2013年3月3日日曜日

昭和17年(1942)12月1日~8日 参謀本部田中新一作戦部長、佐藤賢了陸軍省事務局長を殴打し、翌日には東條英機を「バカヤロウ」と罵倒

北の丸公園 2013-02-28
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昭和17年(1942)
12月
・朝鮮、全土121ヶ所に青年特別錬成所開設。
5月には徴兵制が閣議決定されており、徴兵令施行も時間の問題。
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・イギリス軍のビルマ反攻の動き活発化。
この月、第5飛行師団の百式司令部偵察機は、インドのチタゴン港に英軍輸送船団60隻集結を偵察。続いて、第14英印師団(英国人将校指揮のインド兵部隊)がアキャブ北方に迫る。
この月、歩兵第58連隊(新潟高田)4千、ビルマに転進。牛を集めるように命じられる。のちコヒマの戦闘に参加、4千人中3千人以上が戦死。
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・英語の雑誌名は改題と決まる
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・大東亜映画配給審議会が設置される。
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・映配、サイゴン支社・フィリピン支社を設置。
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・南方向映画選定委員会が結成される。
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・火野葦平「コレヒドル島」(「改造」)、田畑修一郎「郷愁」(「大陸新報」)、中島敦「名人伝」、片岡鉄平「運河」、伊藤整『得能物語』、小宮豊隆『漱石の芸術』、『本居宣長全集』刊行開始、太宰治(33)「禁酒の心」(「現代文学」)、小林秀雄(40)「西行(2)」(『文学界』)。
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・ポーランド、ポーランド労働者党党首にパヴェウ・フィンデル就任、書記局員ウワディスワフ・ゴムウカに亡命政府代表との交渉権限与える
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12月1日
・第15軍新防御態勢、第56師団(松山祐三中将)雲南方面、第18師団(牟田口廉也中将)フーコン方面、第33師団(柳田元三中将)アラカン方面、第55師団(古閑健中将)南西沿岸方面
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・独立混成第21旅団の主力、東部ニューギニアのバサブアに上陸。
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12月1日
・イタリア、4個護送船団のうち3個を呼び戻す。この月を通じて50%の補給喪失
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12月2日
・アメリカ、シカゴ大学、原子爆弾製造、フェルミ教授(41)らが核分裂連鎖反応に成功
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12月2日
・「ベヴァリッジ報告」、福祉国家イギリスを提案
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12月3日
・ガダルカナル、ネズミ輸送作戦2回目。
駆逐艦1隻で物資ドラム缶1500個をタサファロング沖に投下。陸上への回収は210個、大半は天明後敵機の銃爆撃により沈む。

この日以来ガ島実情視察に来ている方面軍参謀副長佐藤傑少将が方面軍司令部に打った電文。
第二師団ノ大部ハ戦意喪失シ其一部分カ辛シテ現線ヲ保持シアル現況ニシテ・・・」
「第三十八師団モ現在ノ如キ補給ノ状態ヲ以テセハ其大部ノ防禦戦闘能力ハ概ネ本年末迄ヲ以テ限度卜判断セラル」
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12月3日
・第1回大東亜戦争美術展。
宮本三郎「山下、パーシバル両司令官会見記」、藤田嗣治「二月十一日(ブキテマ高地)」
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12月4日
・作家・中島敦没
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12月5日
・朝鮮における義務教育実施要綱を発表。実施は昭和21年と決定。
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12月5日
・ガダルカナル、第2師団戦闘司令所、ポハ川右岸に、翌6日には勇川右岸に推進。師団正面の敵は、師団第1線に絶えず砲撃を浴びせ、100名内外の部隊が出撃し至近距離で手榴弾戦を交える。
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12月5日
・インドシナ駐屯軍司令部編成、サイゴン
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12月5日
・閣議、陸軍に対し第2次分の9万5千トン増徴は認めるが、窮屈な鋼材生産予想から、18年1~3月の損耗補填量は要求16万5千トンから8万5千トンに削減し、更に4月以降18万トンを解傭することを決定。
参謀本部田中新一作戦部長は、佐藤賢了陸軍省事務局長からその報告を聞き激怒(明年4月以降18万トンを解傭を陸軍に求めるのは統帥権干犯)、佐藤局長を殴打。
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12月5日
・アメリカ、マンザナー騒擾事件。忠誠派と非忠誠派の闘争、警官隊発砲、死者2、重傷10
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12月6日
・ガダルカナル、工兵第38連隊から第2中隊中沢少尉と第3中隊寺沢少尉が、夫々部下4名を率い挺身斥候となり、敵の後方施設の破壊撹乱の為アウステン山を出発。
寺沢隊は14日、中沢隊は15日に無事帰還。中沢隊は飛行機2・給油車2・照空灯1を爆破、寺沢隊は砲兵陣地1ヶ所・幕舎2爆破、という。
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12月6日
・田辺参謀次長と鈴木企画院総裁の間で、損耗補填8万5千トンは、損耗激しい場合は改めて協議する事で、統帥部が同意。
しかし、東條はいかなる場合も8.5万トンを超えてはならぬと厳命。
参謀本部田中新一作戦部長は参謀次長を押し切り、夜半、東条首相兼陸相と談判。
田中は「バカヤロウ」と暴言。
7日、田中新一作戦部長罷免され妥協成立。後任綾部橘樹少将。

