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「東海第二」、再稼働揺れる東海村議会
日本原子力発電東海第二発電所を抱える東海村の村議会(20人)で、3月定例会に出された同発電所を巡る請願4件が継続審査のまま、扱いが宙に浮いている。再稼働反対の議員と、安全確保を条件に再稼働を容認する議員数が拮抗(きっこう)しているためだ。(小池勇喜)
「大飯原発が再稼働した。議論も5回目。今日結論を出すべきだ」。7月10日、村議会原子力問題調査特別委員会(19人)で、容認派が口火を切った。反対派は「大飯の再稼働は関係ない」「突然の採決は無理だ」と反発。採決か継続審査かの採決は、9対9で同数となり、豊島寛一委員長の裁決で継続審査となった。
村上達也村長は福島第一原発事故後、「脱原発」を鮮明にし、国に東海第二発電所の廃炉を要請した。しかし、国は方針を明らかにしておらず、日本原電も定期検査の終了時期を未定とし、橋本知事は国の考えを早急に示すよう要望している。一方、村議会では容認派と反対派が自らの意見を述べるだけで平行線が続く。
東海村は人口約3万8000人で、3分の1が原子力関連の仕事に関わるとされる。「原子力発祥の地」として共存共栄の歴史を誇りとする村民も多い。あるベテラン議員は「雇用や財政で恩恵を受け、原子力は生活の一部のようなもの。議員も簡単に結論を出せないはずだ」と説明する。
特に容認派は複雑だ。ある議員は「原発はないにこしたことはないが、廃炉が村民生活に与える影響を検証すべき。即廃炉は反対だ」と話す。別の議員も「もろ手を挙げて再稼働賛成の立場ではない」とし、「再稼働すべきと大声で言う村民は少なくなった」と村内での脱原発論の広がりを肌で感じている。
同委員会でも世論を背景に、「危険性を考えれば廃炉」などと反対派が積極的に発言している。だが、数の上ではやや劣勢で、反対派の一人は「結論は焦らず、世論のさらなる後押しを期待したい」と語る。鍵を握るとされる公明党(2人)の岡崎悟議員は「将来は脱原発依存だが、現段階ではどちらにも賛成できない。採決ギリギリまで考える」と慎重だ。
一部では、請願は「4件とも不採択になるのでは」との声も聞かれる。進展のない議論に、村民の間には「対話になっていない」などの不満もくすぶる。国の方針も重要だが、村民の最も近くにいる議員たちが、それぞれの立場から建設的な議論を交わすことが求められている。
<村議会に提出されている請願書>
〈1〉「東海第2原子力発電所の再稼働を認めず、廃炉を求める意見書提出を求める請願書」
〈2〉「日本原子力発電東海第2原発の再稼働中止を求める意見書採択についての請願書」
〈3〉「『東海第2原発の廃炉を求める意見書』採択を求める請願書」
〈4〉「東海第二発電所並びに原子力施設の安全性向上に関する意見書提出を求める請願書」(再稼働が前提)
(2012年8月4日 読売新聞)
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