2012年6月26日火曜日

93年「政治改革」、09年「政権交代」の次は「増税反対」 ーー4文字のスローガンで国民を引きつける小沢一郎を勇気づかせた朝日、読売の世論調査(現代ビジネス)

現代ビジネス
【田崎史郎「ニュースの深層」】
93年「政治改革」、09年「政権交代」の次は「増税反対」
ーー4文字のスローガンで国民を引きつける小沢一郎を勇気づかせた朝日、読売の世論調査   2012.06.25

消費増税法案に反対し、民主党から離党、新党結成を目指す元代表・小沢一郎の言動に、メディアはおおむね批判的だ。朝日新聞の社説は「小沢氏の造反-大義なき権力闘争だ」(23日付)と断じ、読売新聞も「小沢氏造反明言 民主は厳正処分を事前に示せ」(22日付)」、毎日新聞も「民主修正合意了承 造反なら離党覚悟で」(21日付)といたって厳しい。

だが、次期衆院選で生き残るにはどうしたらいいか、という観点で小沢の行動を見たらどうだろうか。「増税反対」を掲げて戦おうとする小沢の狙いは案外当たっている可能性がある。

小沢一郎元代表を支持しますか。支持しませんか。
小沢が自分に「理(利)あり」と踏んだのは今月6日付朝日新聞朝刊に掲載された世論調査(4、5の両日調査)だった。

「民主党の小沢一郎元代表は、消費税を引き上げる前に徹底的に行政改革を進めるべきだ、などとして消費税を引き上げる法案に反対する姿勢です。こうした小沢さんの姿勢を支持しますか。支持しませんか」

「支持する 41% 支持しない 44%」

同じ調査で消費増税法案への賛否を聞くと、賛成32%、反対56%で、賛成は前月の調査に比べ7ポイント下がり、反対は5ポイント上がっている。

朝日新聞の4月世論調査(14、15日実施)では、民主党が小沢の無罪判決を受けて党員資格停止処分を解除したことについて、次の2つの質問をしている。

「民主党が処分を解除したことは適切だと思いますか。適切ではないと思いますか」

「適切だ 22% 適切ではない 65%」

「小沢さんに、これから、政治の世界で影響力を発揮してほしいと思いますか。発揮してほしくないと思いますか」

「発揮してほしい 23% 発揮してほしくない 67%」

要するに、小沢に対して否定的だった世論は小沢が消費増税反対を掲げることで「支持41%、支持しない44%」と拮抗するところまで大きく変化したのである。

読売新聞の世論調査(今月8-10日)でも同じトレンドだ。

「民主党内で小沢一郎元代表ら一部の議員が消費税率引き上げ法案に反対する考えを表明していることを、理解できますか」


「理解できる 44% 理解できない 48% 答えない 8%」

小沢が主張を貫けば一定の支持を得られると読んでも不思議ではない。

巨大な増税ブロック
そう考えていた時、消費増税関連法案で民主、自民、公明3党が修正合意したというニュースが15日、飛び込んできた。3党合意は「決められない政治」から脱却する意味で前進だ。だが、民自公3党の議席が衆院で9割を占めているほど、世論は消費増税に賛成しているわけではない。

民自公3党合意は小沢が予想していなかったことだ。だが小沢は、これによって巨大な「消費増税ブロック」が形成され、それに対して反対の旗を掲げるならば支持を得られると判断した。小沢は17日の日曜日夜、側近の元内閣府副大臣・東祥三と川島智太郎と会食しているが、ここで「衆院本会議で反対し離党、新党結成」という大方針が決まったとみられる。

消費増税賛成を掲げる各新聞の社説は小沢の過去の言動を踏まえ、小沢の反対姿勢や離党の動きに批判的だ。私も同感だ。

しかし、選挙戦術とはいえ「増税反対」を掲げる小沢の手腕には注意を払った方が良いだろう。1993年衆院選の「政治改革」、2009年衆院選の「政権交代」に続いて、4文字で有権者を引きつけるスローガンを手にしたと言えるからだ。

もちろん、小沢が巧みに世論を引きつける手法が有権者に見透かされていることも十分に考えられる。そうであるにしても、巨大な増税ブロックに対抗する新党が誕生することは有権者に考える機会を与え、選択肢を増やすという点で一定の役割はある。そもそも、民主党代表である首相・野田佳彦が「命をかける」と明言し、何度も「党議決定」を重ねてきたことに、反対したり棄権・欠席したりするならば、党にとどまる、あるいはとどまらせることは筋が通らない。(敬称略)
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