政府、エネ政策公表延期 米が懸念表明
2012年9月11日 朝刊
政府は十日に予定していた関係閣僚らによるエネルギー・環境会議での二〇三〇年時点の原発依存度を含めた新たなエネルギー政策の決定を先延ばしにした。野田佳彦首相は週内に決定するとしているが、めどは立っていない。背景には「原発ゼロ」に傾く日本の原発政策に米国が懸念を表明し、それを口実に抵抗する原発維持派の存在がある。「原発ゼロ」を何とか骨抜きにしたい原子力ムラの意図がうかがえる。 (金杉貴雄)
政府は三〇年時点の原発依存度を含めた新たなエネルギー政策を、遅くても十日の民主党代表選告示までに決定する方針だった。政府関係者は「代表選で(首相が)原発方針はまだ白紙です、というのは通らない」と力説していた。
十日の決定が先延ばしされた理由について、ある民主党議員は「党が二〇三〇年代の原発ゼロをまとめたことで、日本の脱原発政策に米政府が懸念を示し、国内の原発維持派が激しく巻き返しているからだ」と指摘する。
クリントン米国務長官は八日、ロシア・ウラジオストクでの首相との会談で、日本の原発政策への「関心」を表明。首相は会談後、「(米国と)緊密に意思疎通しなければならない」と記者団に語った。
日米両政府は原子力の平和利用を目的とした日米原子力協定を結び、日本に技術協力している。日本が原発ゼロを打ち出せば、米国の原発政策にも影響を与える。また、日本のメーカーと共同で原発を開発・製造している米国内のメーカーも影響を受ける。クリントン氏の「関心」は、協定を盾に内政課題に介入していると受け取られても仕方がない。
だが、日米関係を理由にして、政府が従来の政策を変えようとしないのは、米軍普天間飛行場問題と同じだ。原発維持派は、核燃サイクル事業継続を条件に大量の使用済み核燃料を一時保管している青森県の反発も、原発ゼロを打ち出させないための口実に利用している。
日米の原子力関係に詳しい吉岡斉九州大副学長は「クリントン氏のニュアンスはやや弱い懸念で、さほど重くない。むしろ日本の原発関係者が下心を持ち、過剰反応的に振る舞い原発維持の口実に使っている」と批判する。
首相は国民に向いて脱原発に踏み込むか、原発維持派の巻き返しに身を委ねるのか、問われることになる。
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