないものである。
だから創立総会の折に多数決で反対したら、会社が不成立に終る心配はないか。また成立しても、本法案の規定によって、株式の買戻しを請求されたら、払込み資本のなくなる幽霊会社同様のものになりはしないか。
答 本法案は会社を創立するための公法であるから、その設立を否認するような行為は許されないし想像もしていない。かりにやっても無効との見解である。
また現物出資者以外、一般公募の一億円の株主もあることである。買戻しを求められた株主は新たに買主を作れば問題はない。
当初は反対しても、一度法律となると、いさざよく協力態度に出ることは反対者もいっている位だから、政府として、あえて原案執行というような侮辱的な条項は規定をすることを差し控えたのである。」
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「★昭和13年記インデックス」をご参照下さい。
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