NHKニュース
原発賠償の和解成立 申し立ての7分の1
9月1日 16時30分
東京電力福島第一原子力発電所の事故の損害賠償で、被害者と東京電力との和解を仲介する国の「紛争解決センター」が受け付けを開始してから1日で1年です。
しかし、これまでに和解が成立したのは500件余りと、申し立ての7分の1にとどまっていて、迅速な解決をどう実現するかが課題となっています。
東京や福島に事務所がある「原子力損害賠償紛争解決センター」は、原発事故の被害者と東京電力との間で和解を仲介する国の機関です。
受け付けを開始してから1日で1年になりますが、先月31日までに3793件の申し立てに対し、和解が成立して解決したのは520件と7分の1程度にとどまっています。
さらに、和解したケースでも申し立てから解決まで3か月程度という当初の目標が、実際は6か月程度かかっていて、迅速な解決をどう実現するかが課題となっています。
センターでは、仲介を担当する弁護士が不足していることや和解案の提示に対し、東京電力の回答が遅いケースがあったことなどを理由に挙げていて、担当の弁護士を当初のおよそ130人から年内にも280人程度まで増やすとともに、東京電力に対しても早い対応を求めています。
センターの野山宏室長は「被害者の生活再建の第一歩を援助することが私たちの仕事であり、当初の目標である3か月での解決をめざしたい」と話しています。
“紛争解決センターにも改善すべき点”
実際に「紛争解決センター」で和解した被害者からは解決までに時間がかかる現状について、センターにも改善すべき点があると指摘する声が上がっています。
福島県大熊町から埼玉県所沢市に避難している早川三郎さん(73)は、去年9月、原発から2.5キロの場所にある自宅などの賠償を「原子力損害賠償紛争解決センター」に申し立てました。
早川さんが「センター」を利用したのは、東京電力に直接、賠償を請求しても個人の事情や言い分が反映されないのではないかと考えからでした。
しかし、交渉はなかなか進みませんでした。
時間がかかったのは、東京電力が「ことし4月中に不動産の賠償額の算定基準を公表する」としたことが一番の理由でした。
「センター」は「公表される基準を待つ必要がある」と判断して、東京電力との自宅を巡る交渉を一時、ストップします。
しかし、東京電力の基準の発表は遅れ、結局「センター」はことし6月、自宅の購入価格を基に賠償額を算定して和解案を示し、東京電力もこれを受け入れて、先月、ようやく和解が成立しました。
和解が成立したのは申し立てから1年近くたっていました。
早川さんは避難先を出て、福島県内の別の場所に新しく住宅を確保したいと考えていますが、解決が遅れたことで、1年近く見通しを立てることができなかったといいます。
早川さんは「センターが東京電力の基準を待たずに、もっと早い段階で和解案を出していれば、もっと速く解決できたはずだが、東京電力の顔色をうかがっているようにも見えた。被害者は精神的にも経済的にも厳しい状況にあるので、センターにはもっと独自性を出し、威厳を持って対応してもらいたい」と話しています。
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