「第一部長の決意牢固たり、 
一、統帥の尊厳確保。 
一、「ソロモン」方面第一線将兵に対する中央統帥部の義務遂行。 
一、参謀総長、次長及び部下一同に一切の迷惑をかけず、自己一身に引き受けてやること。・・・午後十一時半より三十分。大臣、次官、軍務局長、人事局長、次長を前に第一部長の大臣に対する諌言、再考要望は至誠至情、肺腑をつき余すところなし。言たまたま荒々しくなるところありとするも、蓋し重盛の父清盛に対する忠言に等しく、一座粛然として声なく、室外に待機するもの赤松、二宮秘書官、真田、西浦課長、種村のみ」(「機密戦争日誌」12月6日)
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12月7日
・早朝、東條は杉山参謀総長に田中新一作戦部長更迭を要求。
田中は重謹慎15日の上、南方軍総司令部付きに転出。
後任は綾部橘樹少将。
続いて14日、作戦課長服部大佐が転出し、後任に真田穣一郎大佐が発令。
東條は、田中追放の代償のように、1~3月の船舶損耗著しい場合は大本営政府間で協議する事を承諾。
陸軍統帥部の強硬派田中作戦部長の転出は、ガダルカナル作戦打切りの転機となる。
言い換えれば、硬派作戦部長が存在できるほどの諸条件がなくなる、或いは諸条件が硬派作戦部長の転出を求めていると云える。
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12月7日
・ガダルカナル、ネズミ輸送3回目。
駆逐艦11隻で実施するも敵機の襲撃激しく、「野分」航行不能、「嵐」被爆、「野分」は「長波」が曳航、「嵐」と「有明」が護衛して帰途につく。残り7隻は前進するが、ガ島付近で敵魚雷艇8隻の攻撃を受け、目的を果さず反転帰投。翌8日、現地海軍は駆逐艦輸送中止を陸軍側に通告するが、現地陸海軍の協議で、後1回(11日)だけ実施するこになる。
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12月7日
・イギリス、対ハンガリー宣戦布告。
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12月7日
・~12日。イギリス英海兵隊、ボルドーと南西フランスにコマンド攻撃
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12月7日
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・ダルラン海軍大将、米英軍の同意を得て「北アフリカにおけるフランス国家元首兼陸海空軍部隊総司令官」たることを示す政令を発す。
自由フランス・国内レジスタンスにとって我慢ならないもの。
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12月8日
・満州国、基本国策大綱発表
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12月8日
・朝鮮農地開発営団令公布
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12月8日
・連合軍、ニューギニアのバサブア、ゴナ占領。バサブア守備隊800、玉砕。
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12月8日
・海軍、陸軍へ駆逐艦によるガダルカナル島へのドラム缶輸送中止連絡。翌月再開。

ガダルカナルへの駆逐艦輸送について、今後中止したい旨、現地海軍から第8方面軍に申入れ。
第8方面軍司令官今村中将が連合艦隊山本長官に継続を要請。
山本は「補給中止は考えていない」と電報。しかし、実際は潜水艦での少量輸送のみ。

「先方からの要望によって、第八方面軍参謀の大部は午後三時から参謀宿舎で海軍参謀一行と会見した。・・・渡辺連合艦隊参謀開口一番曰く、「今日限り海軍は駆逐艦の輸送は実施しない。ガ島に対しては潜水艦による補給輸送を行う。・・・現況以上に駆逐艦を喪失することは、海軍全般の作戦を危険に陥れるので忍ぶことができない」 正に爆弾動議である。方面軍参謀一同大きな衝撃を受けた。今日は開戦満一年の記念日である。・・・それから満一年、事志と違って、戦局の推移は深刻であるが、この日にこのことを言わねばならぬとは・・・海軍側の提案は承りおくに止めて会見を打切った。直ちに今村軍司令官、加藤参謀長に報告した。・・・」(第8方面軍作戦主任参謀井本熊男中佐の作戦日誌)。

「ラバウルの両最高司令部相当に逼迫せる空気にして、放任せば衝突の虞無き能わず。第八方面軍は依然中央指示に固着しあれば、速に今後の方針を変更するの要ありと認む。両者より当隊長官宛駆逐艦輸送を巡り、深刻なる電あり。今にして善処するを要す」(連合艦隊参謀長宇垣纏の日誌、12月9日)。
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12月8日
・八連特司令部(大田實少将)、ラバウル進出。22日迄に、呉六特・横七特、ラバウル進出。ニュージョージア島ムンダ派遣まで訓練。
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12月8日
開戦1周年の海軍戦死者:14,802人(推計)
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12月8日
・大東亜戦争1周年記念国民大会開催
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12月8日
・午後7時、首相官邸一階の食堂、東條の気を許した閣僚・軍人・官僚が、夕食会に集まる。 会食者:東條、嶋田海相、軍令部総長永野修身、参謀総長杉山元、情報局総裁谷正之、書記官長星野直樹海軍次官沢本頼雄、参謀本部第2部長岡本清福、陸軍省軍務局長武藤章、海軍省軍務局長岡敬純、法制局長官森山鋭一、外務省アメリカ局長山本熊一、内閣総務課長稲田周一、秘書官3人。
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12月8日
・朝日系「ジャワ新聞」「ボルネオ新聞」、読売系「ビルマ新聞」「グレーター・エーシア」、同盟共同系「昭南新聞」、夫々発刊。
陸海軍から委託された事業。
朝日系は、インドネシア・ジャワ島のジャカルタとボルネオ島南部バンジェルマシンに本社をおく。「ボルネオ新聞」には、日本語版・マレー語版があり、日本語は日本の軍人・軍属などが読者、マレー語版は現地住民の「教化指導」 「日本文化の進出」(村山社長)のための新聞で、終戦時には約5万5千部発行。
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12月8日
・ソマリア海岸、自由フランスに参加
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12月8日
・イタリア、国有化企業施設を軍事化、戦争体制強化
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