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着実に進む改憲へのシナリオ 安倍首相の「迂回作戦」とは?〈週刊朝日〉
dot. 2013年7月25日 11時33分 (2013年7月25日 11時52分 更新)
76議席獲得と、与党が半数以上を占めた参院選。ねじれも解消され、気になるのは今後の安倍政権の動きだ。人事では舌禍の危険性がある盟友の高市早苗政調会長(52)に代えて、安倍晋三首相(58)の出身派閥の細田博之幹事長代行(69)の起用がささやかれている。
そして閣内においては、こちらも安倍首相の政治的同志である稲田朋美行政改革相(54)を代えるとの見方が出ている。
「安倍さんは秋の臨時国会を『成長戦略実行国会』と位置付けている。党内外から抵抗の強い規制改革をどこまで推進できるか、市場は目を凝らしてこの人事を見ている」(閣僚経験者)
試金石となるのが強力な抵抗勢力が根を張る農業分野だ。安倍首相は「とにかく政策課題を進めていく」としており、かつて森喜朗内閣で橋本龍太郎元首相を起用したように、超大物か、農政に詳しい議員を充てるとも言われている。
そして念願の憲法改正だが、着手の時期は果たしていつになるのか。自民党は2012年4月に「日本国憲法改正草案」を発表している。9条の2では「内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する」などと明記し、他党から「軍にして徴兵制を復活させるのか」と批判を受けた。さらに石破茂幹事長(56)が今年4月21日のBS番組で、「(自衛隊を国防軍に変えた場合)出動せよとの命令に従わなければ、最高刑に死刑がある国なら死刑」などと発言し、物議を醸した。
また今春まで自民党は、憲法改正の発議要件を衆参両院の「3分の2以上」から「過半数」に緩和する96条改正に突っ走った。ところが各種の世論調査で、国民投票になっても過半数がとれないことが判明。時期尚早と「封印」した。
公明党とは温度差があり、改憲勢力として期待していた日本維新の会が予想外に低迷。みんなの党などと合わせても、改憲勢力が参院で3分の2を占める可能性は選挙前からほとんどなくなっていた。「できれば維新に勝ってもらいたかったのだが……」と菅義偉官房長官(64)は周辺に漏らした。
だがその裏で“迂回作戦”がひそかに進行している。国会会期末の6月26日を前に、安倍首相の側近が自民党幹部を訪ねて回った。「自民党の改正草案の9条部分について、国防軍を引っ込め、代わりに自衛隊を明記した形で進めたい」。
これは、国防軍という名称に否定的な公明党や民主党も、自衛隊を憲法できちんと位置付けることには正面切って反対できまいという計算が働いている。…
この自民党のくせ球に対し、公明党の山口那津男代表(61)は21日夜、淡々とこう応じた。「(戦争放棄など)9条の1、2項は堅持するべきだ。その上で自衛隊の存在は定着している。憲法上どう位置付けるか議論に値する」。
頭から議論を拒否することはないとの姿勢を示したのだ。ある公明党幹部は、「最初から『9条をやる』と言われたら、相当荒れた議論になる。うちが求めている環境権から手を付けてくれればすんなりいくのだが……。安倍さんもそこまでやって後任に託すぐらいの度量が欲しい」。
自民党の草案作りの中心メンバーだった一人は言う。「草案は民主党政権に対抗し、かなりエッジを立てて作っただけで、強い思い入れがある訳ではない。国防軍でも自衛隊でも、国を守る部隊であることに変わりはない。安倍さんもこだわっていない」。
安倍首相は21日、「憲法の議論はしっかり広く、深くしていく必要がある。まだまだ議論が浸透していない」と慎重な姿勢を示した。その真意について、ある党幹部はこう解説する。「憲法改正は安倍長期政権の最終章でいい。それまで国民に改正がなぜ必要なのか、じっくりと説いて機運を高めていく」。
安倍首相の次の目標は15年の総裁選に勝つこと。そして、16年に想定される衆参ダブル選に勝利した後、改憲の道が開けてくる。これから党内に「9条部会」や「96条部会」を設置し、さらに議論を盛り上げていく方針だという。
※週刊朝日 2013年8月2日号
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