2012年6月20日水曜日

原発再稼動 「日本は地雷原の上でカーニバルをしているようだ」



日経ビジネス オンライン
「フクシマの視点」
原発再稼働決定に福島から警鐘を鳴らす人々
日本は地雷原の上でカーニバルをしているのか

(略)

・・・40年以上も地元富岡町で原発反対運動をしてきた石丸小四郎さん(双葉地方原発反対同盟代表)だ。息子夫婦は関西に避難してしまい、現在はいわき市内で1人避難生活を送る。石丸さんも再稼働を批判する。

 「とにかく何が頭にくるかといえば、熱狂的に原発を推進してきた人にも、反対してきた私たちにも、分け隔てなく放射能が降り注いだということだ。推進してきた人たちと一緒に私たちも逃げなくてはならなくなった」

 「とにかく再稼働しようと言う人は、決定的に想像力が欠如している。想像力を働かせれば、他の原発でも福島と同じような事故や被害が起きる可能性がある。この狭い日本で、『自分には放射能は降り注がない』と思っているのだろうか。自分は常に安全地帯にいてこの状況を眺めていて、再稼働しようという感覚は異常だ」

 「しかも福島県民の声を無視している。震災後、764人もの人が震災関連死しており、このうち避難区域11市町村の住民が650人、全体の8割を占める。人口減少、避難生活、自殺、病気、介護、出産、障がい者施設の苦難や子どもの屋外活動制限、そして放射能による環境汚染。放射能によって苦しんでいる人々の思いに少しでも目を向けたら、再稼働はあり得ない。それに福島第一原発4号機の燃料プールの問題。いつ崩壊するかもしれない危険をはらんでいる」と問題を指摘した。


しかし一方で、地元として原発を容認してきた反省もあると語る。

 「(原発立地地域の)双葉郡の人たちは、貧しい所で暮らしていたが、原発マネーで生活が一変した。物価は上昇し、ごみ袋一つとっても他の地域より高かった。『原発がなくなったら、元の生活に戻る』とインプットされたが、全国の立地自治体はわずか23市町村。それ以外の自治体が果たして現在も40年前の生活をしているのかというとそうではない。こうした事故が起きたのも、東電のやることに何の疑問も持たずにいたことによるもので、ある意味自業自得かもしれない。反原発を大きなパワーに変えられなかった我々の反省も、もちろんある」と肩を落とした。

 ある外国人記者が石丸さんに言ったという。「日本は地雷原の上でカーニバルをしているようだ」。石丸さんはこの言葉を衝撃を持って受け止めた。「まさにその通りだと思った。命が二の次になっている。命を最優先に考えられない、そういう考え方の延長線上に、日本の衰退の原因があるのではないか」

「福島の声」を教訓に
 政府や国会の事故調査委員会が事故原因の調査を終えていない段階で進められる再稼働に、疑問や不安を抱く福島県民の声があるのは当然といえよう。政策に対して厳しい意見を持つ人々も国民の1人。現状の原子力政策への「警鐘を鳴らす人々」だ。

 嫌な話、厳しいことほど、耳をふさぎたくなるものだが、彼らは今も放射能で汚染されたその土地に踏ん張って、懸命に警鐘を鳴らし続けている。そのことだけは、ぜひ忘れないでほしい。

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