2011年8月20日土曜日

明治36年(1903)1月1日~31日 夏目漱石(36歳)、英国留学より帰国

明治36年(1903)
1月1日
・沖縄県宮古・八重山両郡に地租条例・国税徴収法施行。人頭税は廃止。
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1月1日
・山路愛山「独立評論」創刊。明治37年休刊。
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1月1日
徳富蘆花(36)、「国民新聞」に自身の「告別の辞」を掲載したいと兄の蘇峰の伝える。
社員の栗原が原稿を持ち帰るが、翌々日、掲載できないとの蘇峰の意思を伝えられる。
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前年12月28日、蘆花は兄の蘇峰と絶縁。
蘆花が「国民新聞」に発表する原稿が、兄によって削除されることがあったため。
しかし、少年時代より兄の蔭で目立たぬ存在であった自分を兄の支配から独立させるというのが根本理由。
兄の蘇峰は、明治30年、洋行から帰国後、松方内閣の一等参事官となり、以後は政府擁護の筆陣を張っている。
三国干渉後、富国強兵の国策に協力するようになり、諸新聞からは変節漢と非難され、「国民新聞」の発行部数は激減。
蘇峰は、貧民窟と皇太子の宮殿を較べて現在の政治を攻撃する弟を持てあましているものの、天下の注目を集める弟蘆花を手元から離したくもない。
また、時代の良心の代表者のように見られている弟蘆花との絶縁を自分の新聞で公表することは、蘇峰にとって忍び得ないことでもある。
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1月1日
・長野県諏訪郡の有力製糸業者、職工争奪防止を目的として諏訪製糸同盟会を結成。男女工の登録制度を実施。
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1月1日
・英国王エドワード7世、デリーで行われた式典でインド皇帝として即位。
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1月3日
・アイルランド土地会議、地主制と高額の小作料の問題を処理するため、地代支払いの改正を提案。
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1月5日
・東京江戸川橋郵便局配達夫200人、労働加重により賃上げを要求してストライキ。10人が日本橋暑へ引致。  
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1月6日
・アルバート・アインシュタイン、ミレーヴァ・マリッチと結婚。
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1月7日
・森鴎外の長女森茉利、誕生
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1月7日
・ゴーギャン(55)の家、サイクロンにみまわれ浸水。「アヴァン・エ・アプレ(前後録)」脱稿。
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1月10日
・栃木県臨時県会、堤防修築名目で谷中村買収費48万円余を計上。鉱毒調査委員会の結論を見てからということで未採択。
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谷中村の状況:
鉱毒のため生活困窮者が増え、明治28年で戸数385戸中約半数が公民権停止状況、選挙権を有する国税納入者は僅か1名。
前年明治35年の大洪水で破堤した北方の85間の堤防も修築されず。
また、「村債」もある
(元下都賀郡長安生順四郎が谷中に土地を購入し、有数の地主となる。この安生が村の排水事業計画を持ちかけ、中古排水機を村に購入させる。また、明治31年には堤防修築のための村債10万円を決議させるが、安生に金が入るだけで村債だけが残る)。
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1月13日
・原敬(47)、大阪北浜銀行頭取辞任し、取締役となる。
2月20日「大阪新報」社長(約2年11ヶ月)。
5月5日政友会常務委員。
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1月13日
・ポリネシアで高潮。死者数千人。
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1月20日
夏目漱石(36)、約2年間の英国留学より帰国。朝、長崎港着。
21日、熊本に入る。
24日9時30分、新橋着。(1900年9月8日出発)  
 前年12月5日、日本郵船「博多丸」ロンドンを出発。
1月24日、妻子のいる中根重一方(牛込区矢来町3番地、現・新宿区矢来町3番地)に落着く。
子規の百か日忌の1ヶ月余。
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1月20日
・ブロードウェイ、マジェスティック劇場、ミュージカル「オズの魔法使い」開幕。
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1月22日
・米とコロンビア、ヘイ・エラン条約(パナマ運河条約)調印。
米、パナマ運河地帯の租借権を得る。
コロンビア議会は条約批准拒否。
11月18日 米、パナマが運河建設条約調印。
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1月23日
・オックスフォード大学に留学中の島村抱月(31)、1ヶ月の休暇をロンドンで過ごし、この日からオックスフォードで学生生活を続ける。
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明治35年5月7日、東京専門学校海外留学生としてロンドン着。
ユニテーリアン教会の牧師サマーズの家に下宿し、語学、宗教などの理解についての指導を受けながら、毎日のように図書館に通い、日課表を作って勉強。
この牧師の息子が俳優であり、劇場に出入りするようになり、名優アーヴィングの楽屋を訪ねたこともある。
そして、10月の新学期からオックスフォード大学に入り、そこに移り住む。

この頃から、G・F・スタウト教授の心理学の講義を、大学内のエギザミネーション・スクールで聴講。スタウト教授に招かれて、哲学会の晩餐会に出席し、そこでムーア教授の「イデアの実在」という講演を聞く。その縁で、彼はムーアの講義にも出席するようになる。
11月には詩学のセリンコート教授のシェイクスピアの講義をユニヴァーシティ・カレッジで聴講。
11月末には、マンチェスター・カレッジの晩餐会で、シジウィック教授の 「シェレイとその思想」という講演を聞く。
12月12日で大学の講義は終り、1ヶ月ほどロンドンのサマーズの家に下宿。

翌明治36年1月23日から、大学で、スタウト教授の心理学のほかに、ファークハースン教授のベーコンについての講義を聴く。
3月2日には、詩学教授ブラッドレイの「オセロ」の講義を聴く。
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1月24日
・カナダの英米合同委員会でアラスカ国境協定調印。
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1月25日
・閣議、地租増徴継続案撤回。海軍拡張費として鉄道建設費を充てることを決定。
2月22日、桂太郎首相、伊藤博文政友会総裁と協議して妥協。
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1月29日
・「湖北学生界」、東京で創刊。中国留学生の雑誌発行続く。
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1月29日
・堺枯川「孟子を読む」(「万朝報」)。王道的平和論を説き、日本の武力侵略を批判。
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1月30日
歌人中島歌子(58)、没。樋口一葉の歌の師。
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1月30日
堺利彦(33)の長女、真柄誕生。妻美知子。
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1月31日
・京都錦ネル会社男工200人全員、監督排斥を要求してストライキ。
会社側は監督を解職、首謀者8人を解雇。    
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