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社説:権力とメディア 言論には言論で応じよ
毎日新聞 2013年07月11日 02時31分
TBSの報道内容が公正さを欠いているとして、自民党が党幹部に対する取材や幹部の番組出演を拒否し、翌日になって解除するという騒動があった。一応、収拾した形になったが、権力とメディアのあり方をめぐって、重大な問題をはらんでいると考える。
自民党が問題視したのは、6月26日夜に放送されたTBSの報道番組「NEWS23」。国会会期末の与野党攻防の末に、電気事業法改正案などが廃案になったことを報道したものだった。
番組の中で、改正案の成立に期待していた財団関係者が約1分間、録画で登場した。そして、「与党がもしかしたら、法案を通す気がなかったのかも。非常に残念ですね」と話した。自民党は、この発言の前後も含めて、廃案の責任が与党にあると受け取れる報道だとし、番組内容の構成が著しく公正さを欠いたものとTBSに抗議した。
これに対してTBSが28日、「発言に関して指摘を受けたことは誠に遺憾」と回答し、自民党はさらに29日、「NEWS23」番組内での謝罪と訂正を求めた。TBSが7月3日に「番組全体はバランスがとれている。謝罪、訂正はしない」と応えたため、4日、自民党が取材拒否を発表した。TBSが5日、「指摘を受けたことを重く受け止める」との文書を提出したのを受けて、自民党は事実上の謝罪をしてもらったとして、取材拒否を解除した。TBSは「放送内容について訂正・謝罪はしていない」と否定している。
番組の内容について、自民党には一方的だと見えたのかもしれない。しかし、取材や出演を拒否するというのはあまりに行き過ぎだ。
自民党は、記者会見を開くことをはじめ、自らを主張する場をいくらでもつくれるはずだ。取材拒否をすれば、その道を閉ざすことにもつながってしまう。言論には言論で応じるのが民主主義のルールだ。
選挙前に政権与党の幹部に取材や出演を拒否されたら、逆に公正な選挙報道が成り立たなくなる可能性もある。それでは国民の知る権利を阻むことになりかねない。
テレビ放送は放送法で定められた政府の許認可事業であり、権力側が一定の影響力を及ぼすことも可能だという側面がある。だからこそ、自民党は高圧的な態度ではなく、政権党としての器量を示すべきだったのではないか。
このようなことがあっても、メディアとしては萎縮することがあってはならない。日常の取材を通して、国民の知る権利に応え、真実を求めていく努力をすべきだ。その時に、公正さと正確さが求められるのは当然のことだ。
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