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【著者は語る】ジャーナリスト・堤未果氏 「沈みゆく大国 アメリカ」
2015.1.3 05:00
■知られざる医療大崩壊の実態
ずっと離れて暮らしていた父が、私が米国から帰国して親子の距離を縮め出した矢先に糖尿病を悪化させ人工透析となった。そして早すぎる最期に残された強烈なメッセージが、アメリカばかりみていた私の、祖国への思いを大きく変えることになる。
これまでアメリカという大国を通し、金融、食、農業、自治体、教育など、あらゆるものを商品化する「1%の超・富裕層」の国家解体ゲームについて追い続けてきた。
今回の『沈みゆく大国 アメリカ』で描いたのは、日本では正確に報じられることがない、医療大崩壊の実態だ。マイケル・ムーア監督が映画「シッコ」で告発した、先進国とは思えない驚愕(きょうがく)のエピソード-傷口を自分で縫う患者等々-を覚えているだろうか?
医療もまた、市場に並ぶ「商品」の一つであるアメリカ。だからこそ、次々に医療破産する国民や無保険者の救済を掲げてオバマ大統領が導入した米国版皆保険制度「オバマケア」に、多くの国民は最後の希望を賭けたのだ。だが2014年の施行後に、彼らは知ることになる。リーマン・ショックで露呈したマネーゲームが、まだ終わっていなかったことに。「がん治療薬は自己負担、安楽死薬なら保険適用」「1粒10万円の薬」「手厚く治療すると罰金、やらずに死ねば遺族から訴訟」「自殺率1位は医者」…
「この国の国民皆保険制度を、なんとしても守ってくれ」
人工透析という高度医療を「超・富裕層」以外の人間にも受益可能な日本の医療。バラバラだった父と娘に、共に過ごせた最後の日常を与えてくれた貴いこの制度が、今、想像を超える強い勢力によって急速に切り崩されようとしている。
ある米国人医師は私に言った。無知は弱さになると。一人でも多くの日本人に、知ってほしくて書き上げた。この戦いだけは、負けるわけにいかないのだ。(集英社新書 778円)
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【プロフィル】堤未果
つつみ・みか ジャーナリスト、東京生まれ。ニューヨーク市立大学大学院で修士号取得。2006年『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で黒田清日本ジャーナリスト会議新人賞を受賞。08年『ルポ 貧困大国アメリカ』で日本エッセイスト・クラブ賞、新書大賞を受賞。11年『政府は必ず嘘をつく』で早稲田大学理事長賞を受賞。
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