皇居二の丸庭園 2015-06-10
*惨事便乗型資本主義複合体が飛びつくところにはどこでもグリーンゾーンが出現する
そこでは人々は仲間に入る者と排除される者、守られる側と見捨てられる側という二つの集団に明白に区分される。
・・・以前から貧富の格差で分断されていたニューオーリンズは、ハリケーン被害後には、壁で囲まれたグリーンゾーンと怒り渦巻くレッドゾーンが対決する戦場と化した。
原因は水害ではなく、ブッシュ大統領が「自由市場経済の促進による解決」を図ったことにある。
プッシュ政権は緊急予算から公務員の給料を支払うことを拒否し、課税基盤を失ったニューオーリンズ市は、ハリケーン後の数ヵ月間で三〇〇〇人の職員を解雇することを余儀なくされた。そのなかには都市計画担当の職員一六人も含まれていたが、イラクの「バース党解体」政策とも似て、同市がもっとも都市計画を必要としたまさにそのときに専門職員が解雇される形となった。代わりに巨額の政府資金が民間のコンサルタント(その多くは大手不動産開発業者)へと流れた。そして言うまでもなく、公立学校の教師も何千人という単位で解雇され、フリードマンが提唱したとおり、何十もの公立学校をチャーター‥スクールに切り替えるための下地が作られた。
ニューオーリンズの観光業界も公共住宅に目をつけていた
ハリケーンから二年近く経っても、チャリティー・ホスピタルは閉鎖したままだった。
市の法廷制度もほとんど機能せず、電力事業は民営化されてエンタージー社に委ねられたが、市内の電力はいまだに完全復旧していなかった。同社は電気科金の大幅値上げをちらつかせて連邦政府から二〇億ドルという巨額の緊急援助金を取りつけたが、これは大きな論争を呼んだ。
公共交通システムは骨抜きとなり、被雇用者の約半数が職を失った。
公共住宅の大部分は空き家のまま板が打ち付けられ、連邦公共住宅局は五〇〇〇戸の住宅を取り壊すことを決定した。アジアの観光業界団体がビーチから漁民を締め出そうと画策したのと同様、強大な力を持つニューオーリンズの観光業界も公共住宅に目をつけていた。というのもそのいくつかは、同市の観光の目玉である旧市街のフレンチクオーターに近い一等地に建っていたからだ。
再建されず、消去されようとするニューオーリンズ
学校、住宅、病院、交通システム、そして街のあちこちで復旧しないままの水道 - ニューオーリンズのこうした公共空間は再建されなかったというより、ハリケーンを口実に「消去」されようとしていた。資本主義原理による「創造的破壊」の初期段階では、アメリカ国内の広大な地域で製造業の基盤が崩壊、工場は閉鎖され、住民は見捨てられて「ラストベルト(錆びた工業地帯)」と化した。
一方、ハリケーン・カトリーナ以後のニューオーリンズは、欧米世界で初めて出現した荒廃した都市風景という、新たなイメージを提示しているかのようだ。大規模な自然災害と破壊された公共インフラとが相まって、そこには「モールドベルト(カビの繁殖した地域)」とも言える荒涼たる光景が広がっている。
見捨てられ脆弱化した公共インフラが災害によって打撃を受け、主要なサービスが修復も復旧もしないまま放置される
二〇〇七年に米国土木学会が行なった報告によると、アメリカにおける道路、橋、学校、ダムといった公共インフラの整備はきわめて遅れており、基準に達するには今後五年間で一兆五〇〇〇億ドル以上の予算が必要になるという。だが現実には、こうした公共予算は減らされる一方だ。
それと同時に、世界中でハリケーンや大型台風、洪水、森林火災といった自然災害がその激烈さと頻度を増しており、各国の公共インフラはかつてないほどの危機にさらされている。近い将来、世界中の多くの都市で、すでに見捨てられ脆弱化した公共インフラが災害によって打撃を受け、主要なサービスが修復も復旧もしないまま放置されることは想像に難くない。
一方、富裕層はフェンスに囲まれたゲーテッド・コミュニティーに引きこもり、民営化されたサービスによってニーズを満たすことができるのである。
爆発的に成長した災害対策産業
なかでも野心的なのはフロリダ州ウエストパームビーチにある航空会社が売り出した「ヘルプ・ジェット」なる会員制の新事業で、宣伝文旬には「ハリケーンからの避難をジェット機利用のバケーションに変える、世界で初めてのハリケーン脱出プラン」と謳われている。ハリケーンが接近してきた段階で、同社は五つ星のゴルフリゾート施設やスパ、またはディズニーランドでの休日プランを用意。会員は予約手続き後、豪華なジェット機でハリケーン被害地から脱出するという寸法だ。「列に並ぶ必要も、混雑に苛立つこともない、厄介な事態を休暇に変える、まさにファーストクラスの体験。(中略)悪夢のような避難騒ぎとは無禄の休日をお楽しみください」
フロリダ州オーランドで年一回開かれる商業見本市「全米ハリケーン会議」にて
フロリダ半島南端のフロリダキーズ諸島の危機管理の責任者であるビリー・ワグナーは言う。「災害の片がつくまでにすべてが民営化されるだろう。なにしろ彼らには専門知識があるし、資金もある」。・・・
会場で「自動加熱食品」を売り込んでいたデイヴ・ブランフォードはこう話す。
「こんなことを言う人がいましたよ。「これはでっかいビジネスだな。俺も造園業に見切りをつけて、ハリケーン被害地の瓦礫処理業を始めるつもりだ」って」
国民の税金によって形成された惨事便乗経済
・・・イラクやアフガニスタンで復興事業の”主役”を担ってきた巨大企業は、政府から得た契約金のかなりの部分 - 二〇〇六年のイラク契約事業監査報告によれば、二〇~五五% - を自社の経費にあてたとして、たびたび政治的批判を浴びてきた。
契約金の多くがごく合法的に大型設備投資へと回されてきた。ベクテルは軍用土木機械を大量に買い入れ、ハリバートンは航空機や軍用トラックを購入し、L-3コミュニケーションズ、CACI、ブーズ・アレンの三社は監視偵察システムを構築した。
際立つブラックウォーターのケース
一九九六年に設立された同社(ブラックウォーター)はブッシュ政権時代に途切れることなく契約を受注し、その金を使って二万人の傭兵が待機する準軍事組織を作り上げ、ノースカロライナ州に四〇〇〇万~五〇〇〇万ドルをかけた巨大な軍事訓練施設を建設した。
ある資料によれば、同社が現在有するものは次のとおりである。
「一〇〇~二〇〇トンの人道支援物賢を赤十字よりも迅速に届けられる独自の輸送システム、フロリダ州の航空部門に保管された武装ヘリコブターからボーイング767まで二六機の輸送機およびツェッペリン型飛行船一機、全米一の規模を持つ戦術用走行路、(中略)広さ八〇万平方メートルの人工湖に浮かべられた敵船への潜入訓練用の輸送コンテナ、世界各地に八〇のドッグチームを送り込む軍用犬訓練施設、(中略)全長一〇〇〇メートルの狙撃訓練用射撃場」
*この業界のもっとも危倶すべき点のひとつは、そのあからさまな党派性である。たとえばブラックウォ-ターは妊娠中絶反対をはじめ右派の掲げる政治的主張に同調しており、政治的リスクを分散する他の大手企業とは違い、同社の政治献金はもっぱら共和党に集中している。ハリバートンの選挙献金の八七%、CH2Mヒルの選挙献金の七〇%は共和党に渡っている。・・・
*
*
0 件のコメント:
コメントを投稿