2015年1月29日木曜日

中東外遊中の安倍首相の演説が波紋を呼んでいます。「読んでもらえばよく分かる」と首相は反論しますが、過激派「イスラム国 」を刺激した可能性を指摘する声は、野党議員だけでなく、専門家にもあります。「2億ドル支援」首相演説 英訳版 誤解招く?— 東京新聞政治部


「2億ドル支援」首相演説 英訳版 誤解招く?
2015年1月29日 朝刊

 過激派組織「イスラム国」対策として、訪問先のエジプトで二億ドル(約二百三十五億円)の人道支援を表明した安倍晋三首相の演説をめぐり、政府作成の英訳版に軍事支援と誤解されかねない表現があると、野党議員が二十八日の参院本会議の各党代表質問で指摘した。首相は「忠実な形で訳されている」と否定したが、専門家からも疑問の声が出ている。

 「(英訳版は)日本が戦争に加担するととらえることができ、ISIL(イスラム国)に口実を与えてしまった可能性がある」

 質問したのは日本を元気にする会の松田公太代表。首相は「指摘は当たらない。読んでもらえばよく分かる」と反論した。

 首相の演説は十七日、日本語で行われ、二億ドル支援に関して「ISILの脅威を少しでも食い止めるためだ。人材開発、インフラ支援を含め、ISILと闘う各国に支援を約束する」と述べた。英語版は日本語の原文とともに、首相官邸と外務省のホームページに掲載された。

 松田氏は英訳版を読み上げ「(日本語に)訳すとISILと闘う国の戦闘基盤を構築するための支援になってしまう。日本人が人質になっていると知っていた政府としては、配慮がなさすぎる」と述べた。

 英訳版では、ほかにも「食い止める」の部分を「拘束」「抑制」を意味する「curb」という言葉で表現するなど、日本語より強めの印象がある。「イスラム国」とみられるグループも当初、日本の支援は軍事目的だと主張していた。

 早稲田大大学院の春名幹男客員教授(国際報道論)は「英訳版は軍事目的を完全に否定していないように見える。人道支援だと明確に打ち出すべきだった」と指摘する。 (上野実輝彦)


0 件のコメント: