2015年3月9日月曜日

「無人の国道6号線 衝撃はあの日のまま」(池澤夏樹『朝日新聞』) : 「・・・安倍首相のIOC総会でのあの嘘は大きすぎた。 東京電力福島第一原子力発電所で発生した大量の放射性物質は封じ込まれてなどいない。・・・我々は情報操作によって四年前の衝撃を忘れる方へ誘導されている。」   

 (略)

 東電が十カ月前から汚染水が外洋に流れ出していることを知りながらそれを隠していたという事実が判明。いわき市漁協は態度を硬化させた。彼らが「裏切られた」と言うのも無理はない。

 福島第一原発の放射能汚染は「コントロールされている」とはとても言えない。
政治に嘘による世論操作という側面があることを認めるとしても、安倍首相のIOC総会でのあの嘘は大きすぎた。
東京電力福島第一原子力発電所で発生した大量の放射性物質は封じ込まれてなどいない。
今もって出血が止まらない大きな傷口なのだ。

 人の記憶にも半減期がある。
問題はこの心理的な半減期が放射性物質の物理的なそれよりもずっと短いことだ。

 我々は情報操作によって四年前の衝撃を忘れる方へ誘導されている。
被曝した子供たちの甲状腺癌の発生率は正常の範囲内。6号線はもう通っても大丈夫。他の原発はチェックによって安全と確認されたから再稼働も問題なし。海外にもどんどん売り込もう。

 どんなビジネスにも最低限の倫理観はあると思っていたが違うのだろうか。
チッソの時と同じことを東電と国は繰り返すのだろうか。

「無人の国道6号線 衝撃はあの日のまま」(池澤夏樹『朝日新聞』2015-03-03)


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