2026年9月6日日曜日

フランシス・フクヤマはジェイコビンに対し、数十年間にわたる国家への疑念が、左派と右派の両方から生じ、それがアメリカの現在の危機を生み出す一因となったと語っています。 / フランシス・フクヤマへのインタビュー、とりあえず読んだ。順番にまとめてみる。長文予定。 知ってたはずのことだし、知ってもいることだらけなのだが、構造的に理解する、そしてまとめるということの凄みを見た気がする。さらに日本も構造はおんなじだなこれ。(山崎憲)


〈山崎憲さんツイート全文〉

 フランシス・フクヤマへのインタビュー、とりあえず読んだ。順番にまとめてみる。長文予定。

知ってたはずのことだし、知ってもいることだらけなのだが、構造的に理解する、そしてまとめるということの凄みを見た気がする。さらに日本も構造はおんなじだなこれ。


1.トランプ周辺は「反知性主義」ではない

 既存の専門家を排除し、自分たちの知識人・法律家・官僚・経営者へ置き換える対抗エリート運動。

 Laura Fieldの分析枠組みを引用、MAGA New Right潮流

- クレアモント系・西海岸シュトラウス派

- カトリック系ポストリベラル

- ナショナル・コンサーバティブ

- ハードライト/オンライン右派

大学、雑誌、研究所、フェローシップ、法律家ネットワーク、政府人事。つまり「知性に反対」なのではなく、自由主義的な専門知とエリートに対抗する別の知的階級。


2.自身の定義

制度原理:古典的自由主義

文化問題:保守寄り

経済制度:市場+規制+再分配 社会民主主義者

政治目的:自由民主主義の安定


3.核心は「民意」ではなく、民主主義の制御装置

民主主義は、選挙をすれば自動的に社会の要求を集約できる制度ではない。社会の側に、人々の利害をまとめ、政治家と企業を拘束する組織が必要になる。

かつて労組は三つの制御機能を持っていた。

・バラバラな労働者の要求をまとめる

・資本を交渉の席につかせる

・民主党に候補者・票・資金・政策要求を供給する

 つまり労組は、単なる賃上げ団体ではなく、労働者、資本、政党、国家のあいだを接続する統治機構だった。


4.労組の弱体化と共和党

共和党で起きたことPaul Heidemanの『Rogue Elephant』


強い労働運動

 ↓

企業側も共同で対抗する必要がある

 ↓

経営者団体が利害を調整する

 ↓

経営者団体が共和党を統制する


強い労組がある時代には、個々の企業が好き勝手に政治要求を出すだけでは対抗できない。資本側も業界や地域を越えて要求を調整し、共和党を一定の方向へ統御する必要があった。労組を弱体化させることに成功すると、


労組の敗北

 ↓

共通の敵が消える

 ↓

企業連合が解体・分散する

 ↓

共和党を統制する主体が消える

 ↓

資産家、宗教右派、民族主義者、テック右派などが個別に党を占拠できる。


5.民主党で起きたこと

 かつての労組は、人種、宗教、地域、職業が違う労働者を、完全ではないにせよ「賃金労働者」という大きな利害へまとめていた。党は労組を相手にすれば、相当数の有権者と交渉できた。


労組が弱くなると、その代わりに現れるのは、

・環境団体

・人種・民族別団体

・移民団体

・障害者団体

・専門職NGO

・富裕な個人献金者

・財団

・オンライン活動家

など、個別争点ごとの組織。

 これらの要求が間違っているという話ではく、要求を横断的に集約する上位の組織がなく、意思決定機関も喪失した。


強い労組が存在した民主党

多数の要求

 ↓

労組・地域組織が集約

 ↓

党指導部と交渉

 ↓

優先順位を持つ政策


労組衰退後の民主党

多数の要求

 ↓

争点別NGOと献金者が個別に接続

 ↓

各集団が拒否権を持つ

 ↓

党指導部は全部を承認する

 ↓

共通の優先順位を作れない


6.「経済かアイデンティティか」は、組織問題

 サンダース型の経済的平等と、アイデンティティ政治を対立させ、経済的平等への回帰を評価。

 アイデンティティ政治は、集団ごとに固有の被害と承認を要求。それに対して経済的再分配は、賃金、医療、住宅、保育、交通、社会保障のように、異なる集団を同じ制度の受益者としてまとめやすい。


個別集団の要求

   ↓

共通の経済制度へ集約

   ↓

多数派連合を形成

   ↓

政党を制御できる


7.西海岸シュトラウス派「非常事態」の論理

Michael Antonの「Flight 93 Election」

既存制度はすでに左派に占拠されている

 ↓

通常の選挙・規範・手続きでは取り戻せない

 ↓

現在は非常事態である

 ↓

トランプの欠点や規範違反は二次的

 ↓

制度を救うため、制度の通常ルールを破ってよい


・制度は中立ではない

・官僚は民主的選択を妨害している

・法の通常手続きは敵に利用されている

・大統領こそが人民を直接代表する

したがって行政全体を大統領に服従させるべきだ。


8.ヴォートとProject 2025

Russell VoughtがProject 2025で書いていること。

その主張は、大統領だけが全国民から民主的委任を受けているのだから、独立した専門機関や職業官僚が大統領の意思を制限するのは非民主的だ、というもの。多元的な国家を単一の指令系統へ変える国家改造論。


9.ティールへの嫌悪

フクヤマにとって政治理論とは、異なる価値観を持つ多数の人間が、共通の制度の下でどう共存するかを考えるもの。

一方、ティール周辺の思考は、世界は終末的危機にある

、大衆民主主義と官僚制は停滞を生む、卓越した少数者が決断しなければならない、通常政治を超えた敵との闘争がある。


10.フクヤマが守ろうとしているモデル

選挙で選ばれた政治家

    +

専門性を持つ中立的官僚

    +

法と手続き

    +

労組・企業・市民組織


11.フクヤマの現状認識

共和党

資本側の統一と党統制が崩れる

 → トランプと対抗エリートが占拠


民主党

労働者の要求を集約する軸が崩れる

 → 献金者・NGO・争点集団の拒否権政治


12.マムダニ評価

家賃・交通・保育を「生活費」という共通の経済的利益に集約し、異なる支持層を一つの多数派へまとめた。さらに、エズラ・クラインとデレク・トンプソンの『アバンダンス――「豊かな時代」を呼びさませ』が提唱する、住宅や公共サービスを実際に十分供給できる政府という構想を取り入れ、公約を具体的成果へ変えようとしているとみる。



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