2015年9月4日金曜日

田中忠雄 『基地のキリスト』(1953) 「あなたがたのうちで罪を犯したことのない者が、この女に石を投げるがよい」 / 中村宏 『基地』(1957) この事件(ジラード事件)に触発された中村宏は、基地の不条理を告発する本作を描いた 国立近代美術館常設展より ~9月13日

田中忠雄 『基地のキリスト』

美術館の説明
田中忠雄 1903-95
基地のキリスト 1953 昭和28

 田中忠雄は、敗戦後の日本を古代ローマ帝国に占領されたユダヤ国になぞらえて、聖書の主題を現代的に解釈した作品を描き続けました。
 この作品は、立川の米軍基地を訪れた田中が、基地の周囲で兵士を相手に生活する女たちを見て構想したものです。
 当時彼女たちを非難する声が日本に存在していたことを受け、田中は、新約聖書「ヨハネによる福音書」でキリストが律法学者に、「あなたがたのうちで罪を犯したことのない者が、この女に石を投げるがよい」と語った場面を、基地のフェンスを背景に描いています。



中村宏 『基地』

美術館の説明
中村宏 1932-
基地 1957 昭和32年

 1957(昭和32)年、群馬県の相馬ヶ原演習場で薬莢拾いの農婦をアメリカ軍兵士が射殺した「時ラード事件」が怒り世間を震撼させました。
 この事件に触発された中村宏は、基地の不条理を告発する本作を描いたのです。
 うつろな眼で機関銃を構える殺人マシーンと化した米兵の姿を前景に描き、その脇に射殺された女性の後ろ姿を描いていますが、両者の極端な大小の対比によって、基地の内外の不均衡な力関係が暗示されています。






0 件のコメント: