(8月8日 追加)
東京新聞
東電テレビ会議映像公開 原子炉損傷 直後に認識
2012年8月7日 朝刊
東京電力が福島第一原発事故の発生からわずか一日半後の昨年三月十三日未明には、核燃料が溶融しているだけではなく、原子炉が損傷した可能性が高いと認識していたことが分かった。これでは冷却水が漏れて核燃料が水に浸らないため、外側の格納容器を水で満たし原子炉ごと水没させる「水棺」で対応することも、この時点で検討していた。東電が六日に公開した、本店と福島第一などをつなぐテレビ会議のやりとりから判明した。
映像は昨年三月十三日午前一時ごろのもの。当時は消防車を使って1号機の原子炉へ注水を続けていたが、核燃料は十分に水に浸っていなかった。
そうした状況を踏まえ、福島第一の社員が、原子炉から格納容器に「水が流れるラインが形成されている可能性が高い」と、原子炉に穴が開き、核燃料が水に浸っていない原因となっていると指摘。この危険な状況を改善するため、水棺を考えていると発言した。
ただし水棺にすると、格納容器内にたまった水の温度が核燃料の熱で上がり、最終的には熱の逃がし場がなくなる可能性があり、本店に意見を求めた。
本店社員は「(水棺は)ほとんど想像したことがない」と返答。水位が上がらない原因について、原子炉や原子炉につながる配管に穴が開いた可能性とともに、水位計が故障した可能性を挙げた。
水棺はその後、東電や政府内で本格的に検討された。効果への疑問や、水を張った格納容器の耐震性への懸念もあったが実施。だが、今度は格納容器の下部から大量の高濃度汚染水が漏れていると分かり、断念。建屋地下にたまった汚染水を浄化して原子炉の冷却に再利用する循環注水冷却に切り替えた。
テレビ会議映像をめぐっては、東電は社員のプライバシーを理由に公開を拒み続けてきた。報道機関が再三にわたり公開を求め、今年六月には株主代表訴訟で株主側が映像の証拠保全を申し立てた。枝野幸男経済産業相の行政指導もあり、一部の公開に至った。動画データの一部は東電が報道機関に提供した。
NHKニュース
対策本部 爆発の夜ほとんど幹部不在に
8月7日 4時37分
原発事故から1年5か月がたって、6日、ようやく報道関係者に公開された東京電力のテレビ会議の映像で、1号機が爆発した日の深夜、緊急事態が続いているのに東京の本店の対策本部から、一時、ほとんどの幹部がいなくなっていたことが分かりました。
東京電力は「技術者が残り対応していた」としていますが、映像が公開されて初めて明らかになった事実で、当時の対応が適切だったか検証が求められます。
事故直後の現場と東京電力の本店とのやり取りを記録したテレビ会議の映像は、社会的な要請や枝野経済産業大臣からの事実上の行政指導を受けて、6日から報道関係者に対し東京電力が公開しました。
公開されたのは、事故発生当日の去年3月11日から5日分、合わせて150時間分の映像で、原則、閲覧という形で行われ、このうちの一部、1時間半分が報道用として提供されました。
提供以外の閲覧用の映像は、録画や録音が認められなかったため入手できていませんが、これまでに閲覧できた中でも、事故対応を検証するうえで重要な場面が記録されていました。
具体的には、1号機が水素爆発したあとの去年3月12日の深夜、現場を支援する役割を担う本店の対策本部の幹部が「解散」と発言し、その後、円卓に座っていた清水元社長以下、ほとんどの幹部が席を立ち、いなくなっていたことが分かりました。
東京電力は「技術者が残り対応していた」としていますが、緊急事態が続いているのに、一時的とはいえ、ほとんどの幹部が対策本部から姿を消していたことになります。
これらの場面は、東京電力の提供映像にはなく、閲覧できる映像の中で初めて明らかになった事実で、当時の対応が適切だったか検証する必要があるとともに、事故対応を検証するうえでも全面的な映像の公開が求められます。
朝日新聞
東電、水素爆発確認せず広報 「保安院が言ってるから」
東京電力福島第一原発3号機の爆発をめぐり、東電が確証のないまま政府の発表を追う形で「水素爆発」と広報していたことが、報道機関向けに限定開示したテレビ会議の加工映像からわかった。事故直後の混乱の中で、国民への説明責任を軽視していた東電の姿勢を示すものだ。
昨年3月12日に1号機が水素爆発したのに続き、14日午前11時1分に3号機で爆発が発生した。問題の場面はその後、午前11時半ごろの本店の映像だ。記者発表の文面を検討する中、本店で清水正孝社長の隣に座る高橋明男フェローの次の発言が映像に残っている。
「要はさ、1号機を3号機に変えただけだってんでしょ。それで水素爆発かどうかわからないけれど、国が保安院が水素爆発と言っているから、もういいんじゃないの、この水素爆発で」
時事ドットコム
海水注入「もったいない」=東電本社、廃炉恐れ-吉田所長は反論・福島原発事故
東京電力福島第1原発事故直後の昨年3月13日、危機的状況にあった2号機原子炉を冷却するため海水注入を準備していた同原発の吉田昌郎所長(当時)に対し、本社側が「材料が腐っちゃったりしてもったいない」などと指摘していたことが8日、東電が公開したテレビ会議の映像で分かった。
圧力容器などが海水の塩分で腐食し、廃炉になるのを恐れたとみられる。東電は6月に公表した社内調査の最終報告で「本店対策本部を含め、事故収束に向けた対応をしていた」として、海水注入をためらったとの見方を否定していた。
映像によると、13日夜、東電本社で復旧計画の策定を担当する復旧班の人物から「海水からいきなりやるふうに聞こえていて」と疑問の声が上がった。肩書や名前は明らかにされていないが、この人物は「こちらの勝手な考えだと、いきなり海水っていうのはそのまま材料が腐っちゃったりしてもったいないので、なるべく粘って真水を待つという選択肢もあると理解していいでしょうか」と尋ねた。
これに対し、吉田所長は「今から真水というのはないんです。時間が遅れます、また」と強調。「真水でやっといた方が、塩にやられないから後で使えるということでしょ」と問い返した。
さらに吉田所長は「今みたいに(冷却水の)供給量が圧倒的に多量必要な時に、真水にこだわっているとえらい大変なんですよ。海水でいかざるを得ないと考えている」と断言した。
復旧班の人物は「現段階のことは了解しました」と了承したが、この後も復旧班から「いかにももったいないなという感じがするんですけどもね」と苦笑交じりの声が漏れた。(2012/08/08-17:40)
■公開映像の解説
NHKニュース
ニュース特設「東電会議映像・何が分かったのか」
■批判
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