2024年2月5日月曜日

イスラエル軍のガザ攻撃で「ジェノサイド(大量虐殺)」に加えて「ドミサイド(大規模住宅破壊)」が問題になっています。1月31日のイスラエル紙ハアレツが調査報道で、イスラエル軍による意図的な住宅焼き払いが一般的な現場対応になっている実態を明らかにしました。、、、、、(川上泰徳 /中東ジャーナリスト)   


【ツイート全文】 

スラエル軍のガザ攻撃で「ジェノサイド(大量虐殺)」に加えて「ドミサイド(大規模住宅破壊)」が問題になっています。1月31日のイスラエル紙ハアレツが調査報道で、イスラエル軍による意図的な住宅焼き払いが一般的な現場対応になっている実態を明らかにしました。戦争では戦闘の死者よりも、戦後に公共・医療インフラが破壊され、病気の蔓延などによる死者数がはるかに多いのが実態。イスラエル軍のドミサイドは、戦後の大量死につながる重大な問題なので記事全文を共有します。

■イスラエル紙ハアレツ特報<2024年1月31日>■

イスラエル軍はガザの家屋を占領後、焼き払っているーーハアレツが入手した情報によると、イスラエル軍の司令官たちは兵士に対し、(裁判所の)法的承認を受けることなく無人となったガザの家屋を焼き払うよう命令を出している。すでに数百件が修復できない損傷を受けている。 

  ハアレツが入手した情報によると、イスラエル兵士らは最近の数週間、指揮官からの直接の命令に従い、(家屋破壊を認める裁判所からの)必要な法的許可を受けることなくガザ地区の住宅に火をつけた。 

   兵士らは、このような方法で過去一か月で数百の建物を焼き払った。建物は中に家財道具がある状態で火を付けられ、燃えるままに放置された。 

 イスラエル軍当局は取材に対して、建物の破壊は承認された手段でのみ行われ、様々に異なる方法で行われたとしてもどのような行動も(今後)調査するとした。

(家屋を焼き払う)新しい軍の行動について尋ねると、現場の軍司令官はハアレツに対し、情報に基づいて焼き払う建造物が選ばれているのだと語った。インタビューが行われた(ガザの)場所からそれほど遠くない場所にあった焼き払われた建物について質問すると、司令官は「家主について何らかの情報があったに違いない。あるいはそこで何かが見つかったに違いない。なぜその家が焼き払われたか正確には分からない」と答えた。

  ガザの戦闘の前線に立つ3人の将校はハアレツに対し、家を焼き払うことが一般的な現場対応になっていることを認めた。ある大隊の指揮官は先週、ガザ地区での作戦を終えようとしていた部隊に「家から物を片付け、焼き払う準備をしろ」と命じたという。 

 ハーレツの調査報道で明らかになったところによると、もともとは特定の場合のみ(焼却の)対象となっていたが、戦争が進むにつれてこの行動ははますます一般的になったという。 

  最近、ガザに送られたイスラエル兵はSNSで、時には仲間の兵士の死への復讐として、あるいは10月7日の越境攻撃そのものへの復讐として、ガザの家屋の焼き討ちに参加していると明らかにしている。 

  「毎日、異なる部隊が地域の家を破壊するために出かけていく」と兵士の一人は書いた。 「家を破壊し、占領する。あとは徹底的にソファの中、クローゼットの後ろなどを探す。武器、情報、トンネルの入り口、ロケットランチャーなどを見つけ、最後は、家財道具はすべてそのままで家を焼き払う」 

 別の事例では、建物を出ようとしていた兵士たちが、彼らの後から来る軍隊にメモを書き残した。 「あなたたちのお楽しみに、家を燃やさないでおきます。出るときにはするべきことをしてください」というメモが、オンラインに投稿された兵士の1人の写真に写っていた。 

 建物を焼き払えば、元の住民が戻っても住むことができないことを意味する。ガザでの戦争が始まって以来、イスラエル軍は10月7日の攻撃に参加したハマスのメンバーや住民の住宅を破壊した。この措置は、ハマスが使用していた建物やトンネルの入り口の近くに建つ家にも適用された。 

  先月までは、陸軍工兵部隊は地雷や爆発物を主に使用したり、D9軍事ブルドーザーなどの重機を使って建物を破壊していた。しかし、単に懲罰のために非戦闘員の民間人の家を焼き払うことは、国際法で禁止されている。 

  米国は最近イスラエルに対し、ガザ地区の学校や診療所などの公共建物の破壊をやめるようイスラエル軍に要求し、これを継続すれば戦後、元の家に戻ろうとするガザの人々の生活に害を及ぼすと主張した。 

 イスラエル軍と政権幹部は米国の要求を受け入れ、建物の内側から(の攻撃で)軍が危険にさらされた場合を除き、家屋破壊を大幅に減った。さらに、ガザで活動する軍隊は、爆発物や重機を使った家屋の破壊は、兵士を危険にさらす可能性があり、時間と資源を浪費することにも気づいたという。 

  ガザ戦争は、世界でこの数年起こった血なまぐさい紛争と比較しても、計り知れない民間の建物の破壊を引き起こしている。

  BBC が公開した衛星画像の分析によると、戦争開始以来、ガザ地区では14万4,000棟から17万棟の住宅ビルが破壊された。先月公開され、ハーレツで引用されたワシントン・ポストの調査では、(ガザ北部)ベイト・ハヌーン、ジャバリヤ、ガザ市アル・カラマ地区などガザ市全域にわたって(街区が)消え去った場所があることが判明した。 

  報告書はまた、12月下旬の時点で350の学校と約170のモスクと教会が損傷または破壊されたとも指摘した。 

  大規模な破壊により、イスラエルは「ドミサイド(大規模住宅破壊)」 の罪で起訴できるかどうかが学界で議論が巻き起こっている。これは、ガザの住宅と基本的なインフラを意図的かつ組織的に破壊し、環境を居住不能にした行為に対するものだ。

 イスラエルでは、このような議論が国際社会で活発となり、(イスラエルへの)懲罰的措置が講じられるのではないかという懸念が出ている。イスラエル軍は、この新たな軍事行動が、米国の要求と、すでに(ジェノサイドで)イスラエルの行為に対する暫定判決を言い渡している国際司法裁判所(ICJ)で(新たな)訴訟が起きることで、イスラエルの法制度に難題を突き付ける可能性があることを理解している。 

  ICJでイスラエルに対して起こされたジェノサイド(大量虐殺)容疑と同じように、家屋を焼き払うこともイスラエルの政治家の発言と結びついている。今月初めに ICJ 審理前に、リクードの国会議員のニッシム・ヴァトゥーリ氏は「ガザを燃やせ」という呼びかけを繰り返した。国会副議長の1人であるヴァトゥーリ氏はラジオのインタビューで、「兵士が負傷するより、建物を焼き払ったり、倒したりしたほうが良い」と語った。彼は続けて、「今、そこ(住民がいなくなった地域)にまともな人間がいるはずがない」と語った。 

  イスラエル軍の広報担当は「建物の爆発と破壊は承認された適切な手段によって行われている。戦争中にさまざまな方法で行われた(軍の)行動は将来調査されるだろう」と述べた。


(おわり)

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