2012年1月8日日曜日

低線量被曝の脅威、国際基準の曖昧さ(「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」12月28日NHK)

京都 詩仙堂(2011-12-24)
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低線量被曝について、その脅威の実態と国際基準設定の曖昧さについてのレポートが、12月28日にNHKで放映された。
30分もの。
ブログ「みんな楽しくHAPPYがいい」さん(コチラ)が文字起こしをしてくれている。
これは必見
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NHKのHPにある番組の概要
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“生涯100ミリシーベルトとされる被ばくの基準で、本当に健康への影響はないのか?”
福島をはじめ、全国の人々が現実に直面している放射能の脅威。
国は「直ちに体への影響はない」と繰り返すばかりだ。
その拠り所としているのが、ICRP(=国際放射線防護委員会)の勧告。
広島・長崎の被爆者の調査データをベースに作られ、事実上の国際的な安全基準となっている。

しかし関係者に取材を進めると、1980年代後半、ICRPが「政治的な判断」で、
被ばくでガンになるリスクを実際の半分に減らしていた事実が浮かびあがってきた。
当時ICRPには、原子力産業やそれを監督する各国の政府機関から、強い反発が寄せられていたのだ。
そしていま、世界各地で低線量被ばくの脅威を物語る、新たな報告や研究が相次いでいる。

アメリカでは原発から流れ出た微量の放射性トリチウムが地下水を汚染し、周辺地域でガンが急増
25年前のチェルノブイリ原発事故で、大量の放射性セシウムが降り注いだスウェーデンでは、ICRP基準を大きく上回るガンのリスクが報告されている

いま、誰もが不安に感じている「低線量被ばく」による健康被害。
国際基準をつくるICRPの知られざる実態を追跡する。
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番組の概要
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国は生涯100ミリシーベルトを上限に食品の安全基準を定めています。

国が根拠としているのがICRP(国際放射線防護委員会)が定める基準です。
「100ミリシーベルト以下の低線量の被爆リスクは極めて小さくほとんど影響がない」としています。
本当にそうなのか・・・?

低線量被ばくの実態を調べるため、追跡チームは海外を取材しました。

■スウェーデン北部ベステルボッケンデン
古くから少数民族サーメの人々が暮らしてきました。

いま周辺でガンが増えています。
原因とみられているのは25年前に起きたチェルノブイリ原発事故(1986年)。
放射性物質を含んだ死の灰は、1,500キロ離れたサーメの村まで降り注ぎました
当時の放射線レベルは、年間およそ0.2マイクロシーベルト
国際基準の5分の1程度(ICRP基準1μシーベルト)の低いレベルでした。

しかし、今、ガンになる住民が増えています。
事故の前と比べると34%(1年当たり)増加しました。

事故直後、スウェーデン政府は、食べ物に含まれる放射性物質の安全基準を設けました。
人々が良く食べるトナカイの肉は1Kg当たりの上限300ベクレル。
現在の日本の暫定基準値(500Bq)より厳しい値です。

住民の調査を進めてきたマーディン・トンデル博士(サールグレーンスカ大学病院)は、
汚染地域で暮らす全ての住民、110万人のデータを解析、
ガンになった人の被ばく量を調べると事故後10年間の積算で、いずれも10ミリシーベルト以下だった事が分かりました。

ICRPがほとんど影響がないとしている低線量でもガンになる人が増えていたのです。

トンデル博士:
この結果に驚きました。
明らかにリスクがICRPよりも高かったからです。
リスクは外からの被ばくだけでなく、内部被ばくに左右されるのです。

■アメリカ、イリノイ州シカゴ郊外
周辺に3つの原発が集中しています。
原発から排水される汚水には放射性トリチウムが含まれていますが、
アメリカ政府(米原子力規制委員会)は国際基準以下なので影響はないとしてきました
しかし、近くの町では子どもたちが癌などの難病で亡くなっていました

