自民の総裁任期 延長におごりが透ける
安倍晋三首相の自民党総裁としての任期の延長論が党内で浮上している。総裁任期は2018年9月までだが、長期政権を視野に入れ、「連続2期(6年)まで」と多選を禁じた党則を改正する議論が活発化しそうだ。
かつて自民の長期政権が続いた時代には総裁任期が首相の「独断専行」に歯止めをかける効果があった。「安倍1強」とされる党内状況を踏まえれば、任期延長は慎重に議論すべきではなかろうか。
自民の二階俊博幹事長は「安倍首相は内政・外交ともに多くの実績を挙げている」として首相の総裁任期延長を容認。その是非を検討する場を設け、年内をめどに結論を得たい考えを示している。
首相自身は「全く考えていない」と任期延長を否定するものの、27年ぶりに自民が衆参両院で過半数を制し「戦後最も安定した政治基盤を獲得できた」と自負する。悲願の改憲を在任中に実現したいとの思いは強いに違いない。リオデジャネイロ五輪閉会式でのサプライズ登場にも、4年後に迫った東京五輪・パラリンピックを首相として迎えたいとの思惑が見え隠れしたのは否めない。
現行法に首相の任期の定めはないが、自民は党則で総裁任期を定めている。任期延長には総務会や両院議員総会、党大会を経て党則を改正する必要がある。
総裁任期はその時々の都合で変更され、連続3選禁止は1980年の改正で盛り込まれた。党の内規とはいえ、政権政党ゆえに総裁任期は「首相の座」に直結し、軽々に扱うべきではない。
党内で「3期9年まで」とする党則改正案が有力視されているが、「ポスト安倍」をにらむ石破茂前地方創生担当相らがけん制し、疑問を呈するのも当然か。仮に延長が必要ならば、国民にきちんと理由を説明する必要がある。
2006年発足の第1次安倍政権以降、民主党の野田佳彦政権まで6首相が毎年交代した。政治の安定性を欠き、国際的な発言力が低下するなど弊害が目立った。揺れ動く国際情勢に対応するには長期政権による強いリーダーを求める意見があるのも確かだ。
しかし共同通信社の世論調査では安倍首相の総裁任期延長は「しない方がいい」が52・5%で、「した方がいい」の37・8%を上回り、必ずしも肯定的に受け止められていない。「安倍1強」体制の継続に国民の警戒感が表れたとも言え、総裁任期の拙速な延長は民意との乖離(かいり)を招くことになる。
[京都新聞 2016年08月24日掲載]
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