日刊ゲンダイ
結論ありきか 人質事件検証「有識者懇」にまた首相の“お友達”
2015年3月13日
すでに「結論」は出ているようなものだ。過激組織「イスラム国」による日本人斬首事件の政府対応をめぐる検証委員会。意見を聞くために選んだ有識者5人が12日、公表された。菅官房長官は会見で「中東地域や危機管理について専門的知見を有する方々」と説明していたが、それだけが起用理由なのか大いに疑わしい。安倍政権の事件対応を早くから擁護する発言をしていた“お友達”が目立つからだ。
■政府対応を大絶賛するシンパも
有識者5人は、東大先端科学技術研究センターの池内恵准教授、日本エネルギー経済研究所の田中浩一郎中東研究センター長、立命館大の宮家邦彦客員教授、NPO法人「難民を助ける会」理事長の長有紀枝立大教授、共同通信の小島俊郎デジタル執行役員。
このうち、安倍政権の“シンパ”といえるのが宮家氏だ。日本人10人が犠牲になった13年1月の「アルジェリア人質事件」の有識者懇談会でも座長を務め、「政権の対応を『おおむね評価』」との報告をまとめた人物である。ちなみに田中、小島両氏もこの有識者懇のメンバーだった。
宮家氏は安倍首相悲願の「日本版NSC(国家安全保障会議)」設立に向けた有識者会議にも参加。今回の事件についても、「イスラム国対策にカネを出す」と宣言した安倍首相の「カイロ演説」が事件の引き金になったのではないか――との批判に猛反発。〈一部識者は安倍晋三首相の中東訪問と演説内容に問題あり、などと声高に批判した。しかし、冷静に考えてほしい〉(産経新聞)と訴え、政府対応については〈基本に忠実な対応でした。在ヨルダン大使館に手際よく現地対策本部を設け、培ってきたネットワークを駆使して情報を入手しつつ、対外発信もおこなう。初動からの動きに瑕疵はありません〉(朝日新聞)と大絶賛していた。
しかし、結果的に2人の日本人は斬首され、ヨルダンの現地対策本部で本部長を務めた中山泰秀外務副大臣は、ウロウロしていただけ。なぜ「培ってきたネットワークを駆使して情報を入手」と評価できるのかサッパリ分からない。
宮家氏はまた〈安倍政権の積極的平和主義に基づく中東外交で、『日本はイスラムを敵に回した』という人がいますが、私には理解できません〉(朝日新聞)と言っている。ハナから「対応に問題はない」と公言している委員が客観的な視点で事件を「検証」できるハズがないだろう。
■やる前から「結論」は見えている
イスラム専門家の池内氏も〈日本政府の資金援助が引き金になったとの国内世論もあるが、それは違う〉(中日新聞)と断言している。事件直後の1月20日には、ブログに〈『政府の政策によってテロが起これば政府の責任だ』という、日本社会で生じてきがちな言論は、テロに加担するもの〉と書いた。安倍首相の言う「政権批判はテロと同じ」という“屁理屈”とソックリではないか。
こんな“お友達”ばかりでは、検証する前から答えが出ているではないか。元外交官の天木直人氏はこう言う。
「宮家氏は第1次安倍政権で『国政選挙に出るのではないか』と言われて外務省を去った人。ところが、安倍首相がコケたため、出馬できなかった。だから、安倍政権としては頭が上がらないのです。そもそも、有識者会議は政権寄りの答えを求められるため、引き受け手がいないのですよ」
菅官房長官は有識者に「守秘義務をかける」と言っているが、そりゃあそうだ。「安倍首相万歳」「安倍首相最高」という発言ばかりになるから公開できないのだろう。つくづく、救いようがない政権だ。
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