2025年10月21日火曜日

大杉栄とその時代年表(654) 1906(明治39)年3月1日~7日 外相加藤高明、鉄道国有化に反対し辞任。 加藤は岩崎家の婿(「三菱の大番頭」)。三菱の御用新聞「東京日日新聞」、元老井上馨も鉄道国有化反対。三菱は、長崎の造船所、高島炭鉱を経営し、更に九州鉄道株を買収中。九州鉄道を手中にすれば、競争相手の三井、貝島、麻生などの炭鉱の運搬も独占し得る。九州の炭鉱主は、三菱の鉄道支配を覆すために政府の鉄道国有化に賛成。

 

加藤高明(外相時代)

大杉栄とその時代年表(653) 1906(明治39)年3月 著名な国学者の章炳麟が亡命して中国同盟会の機関紙『民報』の編集長となり、編集部を置いた貸家で毎週末「国学講習会」を主宰した。魯迅も国学を学ぶために通ったが、一方で、章炳麟の主宰する革命組織「光復会」が決死隊を中国へ送り込むことになり、そのメンバーに指名された。 しかし魯迅は気が進まず、「もし自分が死んだら、あとに残された母親をどうしてくれるのか、はっきり聞いておきたい」と告げると、一同のけぞって呆れかえり、決死隊メンバーから外されたという逸話が残っている。 より続く

1906(明治39)年

3月1日

鉄道国有法、閣議決定。

3月1日

三重紡績会社・大阪紡績会社・金巾紡績会社の3紡績会社、綿布輸出組合三栄組を結成し、綿布の朝鮮輸出促進を協定。

3月1日

(漱石)

「三月一日(木)、暗。東京帝国大学記念祭。橋口五葉・中村不折の『漾虚集』挿絵の見本刷りを見る。森田草平も他の来客と共に見る。

三月二日(金)、東京帝国大学文科大学で、Tempest を講義する。

三月三日(土)、朝、雪十五センチほど積る。」(荒正人、前掲書)


3月2日

統監伊藤博文、漢城着任。韓国統監府の初代統監に就任。

9日、伊藤、高宗謁見。信任状奉呈。

3月2日

東京市街鉄道3会社(街鉄・東電・外濠、私営会社)、3銭から5銭に値上申請。政友会主導市会決定(10万円をばら撒いて議員・記者を買収)。反対運動激化。

3月2日

関西美術院開院式。院長浅井忠。

3月2日

国債整理基金特別会計法公布。

3月2日

非常特別税法改正公布。平和回復の翌年までという期限を廃止し、非常特別税を戦後に継続(増税存続)。国債整理基金特別会計法公布。

3月3日

外相加藤高明、鉄道国有化に反対し辞任。西園寺首相が外相を兼任。

加藤は岩崎家の婿(「三菱の大番頭)。三菱の御用新聞「東京日日新聞」、元老井上馨も鉄道国有化反対。三菱は、長崎の造船所、高島炭鉱を経営し、更に九州鉄道株を買収中。九州鉄道を手中にすれば、競争相手の三井、貝島、麻生などの炭鉱の運搬も独占し得る。九州の炭鉱主は、三菱の鉄道支配を覆すために政府の鉄道国有化に賛成。

3月3日

政府、郡制廃止法案を衆議院に提出。17日 可決。貴族院審議未了。

3月3日

福井県下の生糸・羽二重業者、税務署の不当課税に反対して同盟休業。3月6日解決。

3月4日

啄木(20)、妹光子を盛岡女学校教師に託し、妻・母と共に渋民村に帰る。渋民尋常小学校・盛岡中学校の後輩齋藤佐蔵の縁でその祖母齋藤トメ方に寄寓。

この前後、岩手郡役所に勤務する妻の父堀合忠操を通じて、その友人である岩手郡視学平野喜平に郡内小学校への就職を願い出る。

23日、宗憲発布による父一禎への曹洞宗宗務局の恩赦(3月14日付)通知。

4月10日、野辺地の父一禎も渋民に帰還。宝徳寺檀家は、提出済の代務住職中村義寛の住職跡目願いを撤回して一禎の再住を曹洞宗宗務局に提出。しかし、中村派は無視、以後宝徳寺檀徒間に大きな争い。   


3月5日付け日記(日比谷焼き討ち事件について)

 「近頃の新耳目は、天下の名士河野広中氏らの兇徒嘯聚事件についての警視庁の卑劣なる行動の曝露された事である。昨年九月五日、ポーツマス条約の屈辱に義憤を発して、国民大会が河野氏等の主唱の下に日比谷苑頭に催された。警視庁が無謀にもこれを暴力を以て禁止したのが、はからずも幾万愛国の赤子の怒を買って、東京は忽ちに暴動の府となり、内務大臣官舎が焼かれ、幾多の警察署が破壊され、幾百の交番も焼打の的、あはれ聖代帝闕の下、叫喚の風潮の如く、義憤の猛火全都に漲った。巡査が抜剣する、戒厳令が布かれる、河野氏等を初め二百幾十名は直ちに兇徒嘯聚罪として検挙されたのであった。かくて今年その公判が開かれるに及んで、図らざりき、国民の安寧を保護する筈の管視庁が、諸名士を罪に陥れむがために、幾百の黄白を散じ、無腸漢を買収して殊更に神聖なる法廷に偽証を申立てしめむとした事が天下に曝露されたのだ。最後の勝利は正しき者の手に落つるとは云ひ乍ら、警察権の不信今日の如くは、国民は何れの時に安んじて眠る事が出来やう。」

目下政界争論の焦点は鉄道国有案である。国家経営上の利便と社会政策的見地からは可とせられ、事業の前途のためと国益増進の立脚点からは否とせらるゝ。・・・戦時税継続案もさうだ、鉄道国有案もさうだ、利に傾く多数の党人を籠蓋(ろうがい)して、前内閣と同じ狂暴を逞しうして居る」

鉄道国有化;

日露戦争を通じて陸軍が兵と武器を集中化する必要上、規格を統一し、管理を一本化するために国有化が要請された。一方で、これは私鉄買い上げ論でもあった。

3月5日

第3回日比谷焼き打ち事件公判

3月5日

大杉栄(21)「〔世界之新聞〕之を命令する者に発砲せよ」(『光』1巻8号3月5日)

3月5日

大杉栄(21)、麹町区元園町1丁目27番地の由分社(堺利彦卓)に寄寓する

3月5日

「議会で、商業会議所連合会の建議の趣旨を忠実に代表したのは、都市の商工業者を代表する三十余議員の猶興会であった。三十九年三月五日、猶興会が中心となって組織された政界革新同志会は、軍備偏重の財政を攻撃することによって「政界の腐敗堕落を革新」すると称し、首領の島田三郎は議会の演説で、戦後の経営はむしろ大いに国力を涵養する産業の発展にこそ意を注ぐべきであるとの主旨を述べて、暗に政府の軍備拡張計画を批判」(荒畑『続平民社時代』)

3月5日

(漱石)

「三月五日(月)、東京帝国大学文科大学で、午前十時から十二時まで「十八世紀英文学」を講義する。」(荒正人、前掲書)


3月7日

東京市街鉄道電車賃5銭均一の値上げの願書、3社府知事及び警視総監に提出

3月7日

サンフランシスコ在住の幸徳秋水が大杉栄(21)に『バクーニン全集』を送る

3月7日

カリフォルニア州議会、日本人移民制限決議案可決

3月7日

フィンランド、24歳以上の男女納税者に選挙権付与。


つづく

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