前回に引き続き漱石「猫」執筆当時の「黙翁年表」明治37年(1904)12月です。
*
明治37年(1904)12月
・松岡文子、平民社賄方「平民社の主婦」として入社。
*
・漱石(37)、高浜虚子の勧めで、文章会「山会」で「吾輩は猫である」を発表。
*
・孫文、再度日本亡命。
*
・トロツキー、翌年に『1月9日以前』として出版される一連の評論を書き、自由主義を厳しく批判し、ゼネラル・ストライキ論を展開。
*
12月1日
・午前1時過ぎ、203高地東北部山頂にロシア軍の逆襲。
第28連隊第2大隊長真崎友吉少佐ら山頂の日本軍は殆ど死傷。
ロシア軍が東北部を奪回。
午前8時頃、後備第1旅団長友安少将、第7師団長に辞任申し出。大迫中将は、第14旅団長斉藤太郎少将を203高地攻撃指導官に変更。
*
12月1日
・満州軍総参謀長児玉源太郎大将、参謀田中国重中佐、柳樹房の第3軍司令部到着。
乃木大将、203高地作戦指揮交代承諾。
*
12月3日
・「平民新聞」第53号(「共産党宣言」掲載)第1審公判。弁護士今村力三郎・卜部喜太郎・板倉中・花井卓蔵・木下尚江。
13日、第2回。
20日、判決。西川・幸徳・堺夫々罰金80円。翻訳頒布禁止は撤回(判決文はマルクスを「ドイツの偉人」と称する)。
*
12月3日
・(露暦11/20)ペテルブルク、解放同盟主催司法制度改革40周年記念バンケット、676人、憲法制定会議即時招集。
*
12月4日
・第7師団長大迫尚敏中将、5日の攻撃を下命。
第14旅団長斉藤太郎少将に殆どの兵力を委ね「203高地攻撃隊」とする。
第26連隊と工兵の一部は第13旅団長吉田清一少将指揮で「老虎溝山攻撃隊」として牽制任務を与え、第35連隊を予備にまわす。
*
12月4日
・「日本平民新聞発行届出始末」(「平民新聞」第56号)。
*
12月5日
・午前7時、事前砲撃。
午前9時15分、第26連隊長村上正路大佐、工兵35と選抜隊(第25連隊30、第27・28連隊各90)の計245に突撃命令。ロシア軍銃火を浴びる。
午前10時、選抜隊と第27連隊集成第3中隊、西南部山頂到達。兵力は僅か40。
午前10時20分、西南部山頂に援軍増派し西南部奪取は確実となる。
午前10時30分、東北部山頂のロシア軍の銃火に衰えが見え、旅順口新市街へ退却する車輌を確認。
午後1時45分、第28連隊集成第1中隊長沼部大尉は、命令を受け歩兵30・工兵5を1組とする3班で突撃。
東北部の西側を占領。ロシア兵は中央鞍部から抵抗。
午後2時、203高地西南部と砲兵隊の間で電話線が開通、28センチ砲4門が港内ロシア艦隊を砲撃。30分後には電話線は切断されるが、戦艦「ポルタワ」火薬庫に命中し沈没させる。
午後2時20分、第25連隊長渡辺水哉大佐の隊が東北部頂上に到達。中央部のロシア兵と接戦線。
午後4時30分、ロシア側の銃火が急速に衰える。
午後8時30分、ロシア軍の増援隊が西南部・中央部に接近するが壊滅。
午後10時、残存ロシア兵が退却開始。
*
12月6日
・203高地陥落
午前7時30分、203高地占領確認。日本側戦傷16,936(内戦死5,052)。ロシア側戦傷4,576。第3軍累計戦傷48,788。
*
12月6日
・午後2時、第3軍、旅順港内砲撃開始。
戦艦「レトゥイザン」「ベレスヴェート」撃沈。造船所・工場破壊。
7日、巡洋艦「パルラーダ」・戦艦「ポビエタ」に命中、両艦は着底。
8日、巡洋艦「バヤーン」が着底。
*
12月6日
・三越呉服店(株)設立。本店東京。21日開業。
*
12月6日
・ルーズベルト大統領,年次教書で「モンロー主義の系譜(コロラリー)」発表。
「西半球の諸国の失政に対しては国際警察力として行動せざるをえない」と宣言、カリブ海諸国への干渉主張。ルーズベルト・コロラリー。
*
12月8日
・政友会原敬、密かに桂首相と会見(第1回秘密交渉)。3時間。
桂は、戦後在職するなら政友会と連立、辞職すれば西園寺を後任推薦すると約束。
「桂園時代」(桂・政友会提携し、桂・西園寺が交代して政権掌握)が始まる(「大正政変」迄)。
第21議会での政府予算案に対する憲政本党の削減要求は政友会の3倍、桂は政友会と連携する考え。
原は、政友会の議席数が過半数を下回るため、政府との連携か憲政本党との連携かを冷静に判断する必要あり慎重な対応。
*
12月8日
・東京電気鉄道お茶の水~土橋間開業。外濠線。
*
12月9日
・旅順艦隊全滅。
戦艦「セヴァストポリ」、駆逐艦6隻、旅順港脱出。要塞近くに隠れる。
*
12月9日
・総参謀長児玉源太郎、旅順発。総司令部に戻る。
*
12月9日
・白仁武栃木県知事、谷中村買収案提出。
翌10日、栃木県会(秘密会)可決(賛成18、反対12)。
谷中村滅亡の第一歩。
*
12月10日
・生理学者パブロフ、ノーベル生理学・医学賞を受賞。
*
