「農民工」の告発、再生180万回
「朝日新聞」11月5日
役人言葉で賃金支払い求める
中国の出稼ぎ農民「農民工」が、外務省報道官の記者会見の様子や役人言葉をまねて、未払い給与の支払いを求めるインターネット上の動画が話題になっている。
立場が弱い農民工が雇い主に対抗しようと考え出した奇策に、メディアは「喜劇の裏に悲劇がある」と同情的だ。
動画は4分余り。
手書きの背景の前で「農民工給与争議スポークスマン苗翠花」と名乗る中年女性が、天津市の墓地建設工事での未払い賃金の支払いを訴える。
なまりのある中国語で、「我々は農民の合法的権益を保護するため、幾度も厳正に交渉する」といった官僚風の言い回しを、慣れない様子で話す姿が人気になった。
再生回数は180万回を超える。
女性は小学校に2年間しか通わなかったため、漢字の読み方も教わったという。
中国国家統計局によると、農民工は2011年時点で約2億5千万人いるとされ、中国の経済成長を支えている。
しかし、労働契約を交わしていないケースも多く、劣悪な労働条件や未払い賃金が社会問題になっている。
全国の未払い給与総額は1千億元(約1兆2500億円)に達するとの報道もある。
給与支払いを求め、工事現場のクレーンの上に居座ったり、雇い主の車を集団で囲んだりする過激な方法も登場。
逮捕者や死者が出るケースもある。
制作者のフリーカメラマンの男性は北京紙「新京報」の取材に、南シナ海の領有権問題に関する記者会見の映像に着想を得たと明かし、「法的手続きも陳情も全部やったがだめだった。『陳情はネットにしかず』というのは悲しいことだ」と話している。 (北京=香取啓介)
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