『朝日俳壇』2015-08-31より
生御魂満蒙開拓団史歩む (松江市)三方元
戦争の世紀に確(しか)と原爆忌 (倉敷市)森川忠信
人間が滅ぼす地球夕焼けて (東京都)青木千禾子
水底に産着さ迷う敗戦日 (羽生市)小川正志
汚染され福島残る蝉の声 (長岡京市)寺嶋三郎
兵站は戦争のうち蟻地獄 (東京都)伊藤頌三
竹さやぐやうに若者敗戦忌 (小金井市)上條多恵
戦(そよ)ぐとも戦(おのの)くともや秋桜 (旭川市)河村勁
大いなる草臥(くたびれ)ありぬ敗戦日 (矢板市)菊地憲一
運よしとばかり言ふ父終戦忌 (仙台市)柿坂伸子
石段の影よみがへる広島忌 (静岡県東伊豆町)小沢勝正
引き揚げを思い出す日や原爆忌 (新宮市)中西洋
終戦日今明かさるる秘話実話 (横浜市)松永朔風
『朝日歌壇』2015-08-31より
玉砕のペリリュー島にねむる兄日本は平和の凍る気配す (成田市)神部一成
(アメリカ)郷隼人
心して安保法案審議せよと言うがごとくに原爆忌来る (三原市)岡田独甫
結論は出てるぢやないかと言ひた気な首相の苛立ち苛立たしかり
(名古屋市)浅井克宏
あの頃も危機感ばかり煽られてみじめな戦(いくさ)がはじまりました
(名古屋市)諏訪兼位
あと出しのジャンケンみたい九日の式辞には盛る<非核三原則> (さいたま市)紺野ちあき
戦争を是とする人がのうのうと原爆忌に来てあいさつをする (三原市)岡田独甫
戦争のできる普通の国よりもできない不二の国にてあらな (宇部市)崎田修平
戦争を未然に防ぐと首相言ふ戦争放棄の憲法措(お)いて (浜松市)松井恵
砂袋重しに置かれ縛られて除染土堆(たか)く裏庭にあり (福島市)青木崇郎
「ブレーキは未装備ですが走れます」再稼働とはそんなところか (仙台市)角田正雄
窓外の簾きらめき陽を反(かえ)す原発ゼロが終わりたる昼 (市原市)小田 優子
動かないことが後日の悔いになる予感のありてデモ初参加 (宇都宮市)鈴木孝男
国よりも民の絆を信じたるトルストイ読む夏の盛りに (島田市)水辺あお
気象図に色鮮やかに映りおり境界線のなき我が祖国 (大阪府)金忠亀
戦争に行きたくないは利己的だ 昔言ったよ「非国民」だと (小牧市)白沢英生
私が総理だからと云ふ総理だから危険と感じる我ら (流山市)角田勇
賛成と言えぬ空気がたちこめて誰もが反対と言うおそろしさ (京田辺市)藤田佳予子
赤紙を拒否する勇気持たぬゆえそうならぬよう絶対反対 (西海市)前田一揆
ナガサキは最後か唯の二番目か戦争知らぬ我らの原点 (福生市)斉藤千秋
父母が異国で聞きし玉音を七十年後にCDで聴く (野洲市)松山武
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