2013年3月20日水曜日

イラク戦支持の検証置き去り 「専門的な歴史の検証に委ねたい」(官房長官) 「新たな検証は考えていない」(外相)


時事ドットコム
イラク戦支持の検証置き去り=自衛隊派遣の拡大志向-安倍政権

 日本政府は、米国が主導した2003年のイラク戦争を開戦後直ちに支持、その後、紛争が進行するイラクに陸上、航空両自衛隊を派遣した。開戦の根拠とされた「イラクの大量破壊兵器」は結果的に発見されなかったが、日本の取った行動の検証は開戦から10年たった今日まで十分には行われていない。自衛隊の海外派遣拡大を志向する安倍政権も、検証に乗り出す考えはないようだ。

 菅義偉官房長官は19日の記者会見で、「大量破壊兵器の存在を確認できなかった事実は厳粛に受け止める必要がある」としながらも、開戦時の判断が妥当だったかどうかは「専門的な歴史の検証に委ねたい」と、政府が主体的に検証に取り組むことには消極姿勢を示した。岸田文雄外相も会見で「新たな検証は考えていない」と言い切った。

 03年当時、フランス、ドイツ、ロシアが開戦に反対するなど主要8カ国(G8)でも意見が割れる中、小泉政権は「世界の中の日米同盟」を掲げ米国を支持。復興支援名目で陸自、輸送支援で空自をそれぞれイラクに派遣し、「アジア太平洋地域の平和と安全」確保を主眼とする同盟のカバー範囲を地球規模に広げる形となった。憲法9条との整合性も問われたが、小泉純一郎首相は「自衛隊が活動する地域は非戦闘地域だ」と、開き直りとも取れる主張で押し切った。

 07年の空自派遣延長の際には、衆院特別委員会が開戦支持の判断について検証を求める付帯決議を採択。だが、自民党政権が率先して検証を行うことはなかった。検証に前向きだった民主党も、野田政権末期の昨年12月、「大量破壊兵器が存在しないことを証明する情報を得ていたとは確認できない」とする外務省の内部検証結果をまとめた程度で、掛け声倒れに終わったことは否めない。独立調査委員会を設置して中立的な検証を行った米英両国やオランダとは大きな違いがある。

 安倍政権は、日米同盟を強化した小泉政権の路線をさらに発展させ、集団的自衛権の行使容認など自衛隊の役割拡大に向けた検討に力を注いでいる。自衛隊海外派遣を可能にする恒久法についても、自民党の石破茂幹事長が公明党に再検討を呼び掛けている。

 検証が置き去りにされる中、野党の有志議員が19日、第三者委員会による検証を求める集会を議員会館で開いた。席上、民主党の辻元清美氏は「集団的自衛権行使が認められていたら、日本も(戦闘行為に)派兵した可能性がある。しっかりと検証して歯止めをかけることが議員の役割だ」と訴えた。また、みんなの党の江田憲司幹事長は同日の記者会見で「総括をせず、うやむやで終わらせるのは嘆かわしいことだ」と政府を批判した。(2013/03/19-21:08)

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