YAHOOニュース
【社説】逆風にさらされる安倍首相
ウォール・ストリート・ジャーナル 7月24日(木)6時57分配信
この数週間は安倍首相にとってかなり厳しいものだった。油断していると、安倍氏が日本の首相でいられるのもあとわずかということになるかもしれない。
先週、滋賀県の有権者は前民主党衆院議員の三日月大造氏を知事に選出し、安倍首相と自民党に予期せぬ非難を突き付けた。この結果は、安倍内閣が最近、同盟国への軍事的支援を可能にする平和憲法の解釈の変更を閣議決定したことへの反対票と広く受け止められている。大手メディアが実施した世論調査によると、安倍内閣の支持率は50%を下回るまでに低下し、上昇した不支持率は支持率と並んだ。
先週にはさらなるトラブルが持ち上がった。2基の原子炉(川内原発)の再稼働に関して、原子力規制委員会が新規制基準を満たしているとの審査書案をまとめたのだ。2011年3月の大地震と津波が福島第一原発の事故を引き起こして以来、日本では48基の原子炉が停止している。原発の安全性に対する国民の疑念は依然根深く、三日月氏も再稼働反対を政治綱領の中心に据えていた。安倍首相はこの件でも支持率を落とし得る。
こうした政治的難局の背景には、安倍首相が2012年の衆議院選挙で勝利したときに約束した大幅な経済改革をこれまでに実現できていないということがある。首相は、大規模な金融緩和と、少なくとも現時点では一部の輸出業者に恩恵をもたらしている円の急激な下落を促してきた。しかし、より抜本的な政治改革、経済再生へ向けた「3本目の矢」は今のところ見えていない。
安倍首相は法人税の引き下げを提案し、最終的にはより有意義な投資を促進するかもしれない企業統治改革に必要な措置も導入してきたが、しょせんはその程度である。一方で首相は、一般世帯の生活費の上昇と実質所得の低下を招くことになる3%ポイントの消費増税を4月から実施して経済に打撃を与えた。
こうしたなか、中国の強硬姿勢については心配でも、首相が抱く安全保障上の懸念に対して、有権者の関心が薄れていてもさほど不思議ではない。首相にとって好都合なのは、今のところ他に有望なリーダーがいないことだが、つい最近まで世界第2位だった経済大国としてはこのこと自体を悲しむべきだろう。
それでもいずれは対立候補が現れるはずだ。安倍首相がまごつけばまごつくほど、経済を本当に活性化する政策の推進が難しくなり、既得権益者たちの激しい抵抗に直面することだろう。環太平洋連携協定(TPP)はその最も顕著な例である。
安倍首相が有権者の信頼を回復するには、大胆な政策を断行して経済成長を活性化させるのがいちばんである。首相が提案する法人税減税をめぐる議論は、より広範な成長志向の税制改革を追求する上での好機となる。今のところ、首相は女性の社会進出を支援する措置で労働市場改革の周縁部をかじっただけだ。それよりもむしろ、雇用・解雇に関する規制を緩和し、雇用創出を促すことですべての労働者のためになる改革に取り組むべきである。
数週間の逆風で政治家が辞任に追い込まれるということはあまりないが、コースからそれたときに気付くのが賢明な政治家であろう。安倍首相の当初の爆発的な人気は、経済的な活気に満ちた日本という首相のビジョンへの熱烈な願望から生じていた。有権者と投資家は首相が改革をやり遂げるという証拠を見たがっている。
0 件のコメント:
コメントを投稿