紅葉(もみぢ 黄葉)清談 吉野弘
物の本によれば
上代にはモミチと発音し
「黄葉」の漢字をあてていたが
平安時代以後、モミヂと濁音化し
「紅葉」の漢字をあてるようにもなった - と。
なお、モミチ、モミヂの発音は
「色を揉み出すこと」から来たものか
と記した本もある。
ところで、或る日私は、秋の渓谷で
紅(黄)葉盛りの樹木たちに、ふと尋ねたのだ。
錦繍にも譬えられるこの鮮やかな色彩が
樹木ご自身には見えているのでしょうか? と。
ご懸念には及ばず ー と樹木たちから即答があり
人間に察知できない視覚を私たちは具えていて
自前で染めた装いの出来映えを楽しんでいます
信じていただけるならお信じ下ぎい ー とのこと。
詩集『夢焼け』1992
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