2012年11月10日土曜日

大飯と活断層 疑いあるなら停止が筋(北海道新聞)

北海道新聞
大飯と活断層 疑いあるなら停止が筋(11月10日)

 国内で唯一稼働している関西電力大飯原発(福井県)敷地内の断層が活断層かどうか、原子力規制委員会の結論が遅れている。

 規制委の専門家会合は、判断するにはデータが不十分として追加調査を決めた。

 ただし、活断層の可能性が否定できない点では意見が一致している。疑いがある以上、規制委は関電に大飯原発の停止を要請するべきだ。

 問題の断層は、非常時に原子炉を冷やすための海水を取り込む取水路の地下を走っている。国の指針では、こうした重要施設を活断層の上に設置できない。

 地震で地割れなどが生じれば、過酷事故を引き起こす恐れがあり、建築物の耐震性の強化では対処しようがないからだ。

 原発直下に活断層が確認されれば、運転停止どころか、廃炉の決断を迫られる。

 大飯原発は、夏の電力不足回避を名目に、野田佳彦首相が根拠の薄弱な暫定基準によって再稼働させた経緯がある。

 夏が終わり、活断層という新たなリスクまで出てきた今、動かし続ける理由はない。根本的な危険に目をつぶって、見切り発車した首相の責任も問われて当然だ。

 原発耐震指針の活断層の定義は、当初5万年前以降に動いた断層とされていたが、2006年の改定で活動時期が12万~13万年前以降に拡大された。規制委は、さらに40万年前以降に広げる方針を示している。

 政府の地震調査研究推進本部にようやく足並みをそろえた指針の厳格化であり、むしろ遅いぐらいだ。

 東日本大震災後、各地の原発周辺で断層の再評価が始まると、活断層疑惑が次々に浮上した。今回の調査でも、関電の資料に多くの不備が指摘されている。

 基準も審査も甘すぎた過去と決別し国民の信頼回復を目指す規制委にとって、大飯は試金石となろう。

 規制委の田中俊一委員長は、活断層の疑いが「黒か濃いグレーの場合は止めていただく」と表明した。大飯は既にグレーゾーンにある。

 万一のことがあれば、もはや「想定外」とは言えない。

 拙速を避け、調査に念を入れたいという考えは分かるが、いたずらに長引けば、不安を抱えた原発が稼働し続けることになる。

 納得できる結論にたどり着くまで、敷地内と周辺で徹底的な調査をするためにも、いったん運転を停止させる必要がある。

 規制委が審査を尽くす目的は、あくまで国民の安全を守ることにある。そのために独立性と権限を与えられたことを忘れてはならない。

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