2012年1月5日木曜日

「単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%」(2011年12月9日「朝日新聞」)

京都 北野天満宮(2011-12-29)
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少し前のニュースだが、年末特有の慌しさや、何やかやの個人的事情により、ずるずると遅れてしまった話題。

貧困問題についてのニュースである。
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(見出し)
単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%

(記事)
勤労世代(20~64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが、国立社会保障・人口問題研究所の分析でわかった。
2030年には生涯未婚で過ごす女性が5人に1人になると見込まれ、貧困女性の増加に対応した安全網の整備が急がれる。

07年の国民生活基礎調査を基に、同研究所社会保障応用分析研究部の阿部彩部長が相対的貧困率を分析した。
一人暮らしの女性世帯の貧困率は、勤労世代で32%、65歳以上では52%と過半数に及んだ。
また、19歳以下の子どもがいる母子世帯では57%で、女性が家計を支える世帯に貧困が集中している。

貧困者全体の57%が女性で、95年の集計より男女格差が広がっていた
非正規雇用などの不安定な働き方が増え、高齢化が進むなか、貧困が女性に偏る現象が確認された形だ。
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このニュースに関して、「日経ビジネスオンライン」のシリーズ
「河合薫の新・リーダー術 上司と部下の力学」の12月15日号


「えっ、3人に1人!」 無視され続けた女性の貧困問題の窮状
格差があるという事実にまず寄り添おう

という記事を掲載している。
非常に率直な、いい文章である。
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(略)

「単身女性、3人に1人が貧困 母子世帯は57%」といったショッキングな見出しが新聞に踊ったのは、先週のこと。
国立社会保障・人口問題研究所の分析で、勤労世代(20~64歳)の単身で暮らす女性の3人に1人が「貧困」であることが分かった、と報じられたのである。

深刻な問題であるにもかかわらず、この問題を報じたのは朝日新聞だけだった(私が調べた限りではあるが……)。
横並び報道が多い中、なぜこのニュースを報じたのが一紙だけだったのか、その理由は分からない。

(略)

広がる貧困の男女格差

いずれにしても、働く1人の日本人として、とても大切な情報だと思うので、改めて内容の詳細を紹介します。

2007年の国民生活基礎調査を基に、国立社会保障・人口問題研究所社会保障応用分析研究部の阿部彩部長が相対的貧困率を分析した結果、1人暮らしの女性世帯の貧困率は、勤労世代で32%、65歳以上では52%と過半数に及んでいることが明らかになった。

また、19歳以下の子供がいる母子世帯の貧困率は57%で、女性が家計を支える世帯に貧困が集中し、貧困者全体に女性が占める割合も57%と、1995年の集計より男女格差が広がっていた。

相対的貧困率とは、すべての国民を所得順に並べて、真ん中の人の所得の半分(貧困線)に満たない人の割合を指す。
厚生労働省では、相対的貧困率における貧困線を114万円、OECD(経済協力開発機構)の報告では、日本の貧困線は149万7500円と公表している。

ちなみに、2009年の全世帯の平均所得金額は、549万6000円。母子家庭は177万円程度が平均年収だとされている。

(略)

実際、今から3年前、厚生労働省が「わが国の相対的貧困率は15.7%」と発表し、主要メディア各社が世界ワースト4位で「貧困率が最悪の水準」と報じ、当時の鳩山由紀夫首相が「大変ひどい数字だ」とコメントした時もそうだった。

「あくまでも相対的貧困率であって、日本の貧困層は世界一裕福!」
「車を持ち、携帯を持っているような人たちの、どこが貧困なんだ!」

こうした批判が相次いだのである。

確かに、「過去1年に十分なお金がないために食料を買えなかったことがあった人の割合」(絶対的貧困率)を聞いた国際調査では、「はい」と答えた人は日本では4%で、米国の15%、英国の11%、中国の18%、韓国の18%などと比べると劇的に低かった。

でも、だからといって「相対的貧困率」が世間を惑わすだけの指標なのか? というとそんなことはない。

だって、働いても、働いても、稼ぎが増えない人たちがいて、その割合が年々増えていて、母子家庭では半数を上回っているということは、紛れもない事実だから。

そして、その必死に働いている女性たちが、生きづらさを感じているのも事実だから。

そこで今回は、「貧困」について、考えてみようと思う。

心に突き刺さった母子家庭の学生のリポート

(略)

300人近くいる学生たちのほとんどは、「やりたいことをやっていいんだと分かって、ホッとした」とか、「就職したら、石の上にも三年ってことを思い出したい」、「先生の話を聞いていたら、勇気が出た」、「自分を信じて、できると信じて、頑張りたいと思った」といったことをリポートに書いていた。

そんな中、「先生は恵まれている。僕の母は、安い時給でレジ打ちをしている。そんな母を僕は尊敬している」と、1人の学生が記したのである。

彼のリポートを読んだ時、胸が痛んだ。申し訳なく思った。彼の言葉は、重かった。彼は母子家庭で育っていた。

やりたいと思って、やりたいことができる人は恵まれている人――。

やりたいと思っても、その機会すら得られない。
すなわち、機会格差。
そんな機会格差の壁を、彼は訴えていたのだろう。

日本における母子家庭の母親の就業率は84.5%で、先進国の中でも高い。
だが、平均年収は低い。
背景にあるのが非正規雇用の拡大だ。

数カ月前に、働く人の3人に1人が非正規雇用となっていることが、総務省の労働力調査で明らかになったが、男女別の比率を見ると女性の方が圧倒的に高い。

25~34歳では、男性16%に対して女性39.7%
35~44歳では、男性8.5%、女性54.9%と、この年代で働く女性の2人に1人が非正規雇用ということになる。

「あしなが育英会」の報告では、遺児家庭の63%が非正規雇用で、母子家庭の手取り収入は月平均約12万5000円。
6割以上の家庭が教育費の不足を訴え、高校生がいる世帯のうち、39.7%が経済的理由から進学をあきらめていたことも、同時に報告されている。

(略)

子供には苦労させたくない。そんな思いで、母親たちは安い賃金で働いているのだ。
だが、一向に所得は増えず、賃金格差だけでなく、機会格差にも苦しんでいるのである。

(略)

相対的貧困層が16%前後で、働く女性の3人に1人が貧困層──。
この数字が持つ意味は、
「何気なく接している人の中にも、苦しい思いをしている人がいる」
「何気ない一言で、傷つく人がいる」
という事実にほかならない。
格差が広がるとは、こういうことなんじゃないだろうか

(略)
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官僚いいなり、松下政経塾「どぜう」は、この事実にどう「寄り添う」のだろうか?
「一体改革」のハズなのに、「一体」の内実が一向に見えない。
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