2010年9月25日土曜日

大正12年(1923)9月4日~5日 亀戸事件 朝鮮人暴動の背後で糸を引いている者がいるとの新しい流言

大正12年(1923)9月4日
・亀戸事件
南葛労働会の川合義虎・平沢計七ら10人の労働運動家、亀戸警察署で軍隊(習志野騎兵第13連隊員)に虐殺。
9月末、布施辰治・春日庄次郎(出版産業従業員組合)ら10数人と荒川放水路土手を掘返して死体を捜す。
10月10日新聞発表。
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3日夜、南葛労働会本部となっている川合義虎の家から、川合と居合わせた労働者山岸実司・鈴木直一・近藤広造・加藤高寿・北島吉蔵が検束され、同会の吉村光治・佐藤欣治、純労働者組合平沢計七が亀戸署に引き立てられる。
夜~翌日、亀戸署では多数の朝鮮人が殺害されるが、彼等も、拘留されている自警団員らと共に斬殺。亀戸署は家族に対し、釈放したと欺き事件を隠し続ける。
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■「大阪毎日新聞」10月11日
(見出し)
「東京亀戸署が×余名を×殺した事実遂に暴露して発表さる」
(記事)
「大震災の起った際、東京亀戸署に多数労働者殺戮の惨事が強行されたが、絶対に秘密を守ると同時に、警視庁は内務省警保局と打ち合はせ、一切掲載の禁止を命じて許さなかったところ、証拠として消すべからざる事実に対し、秘密は到底保たれ得ペくもあらず、遂に十日警視庁はその事実を発表せざるを得ざるに至った」(「大阪毎日新聞」10月11日)
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南葛労働組合の属する総同盟と自由法曹団弁護士たちが事件を究明。
検束された夜の亀戸署は静かで暴動の起る気配もなかったこと、平沢らは連行され、裸にされ激しい暴行の上、刺され首を斬られる。
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同日、
・埼玉・千葉両県も戒厳地区に含められる。
4日、警察のトラック5台で護送中の朝鮮人が、埼玉県の本庄・神保原両町の間で群衆に襲撃され21人を除いて皆殺しにされる事件が起る。
夜、船橋送信所長大森良三大尉は流言に脅かされて「SOS援兵たのむ船橋」の電文を送り、これは中国各地でも傍受される。
もっとも兇暴な江東地区の自警団が軍隊に鎮撫され、朝鮮人殺傷が止むのは7日頃。
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・この日(7月4日)付け「大阪朝日新聞」。
(見出し)
「各地でも警戒されたし 警保局から各所へ無電」
(記事:段落を施す)
「神戸に於ける某無線電信で三日傍受したところによると、内務省警保局では朝鮮総督府、呉、佐世保両鎮守府並に舞鶴要港部司令官宛てに目下東京市内に於ける大混乱状態に附け込み、不逞鮮人の一派は随所に蜂起せんとするの模様あり
中には爆弾を持って市内を密行し、又石油缶を持ち運び混雑に紛れて大建築物に放火せんとするの模様あり。
東京市内に於て極力警戒中であるが各地に於ても厳戒せられたしとあった」
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・午前10時30分、東北線上り開通。
翌5日早朝には下り線も開通。
東北線開通により、北への輸送路が開かれ、関西へは信越線篠ノ井駅から中央線に乗り換えて輸送可能となる。
また、鉄道省は、4日より、一般避難民輸送を無料化する。
9月末迄に200万人を輸送するが、流言を全国に流布させることにもなる。
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この日、
・ウラジオ郊外セダンカで亡命生活の荒畑寒村らに大震災の一報入る。
10月中旬、上海に移動。
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7月5日
・言論統制により、
警官・軍隊・自警団による朝鮮人虐殺の事実を隠し、また、新たな流言を流す事でこれをを正当化する工作
外国政府・内外世論・植民地支配への影響を危惧。
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5日、各省と戒厳司令部との協議機関の臨時震災救護事務局警備部は、次の事項を事件の真相として宜伝し始める。
「鮮人に対しことさらに大なる迫害を加えたる事実なし」
「朝鮮人、暴行または暴行せんとしたる事実を極力調査し、肯定に努むること」
「海外宣伝は特に赤化日本人及び赤化鮮人が背後に暴行を煽動したる事実ありたることを宣伝するに努むること」。
この決定は、存在しない朝鮮人暴動の背後で社会主義者が糸をひいていたのだ、との新しい流言が生む。
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この日、
・警視庁、正力官房主事と馬場警務部長名の通牒。
社会主義者の所在を確実につかみ、その動きを監視せよ
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・この頃から、近藤憲二・福田狂二・浅沼稲次郎・稲村順三・北原竜雄らの社会主義者たちが続々検束される。
総同盟麻生久夫妻は、足尾銅山鉱夫がダイナマイトをもってきて騒擾を起すとのデマの為に赤ん坊づれで収容。
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・この日、内閣告諭第2号及び関東戒厳司令官(福田雅太郎大将)命第2号。
「内閣告諭第二号 
今次ノ震災ニ乗ジ 一部不逞鮮人ノ妄動アリトシテ鮮人ニ対シ頗ル不快ノ感ヲ抱ク者アリト聞ク 
鮮人ノ所為若シ不穏ニ亙ルニ於テハ速ニ取締ノ軍隊又ハ警察官ニ通告シテ其処置ニ俟ツベキモノナルニ民衆自ラ濫リニ鮮人ニ迫害ラ加フルガ如キコトハ固ヨリ日鮮同化ノ根本主義ニ背戻スルノミナラズ 又諸外国ニ報ゼラレテ決シテ好マシキコトニアラズ 
事ハ今次ノ唐突ニシテ困難ナル事態ニ基因スト認メラルルモ刻下ノ非常ニ当り克ク平素ノ冷静ラ失ハズ慎重前後ノ措置ヲ誤ラズ以テ我国民ノ節制卜平和ノ精神ヲ発揮セムコトハ 本大臣ノ此際特ニ望ム所ニシテ民衆各自ノ切ニ自重ヲ求ムル次第ナリ 
内閣総理大臣伯爵 山本権兵衛」
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「一、自警ノ為団体若クハ個人毎ニ所要ノ警戒方法ヲ執リアルモノハ、予メ最寄警備隊、憲兵又ハ警察官こ届出其指示を受クベシ 
二、戒厳地域内ニ於ケル通行人ニ対スル誰何、検問ハ軍隊、憲兵及警察官二限り之ヲ行アモノトス 
三、軍隊、憲兵又ハ警察官憲ヨリ許可アルニ非ザレバ、地方自警団及一般人民ハ武器又ハ兇器ノ携帯ヲ許サズ」
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