2014年11月17日月曜日

焦点:GDP悪化で14年度マイナス成長か、アベノミクス正念場 (ロイター) : <14年度マイナス成長の確率「90%以上」> <増税延期でも景気対策に限界>

ロイター
焦点:GDP悪化で14年度マイナス成長か、アベノミクス正念場
2014年 11月 17日 14:10 

[東京 17日 ロイター] - 2014年7─9月期国内総生産(GDP)が2期連続のマイナス成長となり、14年度全体でもマイナス成長になる公算が高まっている。仮に10%の消費増税が延期された場合でも、足元の民需の弱さを補うことは難しいとの分析が広がっている。デフレ脱却と財政再建の二兎を追うアベノミクスは正念場を迎えようとしている。

<14年度マイナス成長の確率「90%以上」>

「もはや2014年度でマイナス成長は不可避だ」──。ニッセイ基礎研究所・経済調査室長の斉藤太郎氏は、7─9月期が2四半期連続でマイナス成長となったことを受けて、14年度の成長率が9割以上の確率でマイナス成長に陥るとみている。

景気はすでに後退局面入りしている可能性が、景気動向指数からも指摘されている。今回のGDPはそのことを裏付ける結果となっている。第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏も「14年度のGDP成長率見通しは下方修正が相次ぎ、マイナス成長予想がコンセンサスになるだろう」とみている。

7─9月期の悪化の最大の要因は、企業の在庫投資のマイナス寄与。だが、その背景にある民間需要の弱さは、構造的な要因もあり、当面大きく反発する可能性は見込みにくい。

というのも増税による物価上昇と円安による値上げのダブルパンチが、家計の負担を増大させている。こうした物価高は所得が追い付くまで当面消えない。輸出も海外生産移転など構造的な影響が定着し、けん引役になりにくい。こうした内外需要の停滞感は、企業の設備投資の先送りにもつながっている。

実際、消費は天候要因の消えた秋以降も脆弱さが消えない。11月に発表されたデータをみても、10月自動車販売の低迷は続き、景気ウォッチャー調査や消費者態度指数といった消費関連データは10月分は軒並み悪化している。

企業の景況感も、ロイター短観の消費関連業種は3番底の様相を呈している。10─12月にはボーナス増加もあり、ある程度消費の回復が見込まれるが、マインドの弱さが目立ち、勢いは限定的となる可能性がある。

<増税延期でも景気対策に限界>

政府はすでに増税延期の方針を固めているが、来年10月に予定されていた増税がなくなることで、その時点での景気の落ち込みは防げても、足元の景気がここまで悪化していることへのプラス効果は限定的との見方が多い。

斉藤氏は今の景気悪化について「4月増税の影響であり、来年度の再増税延期で対処できない。悪化を止めるには年度末にかけて補正予算で対処する以外にはない」と指摘する。

ただ、その補正予算も、内容的には低所得者対策や円安対策などが中心。また、財政再建の視点からも、10%増税を延期するなら、大規模対策を打つ財政的な余裕はない。

一方、アベノミクスにおける第1、第2の矢である金融・財政政策が持つ景気への波及効果について、限界にきているとの指摘も出てきた。

SMBC日興証券・シニアエコノミストの宮前耕也氏は「金融緩和による円安はそれで儲かる人、損する人が両方いるため、全体に恩恵が波及しにくい。財政出動で5兆円の補正予算を打っても、人手不足と資材高で公共事業は実態としてさほど出ていない。時間のかかる第3の矢を地道に進める以外にない」と指摘する。

足元の経済悪化に対処する効果的な政策手段は、なかなか見つからないという現状が浮き彫りになりつつある。

<衆院選の争点はアベノミクスか>

安倍首相は18日にも増税延期の決断を表明し、衆院を解散してその方針に関して「信を問う」可能性が高いとみられている。

2四半期連続のマイナス成長と14年度のマイナス成長の公算も高まる中、増税延期は致し方ないとの見方も広がる一方で、財政再建の視点からは、いつまで増税を延期するのかリスクを指摘する声も少なくない。

企業からは「増税を実施できる経済環境など決して訪れない。判断の問題であり経済環境要因ではない」(11月ロイター企業調査より)という見方も出ている。

菅義偉官房長官は、14日午前の記者会見で「安倍政権の基本方針はデフレ脱却、日本経済再生が最優先。その中で(財政再建との)二兎を追うということだ」と述べている。

デフレ脱却シナリオが大きく崩れてしまった足元の景気と、増税延期で一層の遅れを余儀なくされる財政再建シナリオ。どちらも政府の当初想定通りには推移していないことを示す結果となっている。

安倍首相や菅官房長官は、政権発足直前の成長率や物価上昇率、失業率、有効求人倍率、賃金の伸びなどを示し、民主党政権時代の停滞から飛躍したと強調する。

他方、「二兎を追う」スタンスを疑問視する声が、市場の一部からも出てきた。どちらの見解を国民が支持するのか、これから予想される衆院選で、その結果が出ることになる。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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