2013年7月10日水曜日

福島第1の高濃度の汚染水、海洋拡散の疑い 原子力規制委員会が見解

日経新聞
福島第1の汚染水、海洋拡散の疑い 規制委が見解 
2013/7/10 12:56

東京電力福島第1原子力発電所の海側の井戸から放射性物質が検出されている問題で、原子力規制委員会は10日、「高濃度汚染水が地中に漏れ、海洋への拡散が強く疑われる」との見解を表明した。岸壁沿いの地中に薬液を注入して固める地盤改良や海側の遮水壁の工事を急ぐよう、東電に指示することを決めた。

規制委はまた、放射性物質が検出されている井戸近くの溝に高濃度の汚染水がたまっていることを指摘。汚染源の可能性があるとし、早期に抜き取り作業に着手するよう東電に促す。田中俊一委員長は「汚染源を明らかにするとともに、適切な対策をとってほしい。海洋生物など環境影響への評価も必要」などと述べた。

東電は10日、2号機タービン建屋と岸壁の間にある井戸で9日に採取した地下水から、セシウム134が1リットル当たり1万1千ベクレル(8日は9千ベクレル)、セシウム137が2万2千ベクレル(同1万8千ベクレル)検出されたと発表した。

井戸の近くには2011年4月に高濃度の放射性物質の漏洩があった作業用の穴がある。東電は当時の流出物が残っていると説明しているが、放射性物質濃度の上昇傾向が続く理由は不明。


WSJ 2013年 7月 11日 08:18 JST
原子力規制委、福島原発のセシウム汚染水の拡大を懸念
By MARI IWATA AND ALEXANDER MARTIN

【東京】日本の原子力規制当局は10日、最近福島第1原子力発電所の観測用井戸から検出された放射性セシウム濃度の高い地下水が隣接する海に流れ込んでいることが強く疑われるとの見解を示した。原発の放射能除去作業に関する懸念がさらに高まった。

東京電力が観測している地下水の安全性をチェックするための井戸では放射能レベルの上昇が確認されており、一部のレベルは許容量の約200倍にも達している。専門家は、環境への被害の広まりに対する懸念が高まっているが、原発が沿岸部にあり、周辺には人が住んでいないため、高レベルの放射能が人体に直ちに脅威を与えることはないとしている。

東電は、9日にこの観測用井戸から採取したサンプルのセシウム134とセシウム137がこれまでで最高の値を示したと明らかにした。この2つのセシウムには健康リスクがあり、体内に入ると筋肉に集まり、がんを発生させる確率が高まる。

放射能に汚染された水は、2011年3月に大地震と津波に見舞われて大きなダメージを受けた3つの原子炉の炉心部から漏出しているとみられる。加えて、雨水が原発敷地の放射能に汚染された部分に入り込んで汚染を広めている。

同社は、原発敷地外に問題が広がっている証拠はないとし、原発の外側にある16カ所の放射能測定ポイントで大幅な数値上昇は起きていないと述べた。

しかし、原発事故を受けて昨年9月に設けられた原子力規制委員会は、汚染が広まっているとの見方だ。同委員会は10日、「高濃度の汚染水は地下に染みこんで、海にも広まっている疑いが強い」と指摘した。田中俊一委員長は、東電のデータへの信頼性にも懸念を示し、「東電からのデータだけに依存していていいのかどうか検討し、海水の汚染レベルもわれわれ自身でチェックする必要がある」と述べた。

東電の広報担当者は、委員会の発表や委員長の発言について個別の論評はないとしている。

規制委員会が東電の除染作業を批判したのはこれが初めてではない。4月には、2回の停電と2つの放射能モニターの不調など、8件の具体的事例を指摘した。委員会はこの時、除染作業への監視を強めるとしていた。

新たな汚染水の漏出は、東電が福島原発事故から教訓を学び取ったことを世に示し、発電能力では世界最大規模の柏崎刈羽原発の運転再開を目指している時だけに、問題は特に大きい。

専門家は、この漏れに伴う潜在的な健康被害を測定するのは困難であり、長期的な監視が重要だと強調した。東北大学加齢医学研究所の福本学教授は「地下水は地層を通って最終的に海に至る。このプロセスは時に1000年の時間を要する。この間に監視を続けることが必要だ」と語った。京都大学放射線生物研究センターの高田穣教授は「原子炉に近づかなければ、直ちに影響を受けるということはないだろう。ただ、長期的にはがんになる率が高まる可能性がある」と指摘した。

事故が起きて以来、原発周辺の海域での漁業は禁止されている。ある研究グループが昨年秋に発表した調査結果では、一部の魚の放射線濃度は高まっていたが、日本政府のデータは近くで採取したほとんどの魚の汚染度は比較的低いとしている。

東電は9日、海から約25メートル離れた観測用井戸の汚染レベルは4日前の水準の100倍以上になったと明らかにした。同社は、なぜ急激にレベルが上昇したのか説明できないとしている。

同社によると、セシウム134のレベルはリットル当たり1万1000ベクレルだった。健康に影響のない上限は同60ベクレルとされている。セシウム134の半減期は2年で、これはその放射能が半分になるのに2年を要することを意味している。また、半減期が30年のセシウム137はリットル当たり2万2000ベクレルで、安全基準の240倍以上だった。

元原発設計者はこれらの数字は現状を完全に反映したものではないかもしれないとしている。元東芝原子炉格納容器設計者の後藤政志氏は反原発活動家らの記者会見に参加して、「汚染水が正確にどこから来ているのかを評価するための十分なデータを集めるには、2本の観測用井戸を掘るだけでは不十分だ。状況を全体として把握することが必要だ」と述べた。

東電と政府が20—30年かかるとしている事故原発廃炉作業で、汚染水は以前から大きな障害となっている。損傷した原子炉の炉心を十分に冷やすには常に水を流しておくことが必要とされる。東電はこのため貯蔵タンクに汚染水をためており、その貯蔵量は上限35万トンの31万トンに達しており、余地は急速に小さくなりつつある。

NHK
高濃度の汚染水 海に拡散か
7月10日 17時10分

東京電力福島第一原子力発電所の海に近い井戸の地下水で放射性物質が高い濃度で検出されている問題で、原子力規制委員会は「高濃度の汚染水が海へ広がっていることが強く疑われる」という見解を示し、専門家も参加したワーキンググループを立ち上げ、原因を究明し対策を検討することになりました。

福島第一原発では、ことし5月以降、海に近い観測用井戸の地下水から放射性物質が高い濃度で検出され、2号機近くで新たに掘った井戸では、採取した水に含まれる放射性のセシウム137の濃度が9日、1リットル当たり2万2000ベクレルと、4日間で100倍余りに上昇しています。

東京電力は、事故直後のおととし4月に2号機の近くで海に流れ出た高濃度の汚染水が地面にしみ込み検出された可能性があると説明していましたが、原子力規制委員会は、10日の会合で、土に吸着されやすいセシウムが3号機や4号機近くの井戸でも検出されているとして、おととしの汚染水だけを理由とするのは疑問があるとしました。

そのうえで、放射性物質が港で採取した海水からも高い値で検出されているとして、「高濃度の汚染水が地中に漏れ出したうえで、海へ広がっていることが強く疑われる」という見解を示し、近く専門家も参加したワーキンググループを立ち上げ、原因究明や対策を検討することになりました。

規制委員会の田中委員長は、記者会見で、「原因を突きとめないと適切な対策ができない。最優先で対策を立てるために、専門的な検討を重ねていく必要がある」と述べました。

東京電力は「規制委員会の指摘に対し今後、真摯に対応したい」と話しています。





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