2016年8月22日月曜日

「若冲 天才絵師の謎に迫る」 (NHKスペシャル2016-04-24メモ)

つい先日(8月17日)、京都・相国寺の美術館の「伊藤若冲展」に行った。
京都 相国寺承天閣美術館 「伊藤若冲展」に行った 2016-08-17 『動植綵絵』30幅はコロタイプという複製 釈迦三尊像3幅 鹿苑寺(金閣寺のある)大書院の障壁画

行くにあたって、今年4月に放映されたNスぺ「若冲 天才絵師の謎に迫る」をYoutubeから探し出して、特に『動植綵絵』について要点だけを俄か勉強しておいた。

以下、自分流メモ。

■83年ぶりに発見された『孔雀鳳凰図』
(これは「動植綵絵」ではない)

・箱根の岡田美術館が所蔵
・一対の花鳥画
絹地に極彩色で松やぼたんを背景に描いた孔雀図と松や日輪を伴った鳳凰図から成る。

・超高性能カメラで、孔雀の羽根の画像分析を行なったところ、どの羽根にも、下絵として描いた輪郭線がないことがわかった。
・若冲は、肌色の絹地の上に下絵も輪郭線も描かず、白一色の細い線で直接孔雀の羽根を描いていた。線の幅は、細かいところで0.2mmほど。しかも1ヶ所のミスも描き直しも見当たらない。
・線のズレ、重なりもなく、線の間隔も殆ど一定。
(よほどの精神力、根気強さがないとこういう描き方はできない)

・同時代の丸山応挙の孔雀の絵は、羽根は塗りつぶされている。
若冲は無数の線を組み合わせて描いている。

■「動植綵絵」の代表作
『群鶏図』
『雪中錦鶏図』

『牡丹小禽図』
・「動植綵絵」の最大の特徴は極彩色
・若冲が使っていた絵具は、貝を砕いた白の胡粉(こふん)、赤褐色の石から取った赤の辰砂など、他の絵師と変わらない。
・限られた数の絵の具を使いながら、圧倒的な色彩を充たすことができたかを解く鍵は、牡丹の「しべ」にある。

・画像解析をしたところ、牡丹の「しべ」の1mmほどの隙間から薄い緑の層が見つかった。
これにより、僅か2cmほどの「シベ」を描くのに、重ね塗りが行われていたことが分かった。
・一番下に緑の顔料を塗り、その上に白の胡粉の点を描き、その上に下地が透ける黄色の染料を薄く塗った後、さらに赤を乗せるという具合に、絵の具の4層の塗り重ねが行われていた。

■『南天雄鶏図』
『南天雄鶏図』では、南天に一種類の赤の顔料しか使われていないのに、一つ一つの実が違った色に見える。
X線で撮影すると、顔料の厚みで南天の色の濃淡を変えている。
絵の厚みを一粒一粒微妙に変え、絹地の透き具合によって色彩変化を生み出していた。

■『秋塘群雀図』
・雀の僅か1cmほどの胸の部分にオレンジ色の点々が存在していた。絹目の隙間に置かれたオレンジ色の粒は、鉛を主成分とする顔料、鉛丹(えんたん)だった。
・粒の大きさは0.1mmで、目視では認識できない。
・若冲は、この顔料の粒子を筆の先に付けて絹目の隙間に置くことで、雀の胸の微妙な色を生み出そうとしていた。
・人間の目では認識できなくても、人間の脳の中では、その描写は認識できる。
脳の中で「混色」という形になって中間色の微妙な色合いを認識することができる。
(尋常ではない色への追究)

■『紅葉小禽図』
『群鶏図』も同じく、裏彩色の技法を活用している。

・盛りを迎えた真っ赤な葉は、表は赤、裏は橙を塗って燃えるような色を表現している。
赤く色づく前の葉は、表からは葉の縁取りに赤、裏からは黄色を塗ってある。
奥にある淡いピンクの葉は、表には何も塗らず、裏から赤を塗っている。
このように、570枚の葉のほとんど総てに裏配色を施して、同じ色のない紅葉の世界を作り上げている。

■『群魚図(鯛)』
・左下隅のルリハタを可視・近赤外線同時照射撮影したところ、群青や藍ではなく、プルシアンブルーが使われていることが判明した。それまで日本で一度も使われたことのない新たな顔料が検出された。
・プルシアンブルーは、1704年にドイツで作られた絵具で、赤い色を作ろうとして誤った材料を混ぜたことで偶然生まれた顔料で、世界初の人工の青だった。
日本には、オランダ船によって宝暦2年(1752)にもたらされたとされている。

・プルシアンブルーを用いた初期の作品は、1770年前半ごろの作とされる平賀源内の「西洋婦人図」がある。
・1826年ころからは、清国の商人が大量に持ち込んだためで急速に普及し、葛飾北斎などは浮世絵の空の色に使用している。
・若冲の『群魚図』は明和3年(1766)であり、平賀源内の作品より先行している。

・江戸時代中期、プルシアンブルーの顔料は長崎の出島に1kgほどしか届いていなかった。
若冲はこの高価な絵の具をいち早く入手し、誰よりも早く絵に試していた可能性がある。
若冲がどのようにしてこの絵の具を入手できたかは不明であるが、黄檗宗の僧・鶴亭(かくてい)や文人の木村蒹霞堂(かえんどう)の存在が想定されている。

(ひとまず終わり)


若冲 天才絵師の謎に迫る (2016年)
NHKスペシャル「若冲 天才絵師の謎に迫る」 2016年4月24日

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