桶谷秀昭「昭和精神史」(文春文庫)という本があり、たまたま先の京都往復の際にこれを読んだ。
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初めて読んだのは1996/11/09とのメモがあった。
しかし、実は、余り進んで再読しょうと思う本ではなく、ただ、分厚さが京都往復に適しているかとカバンに入れた次第。
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全くの偶然だが、先週日曜日の朝日新聞朝刊の読書欄にこの本のことが触れてあった。
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この本にあった萩原朔太郎の南京陥落「祝賀」の詩に舌を巻いたので、ここにご紹介したい。
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南京陥落の日に
歳まさに暮れんとして
兵士の銃剣は白く光れり。
軍旅の暦は夏秋をすぎ
ゆふべ上海を抜いて百千キロ。
わが行軍の日は憩はず
人馬先に争ひ走りて
輜重は泥濘の道に続けり。
ああこの荒野に戦ふもの
ちかつて皆生帰を期せず
鉄兜きて日に焼けたり。
「東京朝日新聞」昭和12年12月13日
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誠に意気の揚がらぬ詩であり、作者の本心を探りたくなる詩である。
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この本の作者の桶谷さんは、かの日本浪漫派安田輿重郎が、この詩にあると思われる「倒語」に感動したと書いている。
この詩の「倒語」の巧みさには同意するものの、私は作者の理解(もしくは保田の感動)には与しない。
私は、この詩は日本浪漫派よりも遠いところにいるような気がしている。
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「★南京戦インデックス」をご参照下さい
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