6年前に建てられた慰霊碑
足元のレンガにはこれまでに亡くなった100人の名前が刻まれています。

過去20年間、全住民1,200万人がどんな病気にかかったかを記した記録を調査したところ、
原発周辺の地域だけが脳腫瘍や白血病が30%以上も増加。
中でも小児がんはおよそ2倍に増えていました。

国は「井戸水による被ばく量は年間1μシーベルトと微量で、健康を脅かすことはない」と、回答してきました。

■アメリカ メリーランド州
2011年10月アメリカでICRPの会議が開かれました。
ICRPはおよそ30カ国。
250人の科学者や政府関係者が作るネットワークです。

福島第一原発の事故を受けて、低線量被ばくのリスクの見直しを求める声が相次ぎました。
ICRPの低線量リスクがこのままでいいのか、大きな疑問が持ち上がっている。

■カナダ オタワ(ICRP本部)
事務局長のクリストファー・クレメント氏(ICRP科学事務局長):

クレメント氏は私達に驚くべき事実を語りました。
これまでICRPでは低線量の被ばくのリスクは低いとみなし、半分にとどめてきたというのです。

低線量のリスクをめぐる議論は、実は1980年代後半から始まっていました。
基準の根拠となっていた広島・長崎の被ばく者データがこのころ修正されることになったのです。
それまで原爆で1,000ミリシーベルトの被ばくをした人は5%癌のリスクが高まるとされてきました。
それが日米の合同調査で、実際はその半分500ミリシーベルトしか浴びていなかった事が分かったのです。
半分の被ばく量で同じ5%という事は、リスクは逆に2倍になります。

しかしICRPでは低線量は半分のまま据え置き、引き上げないことにしたのです

なぜ低線量のリスクを引き上げなかったのか。

当時の主要メンバーは17人。
そのうち133人が核開発や原子力政策を担う官庁とその研究所の出身者だったのです。

その一人、チャールズ・マインホールド氏
(アメリカエネルギー省で核関連施設の安全対策に当たっていた人物):

原発や核関連施設への配慮があった
原発や核施設は労働者の基準を甘くして欲しいと訴えていた。
その立場はエネルギー省も同じだった。
基準が厳しくなれば核施設の運転に支障が出ないか心配していた。

低線量のリスクが引き上げられれば
対策費に莫大なコスト(3億6,900万ドル)がかかると試算し、懸念を示していました。

マインホールド氏はアメリカの他の委員と協力し、リスクの引き上げに強く抵抗した。

その後ICRPは原発などで働く労働者のために特別な基準を作ります。
半分のまま据え置かれた低線量のリスクを、さらに20%引き下げ、
労働者がより多くの被ばくを許容できるようにしたのです。

マインホールド:
労働者に子どもや高齢者はいないのでリスクは下げてもよいと判断した。
科学的根拠はなかったがICRPの判断で決めたのだ。

■アメリカ テネシー州
原発や核関連施設で働いていた人達が、相次いで健康被害を訴えています。
女性たちは核燃料の再処理施設で長年清掃の仕事をしていました。
身体に異変が起きたのは、仕事をやめてしばらくたってからのことでした。

健康への影響はないと信じて働いてきた女性たち、今、国に補償を求める訴えを起こしています。

■スタジオ
2010年のICRPの予算

アメリカの原子力規制委員会を筆頭にですね
こうした、原子力政策を担う各国の官庁から、各国政府の寄付によって成り立っている訳なんですね。
で、日本もですね、原子力を推進する日本原子力研究開発機構が毎年それなりの額を寄付していると。

ICRP自体が、原発を進めたい人たちの側が作ったものだったから、
安全基準値を決めるわけだから、それじゃぁいけないんですよね。

ICRPっていうと、日本では科学的な情報を提供してくれるようなイメージがあるんですけれども、
彼らは、「政策的な判断」、政策的に判断する集団だと。
そういう、どこまでが許容出来て許容できないのかを、政治的に判断する組織だと。
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朝日がん大賞の山下先生は、如何?
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