2016年4月27日水曜日

書評『「憲法改正」の真実』 樋口陽一 小林節〈著〉 ; 問題はもはや護憲か改憲か、ではない。法治か専制か、の岐路に日本はある。その危機感が本書を貫く。 (『朝日新聞』)

書評『「憲法改正」の真実』 樋口陽一 小林節〈著〉

 日本の憲法を「みっともない」と言う人々がいる。では、彼らが夢見る「美しい国」とは何か。

 戦後平和を形づくってきたものを「押しつけ憲法」とさげすむ人々がいる。では、彼らが押しつけようとする「公益」とは何か。

 問題はもはや護憲か改憲か、ではない。法治か専制か、の岐路に日本はある。その危機感が本書を貫く。

 安倍政権と自民党の病理の根幹は、戦前の一時期へのゆがんだ郷愁に溺れるあまり、日本の近代史を理解しないことにある。

 人権・平等の概念は、すでに明治初期には芽生えていた。昭和の敗戦とともに生まれたものではない。

 世界の中の日本を考え悩んだ先人たちが、人類の普遍的な到達点として築いた立憲主義を、安倍政権は破壊しようとしている。

 権力による「革命」を阻むには、市民が「保守」の共闘を組むしかない。憲法学の大家2人による憂国の講義が、読者を「心の独立戦争」へと、いざなう。

立野純ニ(本社論説主幹代理)

『朝日新聞』2016-04-24



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