日本の六月 吉野弘
低い
雨雲の下
日本の六月は
青磁の 浅い手水鉢――
雨がぐんぐん水の天井を押し上げ
縁(ふち)からあふれ出ようとしている
縁では人々が爪先立って
じっと目をつぶって
水嵩の増す気配を
聞いている
じっと
(詩集『感傷旅行』1971年刊、1972年第2回読売文学賞)
ユリイカ 2014年6月臨時増刊号
総特集=吉野弘の世界
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