2013年3月18日月曜日

TPP協定で薬が入手困難に、脅かされるアジアの公衆衛生

YAHOOニュース
TPP協定で薬が入手困難に、脅かされるアジアの公衆衛生
オルタナ 3月18日(月)13時2分配信

15日、安倍晋三首相が日本の環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉への参加を表明した。これを受けて、認定NPO法人国境なき医師団(MSF)は、国際協定で取り決められた公衆衛生に関するセーフガード(緊急輸入制限措置)を無効化し、開発途上国での薬の普及流通を妨げる恐れがあるとして、TPP交渉参加国に対し、一部の条項を認めないよう求めている。

TPP交渉には現在、アジア太平洋地域11カ国が参加し、非公開で進められている。しかし、MSFが入手した漏えい文書によると、米国が途上国も対象になる貿易協定案で最も攻撃的な知的財産関連条項を提案しているという。

TPP条項案の1つは、治療効果の向上にかかわらず、既存の薬剤の新しい形態・用法・製法といった改変に20年の特許期間を承認するよう各国に求めるものだ。

不当・不適切な特許への異議申し立てに要する費用や手間を増やすような条項案や、行政処理で費やされる時間を補てんするための特許期間延長の条項案もある。こうした条項案は、薬価を高止まりさせ、薬剤入手を困難にする

ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、一般的に開発費用が安く抑えられることから、新薬に比べて薬価が安い。開発途上国では、安価なジェネリック医薬品が広く普及している。MSFの医療活動でも、HIV治療の場合、途上国の活動で使用されている薬の80パーセント以上をジェネリック薬が占めている。

MSFインターナショナル会長ウンニ・カルナカラ医師は「必要な薬が高価すぎるとか、手に入らないという理由で、本来助かるはずの命があまりにも多く失われている。途上国での薬の普及流通にとって、一層の障壁になりうるTPP協定を支持することはできない」と話す。

現行の条項案については、他の交渉参加国を含む多方面からの反対を受けながらも、米国は代案を示していない。これは時間稼ぎであり、2013年10月の妥結を目指し、各国を当初の条項案受け入れに追い込もうとしていると、MSFは見ている。

MSF日本必須医薬品キャンペーン渉外担当のブライアン・デイビス氏は「交渉が時間切れになり、協定が拙速に調印されれば、アジア太平洋地域で暮らすすべての人にとって、手ごろな価格の薬は入手困難になるだろう。MSFが日本をはじめとする交渉参加国に求めることは、協定書への調印などではなく、大勢の命を脅かすことになる条項案の拒絶である」と訴えている。(オルタナ編集部=副島久仁彦)

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