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麻生氏発言 暮らしが見えているか
12月10日(水)
暮らしの実情が見えているのか―。疑問を感じさせる発言だ。麻生太郎副総理兼財務相の二つの演説が波紋を広げた。
一つは、経済政策に関するものだ。政権の実績を強調し、継続を訴える中で出た。「株価が戻り円安に振れた。企業は大量の利益を出している。出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないかだ」。松本市で演説し、そう述べている。
円安は、輸出企業の業績改善を後押しした。その一方で、仕入れ価格や原材料費の高騰に苦しむ企業がある。帝国データバンクによると、円安の影響による倒産は11月に42件と前年同月の2・3倍に増えた。1~11月は301件で前年同期の2・7倍だ。
運や経営者の問題と片付けられない。極端な金融緩和がもたらした円安のマイナス面に目をつぶるかの発言は乱暴だ。
麻生氏は「時代が変わるときに経営の在り方を変えないとしょうがない。経営者にしっかり知ってもらうことが大事だと話した」と言う。急激な環境変化を招きながら一方的に対応を求めるとは、納得できるものではない。
もう一つは、少子高齢化に伴う社会保障費の増加に絡んで述べている。松本を訪れた翌日、札幌市での演説だ。「高齢者が悪いというようなイメージをつくっている人が多いが、子どもを産まないのが問題だ」とした。
今は現役世代3人で高齢者1人を支えているものの、少子化で2人で1人になる―と今後の負担増を説明し、「間違いなく税金は高くなる」と指摘している。
産まない人を責めるような発言に批判が相次いだのは当然だ。産む、産まないはそれぞれの判断である。経済的な事情などから産めない人たちもいる。そもそも高齢者と若い世代のどちらが悪いかという問題でもない。
麻生氏は「産みたくても産めない」という趣旨だとし、「子どもが育つ段階で預ける所がないから結果的に産まないのが問題」と言い換えてもいる。そうであれば最初から丁寧に語るべきで、政治家の言葉としてお粗末だ。
麻生氏の問題発言はこれまでもたびたびあった。「またか」と済ますことはできない。
二つの発言に共通して感じるのは、暮らしの苦しさや困難の責任を国民の側に押し付けようとする姿勢だ。企業が苦しいのは経営者のせい、負担増は産まない人のせい―。そんな発想が政権内にありはしないか、注視したい。
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