12月10日
・セルビア、ニコラ・パシッチが初めて首相に選出。第1次パシッチ内閣発足。反オーストリア的国粋主義政府。
*
12月11日
・旅順口港の艦船砲撃中止。市街に対する砲撃は続行。
*
12月11日
・「平民新聞」第57号「平民日記」に、「十二月六日、某氏から軍艦○○乗組の水夫二十余名が調印した普通選挙請願用紙を送って呉れた」とあり。
この頃、社会主義協会は、普選期成同盟と合同し請願署名活動。明治39年2月20日署名2240以上を衆議院に提出。
*
12月11日
・(露暦11/28)ペテルブルク、学生デモ、官憲の暴行。統一歩調とれなかった社会民主党ペトログラード委員会不信。
*
12月12日
・午前0時30分、日本水雷艇、「セヴァストポリ」攻撃、大破。
*
12月13日
・仮装巡洋艦「香港丸」「日本丸」、佐世保軍港で修理終えシンガポール、インド洋、マレー群島巡航し、1月18日、佐世保に戻る。
*
12月13日
・ハンガリー、下院議場の組織的破壊と全国的扇動。議会解散。総選挙。与党159、独立党166、野党全体254。30年間統治の自由党敗北。
*
12月17日
・プッチーニ、オペラ「蝶々夫人」、ミラノで初演。
*
12月18日
・第3軍、東鶏冠山北保塁攻撃、陥落。
強襲策をとらず、敵塁深く掘り進んだ坑道に爆薬を仕掛け、同時に突撃隊が突進する戦術。
兵力は第11師団(鮫島重雄中将)第22連隊長青木助次郎大佐指揮する計1536。
対するロシア守兵は140。
午後2時20分過ぎ、第1~4突撃隊が突進するが、死傷者が増大するのみ。
午後6時30分頃、後備第38連隊第2大隊(岩本栄輔大尉)第7・8中隊、突撃。第7中隊は将校と兵士2/3を失う。突撃中止。
午後7時30分頃、再突撃、失敗。
午後9時、再々攻撃。第44連隊第3大隊長権藤少佐は救援突撃隊60を突撃させる。
午後11時50分、堡塁陥落確認。死傷850(戦死151)。
*
12月18日
・幸徳秋水「非戦論を止めず」(「平民新聞」第58号)。
*
12月20日
・午前1時、バルチック艦隊、アフリカ最南端アガラス岬沖通過、インド洋に向う。
25日マダガスカル島南端、
27日朝セントマリー海峡、着。
*
12月22日
・ジュネーブ、レーニン、「フベリョード((前進)」創刊。レーニン「専制政治とプロレタリアート」、絶対君主制は滅びつつある。
*
12月25日
・再上京の石川啄木、盛岡中学の先輩金田一京助に15円の借金申込。
*
12月25日
・(露暦12/12)改革の一般的再検討の勅令とゼムストヴォ・市会での改革論議を違法とする政府発表。
*
12月26日
・石川啄木父一禎、宗費113円滞納のため曹洞宗宗務院より宝徳寺住職罷免。
翌38年1月15日、懲戒処分告示。
3月2日、宝徳寺を出て渋民大字芋田に移転。
*
12月26日
・バクーで労働者がゼネスト(~1905年1月13)。
*
12月26日
・ロシア皇帝ニコライ2世、民衆の待遇改善を約束する勅令。しかし、ストと暴動は厳禁すると警告。
*
12月27日
・(露暦12/14)、デカブリスト記パンフレット、780人、戦争即時停止・憲法制定会議即時召集要求決議。
*
12月27日
・朝鮮、駐米日本公使館顧問米人ダーハム・スティーヴンス、外交顧問着任。~1908年。
帰国後、オークランドで在米民族主義者田明雲に暗殺。
*
12月28日
・二龍山攻撃。
東鶏冠山北保塁攻撃と同様に爆破から始まる。ロシア兵の生埋め150・爆煙で倒れるもの20。
第36連隊(福谷幹雄中佐)第1大隊(田中貫一少佐)堀江小内蔵中尉108と第19連隊(山田良永中佐)第3大隊(藤岡忠純少佐)加納道大尉175の2特別中隊が突撃。死傷者続出。藤岡少佐負傷(小倉可夫中尉が代理)。
午後3時30分頃、爆薬に敵弾が命中し爆発により田中貫一少佐戦死(白石熊雄大尉代理)。
午後3時45分、突撃掩護射撃。ロシア兵の反撃。
午後4時7分、突撃。第19連隊が砲台線東部、第36連隊が同西部に辿りつく。ロシア兵の抵抗続く。
午後6時20分、第19・36連隊は更に突撃。第36連隊特別中隊は全滅。
午後9時まえ、ロシア保塁指揮官は退却命令。
29日午前3時、占領。第9師団死傷1,190(内戦死237)。
*
12月29日
・露第二太平洋艦隊主力、マダガスカル島沖投錨。
*
12月29日
・ロシア、ステッセル、緊急陸海幹部会議招集。降伏か抗戦続行か討議。
*
12月30日
・連合艦隊司令長官東郷平八郎大将、上京、拝謁。
*
12月31日
・松樹山保塁攻撃、陥落。
午前10時、保塁地下爆破。ロシア守兵208中半数が生埋め。
午前10時30分、第1師団(松村中将)第2連隊(渡辺祺十郎大佐)第1大隊(馬場少佐)木田特務曹長ら突撃。
午前11時50分、守備兵が降伏。
*
*
*
0 件のコメント:
コメントを投稿