東京新聞TOKYOWEBが、東電の電気料金に関する基本的な項目について、分かり易いQ&Aを掲載してくれている。
特に(下)に書かれている項目は注目すべきである。
(企業向けが6割、家庭向けが4割。但し、儲けの9割は家庭向けから)
信頼揺らぐ電気料金(上) 身を削る経営努力 足りず
2012年5月5日
東京電力は家庭向けの電気料金を七月にも10%ほど値上げすると言い出した。電気を買う先を選べない利用者に負担をかぶせることになりかねないが、身を削る経営努力がないまま、電気料金は値上げできるのか。
Q 国民の原発事故への怒りが収まらないなか、東電は家庭向けの電気料金も値上げするつもりなの。
A 枝野幸男経済産業相は連休明けにも東電などがつくった経営立て直しの「総合特別事業計画」を認める見通しだ。東電はその後、再建に向けて家庭向け電気料金を今後三年間10%程度値上げすると政府に申請するとみられる。要求通り値上げが実施されると、標準的な家庭で月六百円程度、年七千二百円の負担増になる。
Q 値上げは避けられないの?
A 安易な値上げを防ぐ仕組みとして、家庭向け電気料金は電力会社が見積もった費用が正しいかを経産省が調べ、大臣が認可する。仮に申請しても、値上げ幅を抑えたり、実施時期を先送りする可能性もある。
Q 費用の増大を利用者に押しつけられるなら電力会社は必ずもうかるよね。
A 電力会社は民間企業だけど、生活に欠かせない電気を売る。だから政府も電力会社の経営を安定させる必要があると、まず電力の供給に必要な費用などを見積もらせ、その費用を回収できるよう電気料金を決めるんだ。これを「総括原価方式」という。ガスや鉄道など公共性の高い事業は、この方式で計算しているんだ。
ただ、原発事故を受けて東電の経営状況を調べた政府の第三者委員会は、電気料金は「割高だ」と結論づけている。加えて電気料金は、輸入する液化天然ガス(LNG)や原油などの燃料価格に応じて毎月の料金が上下する「燃料費調整制度」もあって、最近は値上がり傾向だね。国際比較でも安くはない。
Q その費用はどう計算しているの。
A 実はこれまでは基本的に電力会社任せで、燃料、発電、送配電などの費用のほかに、なぜ電気料金に含まれるのか分からない費用も交じっていたんだ。このため政府の有識者会議は三月、「電気料金制度と運用に対する信頼が揺らいでいる」と指摘し、電力会社の「オール電化」の広告宣伝費や自治体への寄付金などは発電の原価と認めないと報告した。地域独占で競争がない大手電力だけに、人件費の引き下げなど十分な経営努力をすることも求めた。
Q 利用者は意見を言えないの。
A 東電が値上げ申請した場合、経産省が学識経験者らによる公聴会を開く。ただ、一般の利用者が声を大にする機会は少ない。本来なら、値上げの根拠を国民も監視できることが大事で、電力会社の言うがままになってはいけないね。
信頼揺らぐ電気料金(下) 家庭向けで稼ぐ東電
2012年5月6日
Q 東京電力の値上げが大騒ぎになったのはなぜ。
A 契約者にきちんと説明せず反発を招いたんだ。東電は四月から企業向け電気料金を平均17%値上げしようとしている。しかし、三月末で契約が切れ、四月一日から新料金を適用しようとした五万件のうち合意した顧客は68%(五月一日時点)にとどまる。家庭向け料金を値上げしようとする場合も反発は避けられないだろう。
Q 東電が主張する値上げの根拠は。
A 二〇一二年度中の原発再稼働が見込めず、火力発電に依存するため燃料費がかさむと説明している。前提としてきた〇八年度の燃料費に比べ約六千八百億円増えるとの想定だ。経費削減で足りない分を値上げで穴埋めすると言い、企業向けは一キロワット時当たりの単価(平均で約十五円)に値上げ分として一律二円五十一銭ほど上乗せしようとしている。東電が言い出した家庭向けを平均10%ほど値上げするという話も、一キロワット時当たりの単価を企業向けと同じぐらい上げるという想定に基づいている。
Q 家庭向けの値上げを止められないか。
A 東電の場合、売った電力の約六割は大口の企業向けで、「規制部門」と呼ばれる家庭向けは四割にとどまるけど、実はもうけの九割は規制部門だ。電力会社からみると、企業向けは自由競争で利幅が薄いことになる。家庭まで電気を届けるためには多くの設備が必要なので割高になるとも説明しているが、電気を買う先を選べない家庭向けで稼ごうとしている実態がある。
Q 東電へのこれまでの政府の資金援助で値上げを回避したら?
A 原子力損害賠償支援機構が交付したお金は、法律で損害の賠償に充てることになっている。逆にいえば、福島第一原発事故の損害賠償費用や廃炉、除染にかかる追加費用は料金値上げには含めていない。懸念されるのは将来、支援されたお金を返済する経営体力をつけるために東電が値上げを言い出すことだろう。
Q 家庭の電気代を安くする仕組みはできないかな。
A 電気を使う量が増える夏の昼間などピーク時の料金を高くし、代わりに夜間を安くする時間帯別の料金制度を導入する考えが関西電力などから出始めた。これまでも各電力会社には、電気温水器を備えたオール電化の家庭など向けに昼間は割高で、夜間を割安にする制度があった。対象を全家庭に広げて本格的に実施し、家庭の取り組み次第で毎月の電気料金を目立って安くする設定にすれば、ピーク時の電力不足を防ぐことにもつながると注目されるよ。
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