2013年4月30日火曜日

円安と株高で、本業が振るわなくても企業決算が大幅改善する。・・・小泉政権期も円安と株高で企業収益が改善したが、結局、国際競争力が低下し「失われた20年」になった。


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元三井住友銀行副会長・中野健二郎 企業決算記事の見出しに苦言
2013.4.28 08:39 

4月下旬から5月にかけて、上場企業各社の平成25年3月期決算の記事が経済面の多くを占める。仕事柄、気になっていたことだが、各企業の業績の見出しで「V字回復」「利益3倍増」「大幅増益」など、興味がわく記事にするためか、実態が見づらい見出しをつけることが多いようだ。

やや専門的になるが、例えば「V字回復」の見出しだ。仮にA社が環境や特殊要因で前期に大幅な赤字決算(要因は営業利益の赤字、大幅な人員整理に伴う特別損失、資産の減損の計上など)だった場合、翌期は多くない営業黒字になっても特別損失の削減や人員減の固定経費の削減で利益は積み上がる。つまり、前期3千億円の赤字が翌期2千億円の黒字になった場合、前年比5千億円の利益改善と数字上はなる。

企業の実態が異なるときに、これが本当の「V字回復」という見出しに合うことなのか。

専門のアナリストたちはすぐに分析や解析ができる。しかし、読者や一般投資家、取引先なども決算は見る。その企業の内容を精査すれば、本当のV字回復かどうか、経済部の記者ならばすぐに分かることだろう。

また、B社は前々期1千億円の利益を出したが、大減益になり、100億円になった。努力して翌期には300億円まで戻った。この時の見出しは「利益3倍増」である。しかし、2年前に比べ利益は3割の水準しか戻っていない。

例として出したが、決算数字というものは企業の実態を精査した上で判断すべきだし、少なくとも大手各紙は各企業の決算の分析、解析を正確に把握し、記事内容はもちろん、見出しについてもっと考えるべきであろう。

話はそれるが、筆者は4月中旬に米国でスタンフォード大学のIT企業に詳しい教授と面談する機会を得た。

米国のIT業界はアップル、グーグルを筆頭にベンチャー企業から大企業に成長した会社が多い。最近の動きとして「ビッグデータ」と総称される大量の情報から、いろいろな角度で分析、解析するソフトを開発する数多くのベンチャー企業が芽生えているらしい。

つまり、情報を分析、解析する力量が問われている時代なのだ。

これから1カ月ほど企業決算が公表される。急に大幅な円安になったことから、好決算の海外子会社を持つ企業の連結決算は為替調整部分だけでも大幅に増える。

業績が良くなることは結構なことだが、真の企業活動によるものかどうか、要因を分析、解析した上で的を射た記事と見出しによる報道を期待したい。



【プロフィル】中野健二郎

なかの・けんじろう 昭和22年、熊本県出身。九州大経卒。元関西経済同友会代表幹事。

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