2013年3月4日月曜日

貧困の連鎖に懸念 生活保護減額 子供にしわ寄せ

東京新聞
貧困の連鎖に懸念 生活保護減額 子供にしわ寄せ    
2013年3月4日 朝刊

 八月からの生活保護引き下げに対し、専門家や関係者は親から子への「貧困の連鎖」拡大への懸念を強めている。引き下げは子育て世帯を直撃する。さらに、連動して生活支援の所得基準が下がり、経済的に苦しい家庭の子どもの多くに影響が及ぶ可能性が高いためだ。 (上坂修子)

 「学用品が買えないとか、体操着や水着を買い替えることができないといった理由で、子どもの引きこもりは確実に増える。成長期には一年前のものは着られないことがある」

 「生活保護とあたし」(あけび書房)の著者、和久井みちる氏は警鐘を鳴らす。地方公務員だった和久井氏は夫の家庭内暴力(DV)でうつ病になり失職。一時期、生活保護を受けていた。

 生活保護のうち生活費に充てる生活扶助費は八月から三年間かけて最大10%引き下げられる。都市部の四十代夫婦と小中学生二人の世帯の生活扶助費は三年で月額二万円減る。三十代、二十代の夫婦と四歳の子一人の世帯は一万六千円減る。

 東京二十三区で生活保護受給世帯が最も多い足立区では公立小中学校に通う子どもの約四割が給食費、学用品代などが補助される就学援助制度を利用している。足立区の就学援助の対象基準は、世帯所得が生活保護基準の一・一倍。生活保護基準が下がれば多くの子どもが対象から外れる事態も予想される。

 和久井氏は「例えば足立区の子どもの多くが給食費が払えなくなる。就学援助で何とか持ちこたえている世帯の多くが、生活保護世帯になることが考えられる」と指摘する。

 二〇一〇年の調査によると、生活保護受給者のうち十八歳未満は14・4%。そのうち二割はゼロ~五歳だ。

 子どもの貧困に詳しい湯沢直美立教大教授(社会福祉)は「受給者のうち六、七人に一人は子どもということはもっと強調されていい。本当に貧困の連鎖を抑止するなら、経済困窮にある世帯の子どもほど大学進学はじめ高卒後の教育の機会を手厚く保障すべきだ」と言う。

 その上で「子育て世帯という観点からみれば、生活保護、児童手当などの社会手当、保育料・学校授業料等の無償化など総合的に子育て政策を点検しなければならない。子どもの権利保障の議論になっていない」と指摘する。

 英国は一〇年に子どもの貧困率削減の数値目標を定めた法律が成立した。米国では一九六〇年代から、低所得層の就学前の子どもや家族に教育や健康、栄養などの就学支援プログラムを提供する「ヘッドスタート」がある。

 日本では民主党が子どもの貧困率の削減目標を盛り込む法案の検討を開始。自民党も議論を始めたばかりだ。

◆17歳以下貧困率15・7%
 日本の十七歳以下の相対的貧困率(国民一人当たりの所得を高い順に並べ、真ん中の人の所得額の半分に満たない人の割合)は二〇〇九年で15・7%。一九八五年の10・9%から大幅に増えた。中でも一人親世帯の貧困率は〇九年で50・8%と際立って高く、経済協力開発機構(OECD)加盟三十カ国で最高水準にある。


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