民主党政権の前の時代、「格差社会」を巡る議論がたくさんあったように思う。
民主党への政権移行は、そんな「格差社会」是正への微かな望みもあったように「記憶」している。
しかし、日本の社会の「貧困化」は着実に進行しているようだ。
「朝日新聞」7月13日付け記事より(全文、読み易くするために段落を施します。)
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(見出し)
貧困率 最悪16%
09年、前回比0.3ポイント悪化
(記事)
所得が少なく生活が苦しい人の割合を示す「相対的貧困率」が、2010年調査(09年時点)は16.0%で、07年調査(06年時点)より0.3ポイント悪化した。
18歳未満に限ると15.7%で、ともに、厚生労働省が貧困率を算出している1985年以降、最悪の水準になった。
同省が12日公表した国民生活基礎調査でわかった。
相対的貧困率は、すべての国民を所得順に並べて、真ん中の人の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合を指す。
経済協力開発機構(OECD)の08年報告書では、加盟30カ国の平均は10.6%。
1世帯あたりの平均所得は549万6千円で前年より0.4%増えたが、厚労省は「非正規雇用の広がりや高齢者世帯の増加によって、低所得者層は増えている」とみている。
また、10年の65歳以上の高齢者世帯は1020万7千世帯で、初めて1千万世帯を突破。
このうち一人暮らしは501万8千世帯にのぼった。
介護の担い手の高齢化も目立つ。
自宅で家族の介護をしている人のうち44.7%は65歳以上で、80歳以上も12.3%にのぼった。
介護をする側、される側がともに60歳以上の割合は62.7%、ともに75歳以上は25.5%。高齢化の進展で「老老介護」が広がっている実態が浮き彫りになった。
介護する人の7割は女性で、介護される人の配偶者や子が大半を占めた。
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ちょっとわかりにくい箇所もあったので、WEBのニュースで補足すると・・・。
(1)「毎日」は、貧困線の金額や、一人親世帯の状況などについて、もう少し分かり易く教えてくれた。
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子供(17歳以下)は1・5ポイント増の15・7%で、低所得の家庭で育てられている子供が増えていることを裏付けた。
また、高齢者世帯数の推移を見ると、65歳以上のみの世帯が1018万8000世帯(全世帯の20・9%)に達し、初めて1000万世帯を突破した。【鈴木直】
今回厚労省は、同調査を始めた85年までさかのぼって貧困率を算出した。
同年の12・0%に比べると、09年はこの24年間で4ポイント悪化し、同居する大人の所得で計算する子供の貧困率も4・8ポイント増えた。
同省は非正規雇用労働者や年金暮らしの高齢者らの増加が要因とみている。
一方、「子供がいる現役の世帯」でみると、母子家庭など「一人親世帯」の貧困率は50・8%。
3年前より3・5ポイント減っており、97年に最悪の63・1%に達した後は減少傾向にある。
母子世帯の年間所得は200万円台で大きく変わっていないのに対し、非正規雇用増加などで全体の平均所得が下がっているため、母子世帯の貧困率は減っている。
経済協力開発機構(OECD)の00年代半ばの調査では、日本の貧困率(03年、14・9%)は加盟30カ国中4番目に悪く、一人親世帯は最も悪かった。
OECD平均は10・6%となっている。
◇相対的貧困率
全国民の年間の可処分所得を少ない方から並べ、中央の金額(09年は224万円)の半分の水準(貧困線、09年は112万円)に満たない人の割合。
主に国民の間の経済格差を示すが、資産は含まない。これとは別に、所得が定められた最低水準額に満たない人の割合を示す「絶対的貧困率」もある。
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(2)「読売」「産経」はサラッとこんな感じ。
(読売)
今回の調査で「貧困」とされたのは、09年の年間所得が112万円未満の人たち。国民の6~7人に1人が貧困状態であることを示している。
(産経)
相対的貧困率は、年間所得が全人口の可処分所得の中央値(09年は1人当たり224万円)の半分に満たない人が全体に占める割合。
(3)NHKは、意識調査にも触れています。
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また、子どもがいる世帯の貧困率は14.6%で3年前より2.4ポイント悪化し、特に1人親の世帯では貧困率が50.8%と半数以上に上っています。
さらに厚生労働省が、去年、全国2万6000世帯を対象に意識調査を行った結果、「生活が苦しい」と答えた世帯の割合は59.4%に上り、前の年より1.3ポイント増加しました。
厚生労働省は「景気の低迷に加えて年金だけで暮らす高齢者や非正規労働者が増えているため、貧困の状態にある人の割合が増加している」と分析しています。
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(4)地方新聞の社説は基本的なところをしっかり押さえている。
まず、「京都新聞」
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タイトル
「貧困率最悪 格差の固定化、打開策を」
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なかでも、70年代後半生まれの男性を中心に非正規雇用が多い。
90年代から本格化した派遣社員拡大がもたらしたひずみが集中している。
この世代の非正規雇用について11年版労働経済白書は「技能・賃金水準も低いままで、同世代の中でも格差が拡大している」と指摘している。
企業が90年代以降、人件費を削減するために非正規雇用を積極的に活用した背景に、政府による労働者派遣法の規制緩和などがあった。
その経緯を踏まえれば、非正規雇用者への職業訓練の拡充など、正規雇用への道を開く方策を政府の責任で強化するべきだ。
18歳未満の「子どもの貧困率」も、前回調査の06年より1・5ポイント上昇し、過去最悪水準の15・7%になった。
特に母子家庭など1人親世帯の貧困率は50・8%と2人親世帯の4倍にもなっている。
1人親世帯と非正規雇用の問題が、重なり合って貧困に陥っているケースも少なくない。
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次に「高知新聞」
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タイトル
【貧困率最悪】希望を取り戻せるよう
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長引くデフレの影響で、所得の目減りが続いている。
09年の世帯当たりの年間平均所得は549万6千円で、ピークだった94年(664万2千円)より2割近くも減っている。
日本が先進国の中でも貧困率が高い国であることは、経済協力開発機構(OECD)の調査で以前から知られていた。
だが、国が数値を公表したのは政権交代後の09年になってからだ。
憲法が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」のための議論も始まったが、遅過ぎた感は否めない。
バブル崩壊後の景気低迷で非正規雇用は拡大、働いているのに貧困層に属する数百万人規模の「ワーキングプア」を生み出した。
「労働が報われない社会」という閉塞(へいそく)感が日本を覆っている。
OECD加盟国の中でひとり親家庭の子どもの貧困率が際立って高いのも日本の特徴だ。
格差の固定化が指摘される中で、将来ある世代が夢や希望を持ちにくくなっている現状がある。
意欲や能力がありながら、進学を断念せざるを得ない子どもが多いことは日本にとっても計り知れない損失だ。
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日本のGDPや企業業績は、リーマン後などの落ち込みはあるにしても、中長期的には上向いているのに、日本の「貧困率」は着実に上昇しているようだ。
そして、「貧困」は、「貧困」を再生産してゆく。
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