日刊ゲンダイ
後藤健二さんの取材映像を「放送中止」にしたNHKの過去
2015年1月29日
紛争地を頻繁に取材していた後藤健二さんは、女性や子どもなど常に被害者の視点でリポートをしていたという。
実はそんな後藤さんの取材映像が、かつてNHKで放送中止になっている。その事実は、日刊ゲンダイ本紙を皮切りに複数の週刊誌で「上からの圧力による番組改変」として大きく報じられた。
03年5月、「クローズアップ現代」で放送予定だった「終わらない戦争(仮題)」。イラク戦争のさなか、バグダッドの市民生活に密着したもので、米軍の空爆下、自由に街を歩けない市民の様子、遺体を庭に埋めるしかない病院など、戦争の悲惨さを伝える内容だった。NHKの社員がバグダッドから退避していたため、外部のジャーナリストの後藤さんが現地で取材したこれらの映像をもとに、番組は制作された。
ところが、OA直前の5日前に突然、上層部からストップがかかり、番組は丸ごとボツになったのだ。
「ストップをかけたのは政治部出身の諸星理事でした。表向きは『NHKが取材していない内容を主とする番組を放送するわけにはいかない』ということでしたが、実際は別の理由があった。小泉政権は当時、米ブッシュ政権の『テロとの戦い』に賛同し、その後、イラクのサマワに自衛隊を派遣しています。そんな状況下で米軍の空爆で被害を受けた市民の視点で作った番組を流すのは、政権批判につながりかねない。OAは避けるべきという政治的な判断もあったようです」(この問題を取材したジャーナリストの横田一氏)
米軍による被害者の視点で市民の姿を伝えるジャーナリストだったことが、政府が後藤さん救出に積極的に動かなかったことと関係しているのか……。
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