新潟日報 社説
秘密法施行 法廃止への議論を始めよ
機密情報の漏えいに罰則を科す特定秘密保護法が10日午前0時に施行された。
国民の「知る権利」や取材・報道の自由を損ないかねないといった、この法律に対し投げ掛けられた数多くの重大な懸念は拭われていない。
法律を成立させた国会は、置き去りにされた問題点をしっかりと踏まえ、法の廃止に向かって議論を始めてもらいたい。
今回の衆院選では、民主党など野党3党が法律の見直しや廃止を公約で掲げている。
これについての論戦は低調だ。経済課題をめぐる論争に偏る選挙戦を憂う。
昨年12月、与党による採決強行で法律は可決成立した。
研究者や文化人、地方議会などをはじめ、多方面から反対の声が上がった。論議は尽くされなかった。間違っても済んだことなどと考えてはならない。
制定過程で法律を所管する内閣情報調査室が関係省庁に対し、海外で学んだり働いたりした経験がある公務員は、国家機密の漏えいリスクが高いと強調していたことが分かった。
特定秘密を扱える人物かどうかを判断する適性評価の在り方をめぐる「自由な意見交換の一環だった」との説明だ。
グローバル社会にあって、何とも時代錯誤的な論点提示だ。こうした空気の中でできた法律と考えれば、なおさら怖い。
人権、プライバシーに関わる適性評価の在り方以前に、この事実だけでも公務員を目指す若者が萎縮しかねない。
政府は施行までの1年間で国民の懸念がなくなるようにしたいと言っていた。
パブリックコメント(意見公募)を受けて運用基準が修正され、10月に閣議決定された。
そこでは、法の施行5年後に運用状況を再検討し必要があれば見直すと修正された。
また、知る権利については「憲法21条が保障する表現の自由や、民主主義の在り方と結びついたものとして十分尊重されるべきだ」と書かれた。
だが国民の不安を打ち消すには程遠い。意見への回答も通り一遍で結論ありきに見えた。
秘密指定のチェック機関の「内閣保全監視委員会」「独立公文書管理監」は、行政の「身内」である上に強制力がない。
行政機関に特定秘密を含む資料の提出や説明、是正を求めるとされるが、拒まれれば次の手はないということだ。
衆参両院の「情報監視委員会」も与党議員が大半を占めるようなら実効性に疑問符がつく。
情報の隠蔽(いんぺい)や法の恣意(しい)的運用への歯止めはない。厳罰は権力を監視する報道活動への妨害と圧力につながり、知る権利を阻害する恐れを生じさせる。
日本の将来のために、振り出しに戻すほかはない。
【社説】 2014/12/10
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