「(安倍首相は)どうやら悪知恵のまわり方が半端じゃないようです。日本の改憲は他国に比べてハードルが高すぎるのだ、と平気で大嘘をつく。」/60年の平和の大きさ - 高畑勲 http://t.co/wAYDs6gWup
— BLOGOS編集部 (@ld_blogos) July 29, 2013
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【特集・憲法】60年の平和の大きさ - 高畑勲
スタジオジブリ2013年07月29日 07:56
私の憲法第九条に対する思いは、これは全世界で実現すべき素晴らしい理想の旗であり、日本はこの憲法第九条を外交の中心に据えるべきである、ということに尽きます。戦争が国際問題の解決に役立たないで泥沼化するばかりであり、大国がばらまいた武器のはびこりすぎが局地紛争を深刻化していることは誰の目にも明らかです。対テロ戦争なるものも完全に失敗しています。世界に核廃絶や軍縮や武器輸出の禁止を訴えるためにも、また、紛争は平和的手段で解決しなければならないと考える全世界の人々の力を結集するためにも、憲法第九条は大変大きな旗印になると思います。要するに、日本のなすべきさまざまな国際貢献を貫く中心理念として、憲法第九条を常に積極的にアピールしていくべきだと私は思います。
(略)
以上の一文は、2006年ごろ、ねりま九条の会*1で話したものです。以来年近く経ちました。その間に、最右翼の安倍晋三が教育基本法の改悪*2(と私は思います)をやり、国民投票法*3で改憲のための外堀を埋めたところで政権を投げ出したかと思えば、民主党鳩山政権が普天間基地移転問題*4に失敗して、自民党長期政権のあいだにいかに対米従属が抜き差しならぬものになっているのかを明らかにしてしまいました。海外派兵や武器輸出も進みました。未曾有の東日本大震災での福島第一原発過酷事故への対応とその報道の非道さは、あの六十六年前の敗戦への泥沼で、一切の責任を取ることのなかった参謀本部と大本営発表をそのまま思い出さずにはいられないほどでした。〝ずるずる〞がまた起きたのです。そして衆院選挙での自民党の圧勝があり、なんと、安倍晋三が首相に返り咲いたのには驚きました。
この人は大日本帝国の近隣諸国への侵略を〝侵略〞と認めない※5ことひとつをとっても、中国や韓国との友好平和をうまく前進させることのできない危険な人物だと思います。
今回、その安倍晋三が持ち出した憲法第96条改定※6は、さすがに自民党の古参議員たちや改憲派の学者などからも反対の声が上がり、いまはなんとなく静かですが、まったく国民をなめるにもほどがあると思わずにはいられません。
ご存知のとおり、憲法は政権が変わった程度でころころ変えてはならないものだからこそ、第条で、両院の三分の二の賛成がなければ発議できない、と決めてあるのです。しかし改憲はこの人にとっての〝悲願〞です。一言で言えば、戦前のように〝国民を国家に従わせやすくする〞ために、憲法を変えたくてたまらないのです。九条だけじゃない。それは昨年自民党が提出した改憲案※7を読めばわかります。憲法は国民が権力に勝手なことをさせないための基準を決めるもの、というのが近代立憲主義ですが、この人や自民党は、国の方が国民にこうあれ、と憲法で言いたいらしい。けれども、衆参両院の三分の二以上がとれることなどざらにあるわけじゃありません。改憲はしたくても、三分の二の壁に阻まれる。
ところが、です。民主党の失政と小選挙区制のおかげで、衆院自民党に大量議席が転がり込んできた。経済問題でのばくちのおかげで安倍政権に対する期待値がやたら高い。ボロが出ず期待されているうちに参院選挙をおこなえば圧勝出来る可能性がある。この機会に改憲ができればいいが、個々の条文の審議などやっているうちに、あっという間に時間が経ち、いつ安倍人気がしぼむかわからない。そこで思いついたのが一網打尽方式。いま、この、三分の二の勢力を使って、改憲条件の三分の二を半分にしてしまえば、あら不思議、あとはいつでも過半数で自在に条文をいじれるではないか。こいつは名案だ。いつやるか、今でしょ!
この人はどうやら悪知恵のまわり方が半端じゃないようです。日本の改憲は他国に比べてハードルが高すぎるのだ、と平気で大嘘をつく。たとえばアメリカ合衆国※8はもっとずっと大変なのに。
もし、自民党得意の土建ばらまき成長戦略などに期待して、参院選で自民党を圧勝させてしまったら、この人は勢いに乗ります。自民党やその周辺政党が勢いのある人にくっつくのは小泉人気のときに見たとおりです。すると、この人は必ず96条改定を持ち出します。なにしろすごい〝名案〞なのですから。
いったい、こんな人に、わたしたちはなめられていいのでしょうか。
(アニメーション映画監督たかはた・いさお)
[編集部注]
*1......2004年、憲法九条を守り、世界に輝かせることを目的として、井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久枝、鶴見俊輔、三木睦子の9名の文化人が「九条の会」を発足させた。これを受け、練馬に住んでいる「九条の会」に賛同する人たちが発足させたのが「ねりま九条の会」。高畑勲も呼びかけ人の一人。
(以下略)
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