東京新聞
大飯原発「5層の防護」3層目まで 国際基準 程遠く
2012年6月16日 夕刊
大飯原発3、4号機の再稼働が決まった。野田首相らはしきりに安全性が確保されたと強調するが、国際的な安全基準の一部しか満たしていないのが現状だ。このまま再稼働に踏み切れば、国際基準から逸脱した形になる。
国際原子力機関(IAEA)は、原発の安全性を保つため「五層の防護」という考え方を示している。
五層の防護とは、故障や誤作動を防ぎ、地震や津波などに襲われても炉心溶融のような重大事故にならないよう備えをするのが一~三層目。事故が起きてしまった場合、いかに事故の被害を最小限に食い止め、住民を被ばくから守るかの備えをするのが四、五層目となる。
大飯原発はどうか。非常用電源の多様化や建屋が浸水しにくいなどの安全向上策はある程度はできたが、それは三層目までのこと。事故が起きた後に重要となる四、五層目の対応は空手形というのが現状だ。
ベント(排気)時に放射性物質の放出を最小限にするフィルターの設置、事故収束に当たる作業員を放射線から守る免震施設の整備などが四層目に当たり、適切に住民を避難させたり、内部被ばくを防ぐヨウ素剤を配ったりするのが五層目。
しかし、四層目が達成されそうなのは三年後で、五層目はいつになるか、めども立っていない。
原発外で対策拠点となるオフサイトセンターは、いまだに見直し作業の最中。モニタリングポストなど広域に放射線量を監視する体制も整っておらず、福井県の避難計画も近隣の他府県との連携を考えない硬直化した内容のままだ。
首相らは「福島のような津波と地震が襲っても事故は防げる」と胸を張るが、国際基準に照らせば、重要な対策がすっぽり抜け落ちている。 (福田真悟)
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MSN産経ニュース
大飯3、4号機 安全対策完了は3年後
2012.6.16 20:33
再稼働が決まった関西電力大飯原発3、4号機だが、関電が示した85項目の安全対策が全て完了するのは平成27年度とまだ先だ。免震重要棟の設置や防波堤のかさ上げなど、未実施の対策は31項目残されており、対策の着実な実施が求められている。
東京電力福島第1原発事故で重要性が再認識されたのが、現地の対応拠点となった免震棟だ。免震棟は19年の新潟県中越沖地震で東電柏崎刈羽原発の事務棟が使用できなかったことがきっかけで東電などは設置したが、関電は大飯、美浜、高浜の3原発で未整備だ。大飯3、4号機の免震棟は27年度までに完成する予定で、それまでは中央制御室に隣接する会議室を代替施設として使うという。
津波対策では、現在5メートルの高さの防波堤を8メートルにかさ上げする工事が25年度までかかる見込み。建屋の扉を水の浸入を防ぐ扉に取り換える工事も今年9月の完成予定となっている。
このほか、27年度までかかる対策としては、緊急時に放射性物質を取り除いた上で原子炉から蒸気を外部へ逃すフィルター付きのベント設備や、恒久的な非常用発電機などがある。
全対策の完了前に、原発を再稼働させることに対しての批判は根強い。しかし、枝野幸男経済産業相は16日の会見で「原発にはリスクがあり、(対策に)百点はありえない。福島の教訓を踏まえて直ちにやらなければいけないことはやっている」と理解を求めた。
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